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大きな活字でご覧になるにはこちらをクリックしてください。 史実は斯くして葬り去られる 北朝鮮の住民の苦しい過去を詳しく調査・研究するのは困難だという理由は、まず第一に、北朝鮮政権の犯罪を証明する書類は、その崩壊の過渡期にあって保衛員(警察)をはじめとする多くの幹部たちによって、証拠隠滅がはかられる可能性が大きいからだという。自分たちの昔の過ちや、金日成・金正日の犯罪の証拠を消そうとする行為は、他の多くの独裁国家の崩壊過程でも同じように見られたことであり、当然、北朝鮮でもそれが行なわれると予測するのである。消去できなかった資料や証拠があっても、それはほとんど紛失した残りのピースだけでジグソーパズルを組み立てるようなもので、完璧な調査と客観的な評価を困難にするという。 第二に、犯罪の規模を指摘する。現在北朝鮮の政治犯収容所に収監されている政治犯は15万〜20万人であると推測され、過去60年間では50万人以上の収監者がいたとされる。また、テロと粛清が1960年代に絶頂に達したが、彼らの家族や子孫が体制が崩壊した後も混乱する政治や社会状況の中で、果たしてこうした調査を積極的に推進するのかどうか疑わしいというのである。さらに、犯罪件数が100万件に達するとしたら、そのすべてを調査することは不可能であり、資料の不足や目撃者の他界とあいまって困難を極めるというのである。北朝鮮が韓国に吸収された場合でさえ、こうした困難が予想される。まして、中国の衛星国となればさらにその調査は絶望的だという。 だが上記した「証拠隠滅」「弾圧政策の規模」よりももっと重要なことは、韓国(朝鮮)人の「清算意思」だという。世界で北朝鮮の住民ほど、スターリン主義統治の下で50年以上の間暮らしてきた住民はいない。つまり、この犯罪調査を突き詰めていけば、北朝鮮の住民のほとんどがこの犯罪に関わっているということになるからである。体制崩壊以後、このような調査をするということが、社会にひどい混乱と流血の報復という事態を引き起こすかも知れない。政治家は危険な政策とみなして、大規模な調査を行なわない、もしくは妨げる可能性が大きいという。 ランコフ教授は「過去の清算」が、その他の国で歴史的にどう位置づけられ、どう処理されてきたのか、ドイツ、ソ連、東欧、中国の例を引きながら(日本の例も引用されているが的を射て射ない)解説している。歴史的に当事国である政府や世論は、過去の国内外のテロの規模を否定したり、テロに対する責任がごく少数の悪人だけにあると主張する。それはテロ政策が住民から大衆的な支持を受けたということを率直に認めると、民族のアイデンティティにひどい衝撃を受ける可能性があるため、このような過去を社会が記憶したがらず、歪曲してきたのだという。 韓国(朝鮮)はそうでなくても歪曲や捏造を得意とする国である。他の国以上に自国の歴史の恥部を隠滅し、ありもしない事実を捏造し、美化に努めるに違いない。ランコフ教授は北朝鮮崩壊後、ときの政治勢力が歴史の証拠の一部だけを公開し、政争の手段に使われることがないように、北朝鮮の幹部に赦免を与えると同時に、北朝鮮の資料をありのままに公開することを提言しているが、それは学者の非現実的な空しい雄叫びに聞こえてならない。史実は皮肉にも歴史によって葬り去られる‥‥、悲しいかなそれが現実であるようだ。 |
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2007年07月23日
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