「昭和維新の歌」その解釈と鑑賞(三)
昭和維新の歌(三番)
ああ人(ひと)栄(さか)え国(くに)亡(ほろ)ぶ 盲(めし)いたる民世(たみよ)に躍(おど)る
治乱(ちらん)興亡夢(こうぼうゆめ)に似(に)て 世(よ)は一局(いっきょく)の碁(ご)なりけり
文 法
ああ(感) 人(名) 栄え(動・ヤ下二・用) 国(名) 亡ぶ(動・バ四・終)
盲い(動・ハ上一・用) たる(助動・存続・体) 民(名) 世(名) に(助詞) 躍る(動・ラ四・終)
治乱(名) 興亡(名) 夢(名) に(助詞) 似(動・ナ上一・用) て(助詞)
世(名) は(助詞) 一局(名) の(助詞) 碁(名) なり(助動・断定・用) けり(助動・詠嘆・終)
※ 活用形は文語文法による。尚、主要な助詞には「種類」を付した。
語 句
盲いる ‥‥ 目が見えなくなる。視力を失う。
治乱 ‥‥ 世の中が治まることと乱れること。
興亡 ‥‥ おこることと滅びること。栄えることと衰えること。
一局 ‥‥ 将棋・囲碁などの一勝負。
解 釈
ああ、(広く世界の歴史を見ると)人々が集いやがて国が興り、栄えては滅ぶという繰り返しである。誠
を見失った多くの国民は、栄華を誇る時代に溺れ、盲目的に利益や欲望を追求し、本来あるべき人の姿や
国の姿を見失う(そんな群盲がやがて国を滅ぼすのである)。治乱興亡を繰り返してきた世界の歴史は、
まるで悪夢に似ていて(そんな風に国の道を誤らないためには)、まさに世の中は一局の碁の勝負と同
じ。世の中の動静というものを注視し、真剣に悪と対決していかなければならないなあ。
※ 註 三句目と四句目のつなぎは、三句目の句末に注目した。つまり「似て」の「て」は接続助詞であり、三句目 と四句目が意味的につながらなくてはならない。したがって、「て」を逆接関係の接続助詞と考えると、上 記のような解釈になる(はず)。
鑑 賞
我々は政府の無作為な政策を批判し、私利私欲、党利党略にかまける政治家たちを非難する。また職権を乱用し、自己の欲望を満たそうとする官僚たちに非難の矛先を向ける。横暴な企業に対しては無慈悲な雇用形態に抗議をし、庶民の疲弊をよそに自己の利益だけを貪る悪辣な企業の利益優先姿勢に抗議の声を上げる。しかし、我々自身はいったいどうなのか。いつの日からか国民の中に総中流意識が芽生え、自己を顧みることなく、他罰的になってきているのではないだろうか。「公」を無視し、自分だけが幸福であれさえすればいい。自己の幸福を阻害しようとするものには、例えそれが「公」であっても容赦なく反発の牙をむく‥‥。偏狭な自己の世界に閉じこもり、他との関わりを拒絶しようする。国の大事に対しても「そんなの関係ねえ」と嘯く姿に、亡国の影を見る。国家の終焉を予感させる。「昭和維新の歌」は国民への警鐘でもある。 つづく
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いっそ国民全員がそんなの関係ねえ主義で、国に収める税金で福祉会社を運営すればみんなが幸せになれるかも。
2007/11/30(金) 午後 8:05 [ vuk*1*pino*a ]
vuki10pinora様、コメントありがとうございます。むしろ国民はすべてを「自分の問題」として考える必要があるのではないでしょうか。自分を取り巻く環境はもちろん、国全体にその気持ちを敷衍して考える。それが肝要なのではないかと思います。
2007/11/30(金) 午後 9:33
そのとおりです。他人に厳しく、自分が損をしていると思い、他人に厳しく当たり、逆に自分に甘くなる。その価値基準は損得だけです。先ず自ら反省すべきでしょう。
2007/12/1(土) 午後 3:03 [ hiromichit1013 ]
先生、ありがとうございます。この歌詞(三番)の解釈にはいささか自信がありません。どうか先生の博識でもって誤りをご指摘くださればありがたいです。
2007/12/1(土) 午後 3:50
『世(よ)は一局(いっきょく)の碁(ご)なりけり』というところは、
よく人生は一局の碁なり、という言い方がありますね。
玄妙な碁の攻守は人生のように深いと言う意味であると思いますが、
これを世は、とすると
治乱興亡はまるで碁の勝負を見ているようだ、
ということのみであり、
世の中の動静というものを注視し、真剣に悪と対決していかなければならないなあ。
と言う解釈はでてこないと思います。
生意気行ってすいません。
傑作に○!
2007/12/9(日) 午後 2:52 [ 太郎ともも ]
bieさん、おっしゃるとおり「逐語訳」にすると、確かにこの部分は詩の文言にはありません。しかしこの「碁を見ているようだ」をもっと敷衍して解釈すれば「だから(私たちは)〜しなければならない」というメッセージがあるように思うのです。そこまで立ち入って解釈したことは、僭越だったかも知れません。ありがとうございます。
2007/12/9(日) 午後 5:00