現在の日朝状況
昨年暮れ、北朝鮮ナンバー2と目される張成沢が粛清された背景には、北朝鮮内部での人脈的な対立があったといわれる。北朝鮮全体として外貨が少ない中、張成沢はいわばその番頭役で、軍が保有する鉄鉱石採掘権や漁業権などを奪い、党に帰属させようとしたのが原因だとされる。金正恩が、イルカの水族館を造れだの、スキー場を造れだの、乗馬場を造れだの、国際線飛行場を造れだの、外貨を生み出さない非生産的な構造物を要求したがために、番頭役である張成沢が軍所有の外貨獲得物を横取りしたというのが背景にある。
政府から予算が下りない軍は、武器の補充や、将軍たちの年金までも自給自足しなければならない。それを張成沢に横取りされたわけだから、怒るのも当然。軍は党の組織指導部と結託し、張を粛清しようと目論んだ。それまで張成沢に付いていた国家保衛部も、状況が不利だと察すると簡単に張を裏切り、軍に寝返った。それが張成沢粛清へと繋がったのである。
さて、その国家保衛部は現在軍及び党組織指導部と激しく対立している。拉致問題解決のキーともいえる「特別調査委員会」なるものはその国家保衛部で構成されており、その上部にあたる党機関に権限を行使できる立場にはない。拉致を実行したのは国家機関ではなく党の機関なのである。従って現在の状況は極めて日本側に不利で、前回「夏の終わりから秋口にかけて拉致被害者の状況を回答する」と約束した宋日昊の口約束が反故された理由には、そうした背景、国内事情があると思われる。
北朝鮮が回答できないでいるもう一つの理由は、国連で国際人権委員会が金正恩を人道に対する罪として国際刑事裁判所に訴追しようとしている動きにある。その前段階として北朝鮮の人権問題を国連安保理が議題にすべきだと主張しているのを躍起になって阻止しようとしているからである。たとえ国際刑事裁判所で金正恩が有罪だとされても、実質、北は痛くも痒くもない。なぜならそれは「紙切れ一枚」の話であって、実際に刑が執行されるわけではないからである。
ところが北当局はそれを極度に恐れているというのである。なぜなら、北朝鮮国内において金正恩は世界にも稀な偉大な指導者とされており、もしその金正恩が国際刑事裁判所に刑事訴追されたという噂が国内に広まれば、金正恩の権威は失墜し国内的統制がとれなくなる恐れがあるからだという。
北は表向き非人道的国家ではないという立場から、我が国に対し拉致被害者等の現状報告を遅らせ、時間稼ぎをする魂胆である。一時、現存している拉致被害者を虐殺し、その遺骨を提示して問題の終息を図ろうとしていた節があるが、西岡力氏(東京基督教大学教授)が「日本の鑑定能力はその遺骨が本人のものであるかどうかは勿論、その死亡年代まで特定できる」と言ったがために、その虐殺を断念。現在日本側に対する回答ができない大きな理由となっている。宋日昊が最近日本記者団との懇親会で「西岡力は悪い奴」と2度も発言していることから、虐殺をしぶしぶ断念したという経緯があったことが垣間見える。
さて、朝鮮総連中央本部の売却が決定した。もちろんこの背景には政府の対北戦略があると思われる。また時を同じくして「横田めぐみさん劇物・薬物の過剰投与で死亡」と韓国紙が日本政府の報告書を入手したとして報じた。しかし、現在まさに情報戦の最中にある。我々はこうした情報に惑わされることなく、何が真実で何が嘘なのか。はたまたこうした情報を流すことによって誰が得をし、誰が損をするのかを冷静に分析し、事実を見据えていかなければならない。
shiraty5027
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