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「ナゾの反転」 ― といわれるのが、昭和19年10月25日、フィリッピン・レイテ島沖における第二艦隊の行動である。 当時、レイテ湾にはマッカーサー元帥率下のレイテ島上陸部隊と輸送船団が群集していた。栗田健男中将が指揮する第二艦隊は、この船団を撃滅するため出動したが、レイテ湾43マイル(69.2km)まで迫りながら、突然、身をひるがえして帰っていった。 なぜ帰ったのか? もし突入していれば、敵船団のみならずマッカーサー元帥も、戦艦「大和」の巨弾で吹き飛ばし、あるいは戦局に大変化を与えたかも知れないのに ― と、疑問は当時から、そして特に戦後は米国側から“海戦史上のナゾ”として提起され、栗田中将は内外の批判にさらされ続けた。 ― 「臆病者」「愚将」「無能指揮官」‥‥ そんな酷評さえ加えられている。だが、栗田中将は、ほんとうに無能な指揮官であったろうか ― 。 「大和」「武蔵」の大艦を含む戦艦7、重巡11、軽巡2、駆逐艦19、計39隻の第二艦隊が、ボルネオ・ブルネイ湾を出撃したのは、昭和19年10月22日であった。 第二艦隊は、空母を含まぬいわゆる水上部隊である。そして、すでに空母の主勢力を失っていた日本海軍にとって、この水上部隊が唯一の有力な戦闘単位でもあった。もともと第一艦隊が主力戦艦部隊、第二艦隊は重巡を主力とする夜戦突撃部隊として編成されていたので、旗艦も重巡「愛宕」である。 司令長官栗田中将という人事も、第二艦隊にふさわしいものとみられていた。 司令長官は栄職である。たいてい、海軍大学校を卒業したエリートが就任するが、栗田中将は入試に失敗して海軍大学校の学歴は持っていない。だから、司令長官拝命と聞いて、一番驚いたのは中将自身である。 「冗談じゃない、こんな野武士を、だめじゃないか、そう思ったね」 何せ、明治43年7月に海軍兵学校を卒業して以来、陸上勤務はわずか9年間、後はひたすら砲艦、駆逐艦、巡洋艦と、海上勤務で終始した。元海軍省人事局長・中沢佑中将によれば、提督は「聖将、名将、闘将、謀将、勇将、海将、凡将」に分類される。このうち海将(シー・アドミラル)とは、根っからの“船乗り”提督を意味するが、栗田中将はまさにその典型的な存在であり、当人は不向きと思っても、日本海軍の最後の栄光を発揮すべき水上部隊の指揮官として、最適人の経歴者とみなされた。 第二艦隊の使命は、フィリピンで“決戦”をめざす陸海軍の方針にしたがい、レイテ島に食いついた敵を海上から撃滅することにある。 いわゆる「捷(しょう)一号」作戦であり、海軍はこの作戦にほぼ連合艦隊の総力を投入する決意を固めていた。 すなわち、空母「瑞鶴」を旗艦とする小沢治三郎中将の機動部隊17隻をルソン島北方に進出させて、敵機動部隊をつりあげる。栗田艦隊は2つに分け、西村祥治中将の第二戦隊(戦艦2、重巡1、駆逐艦4)スル海 ― スリガオ海峡を通って南からレイテ湾に向かわせ、その間に、栗田艦隊主力はルソン島とサマール島の間のサンベルナルジノ海峡を抜け、サマール島東岸沿いに南下して、北からレイテ湾に突入する。 また、西村部隊には、志摩清英中将の第五艦隊(重巡2、軽巡1、駆逐艦4)を後続、応援させる。 小沢部隊は空母部隊とはいえ、正規空母は「瑞鶴」1隻にすぎず、あとは給油艦改造の「瑞鳳」、水上機母艦改造の「千歳」「千代田」、それに戦艦の後部を発着甲板にした“航空戦艦”「伊勢」「日向」である。しかも、航空機はわずか116機 ― 身を捨てて敵をひきつけるオトリ部隊であった。 西村、志摩艦隊にしても、その戦艦はいずれも旧式、低速であり、これまた敵艦隊の牽制以上の効果は期待できず、栗田艦隊突入の援護役とみなされた。 さらにまた、フィリピンに展開する基地航空部隊、特に第一航空艦隊司令長官・大西瀧治郎中将は、体当たり攻撃の特別攻撃隊を編成して、栗田艦隊突入に呼応して敵機動部隊攻撃を用意した。 (二)につづく。 参 考 『 指揮官 』 ( 児島譲著:文芸春秋 1971年 ) shiraty5027
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名将
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栗田提督ですか。微妙な人選ですね。
私が最も尊敬する提督は有馬正文中将です。
2008/10/28(火) 午後 5:12 [ ミリばん ]
ミリばん様
実はこれにはわけがありまして、盟友の一人が「陸軍ばかり取り上げないで海軍も取り上げろ」という意見と、最近戦艦大和の記事を載せられた盟友美人ブロガーさんがいらっしゃいまして、この人選になったわけであります。有馬中将は、今のところ取り上げる予定はありません。なぜなら「ネタ本」に、その人が載っていない(笑)。というわけで、まずはこちらの連載にお付き合いくださいますよう、お願い申し上げます。
2008/10/28(火) 午後 5:35
こんちは〜 迷友です〜♪
ありがとうございます★ じっくり読んだよ
謎の反転シリーズ 続きますね!! 傑作
完結したらまとめて転載
2008/10/29(水) 午後 5:14
ナオミさん
お待ち申しておりました。
昨夜、「落ち着いた夜にじっくりと」と書いてあったので、いつ着てくれるのかな〜と楽しみにしておりました。ところが今朝起きてPCを覗いても、ナオミさんがお越しになった形跡がない‥‥。涙ながらに(二)をうち始めたのですが、これでようやくホッとしました。さて、明日も頑張って書くぞ〜! 俄然、やる気が出てきました。
傑作ありがとうございます。
2008/10/29(水) 午後 6:26
初めまして
西村 志摩艦隊が悲惨 死にきれないよな
栗田は腹も切らなかった腰抜けです
2008/10/29(水) 午後 9:01 [ テラノ助 ]
テラノ助さま
ごむりごもっとも‥‥。
このことは、時も解決してくれないでしょう。
2008/10/29(水) 午後 9:23