北朝鮮問題

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北朝鮮は変わり得ない

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北朝鮮は変わり得ない

イメージ 1 昨年7月、北朝鮮はノドンを含む7発の弾道ミサイル発射実験を行なった。その後も北は核実験を強行し、国連安保理は制裁決議1718を採択し、北朝鮮に経済制裁を科した。国連加盟国に、北朝鮮への大量破壊兵器の関連物資、技術の供給防止、核・ミサイル開発計画に関与する個人・団体の資産凍結、ぜいたく品の輸出禁止を決定し、義務付けた。

 ところがそんな制裁などどこへやら。中国は経済制裁どころかますます北朝鮮との交易を盛んにし、強制力のあるはずの国連加盟国の大半も制裁などどこ吹く風。英独は北に投資し、第一、安保理の主要国であるアメリカが北朝鮮の資産凍結を率先して解除している始末だ。

 北朝鮮にとって国連経済制裁など痛くも痒くもない。今年に入ってすでに北は数回ミサイル発射実験を行なっている。それもこれも、国連加盟国のそれぞれの思惑から最初から足並みが乱れ、安保理国や6者協議関係国の足並みも乱れに乱れきっているからである。そんな足元を見透かしたように、北朝鮮はほくそえみながら堂々とわが道を歩んでいる。

 今日の『デイリーNK』に「北、新興富裕層は体制の変化を望まない」と題してロシアの専門家の分析が紹介されていた。北朝鮮の住民の多くが、相変らず最小限の生計だけを維持し、甚だしい生活苦にあえいでいるが、豊かに暮らす新興富裕層もますます増加して、彼らが北朝鮮の先軍思想や政権維持の主要な基盤になるというのである。

 確かに北朝鮮の一部の人間は、中朝貿易などで潤い豊かになってきているのであろう。これまで北朝鮮は一部の特権階層のみが裕福な暮らしをしていて、その他の圧倒的国民は貧困に喘ぎ苦汁の生活を強いられていると考えられてきた。特権階層とは金正日政権を支える人口比20パーセントの「核心階層」である。その核心階層だけが金正日政権を支え自分たちの権益を確保してきたと考えられてきたが、その受益者層が徐々にではあるが広がりつつあるというのである。

 この専門家は「北朝鮮から中国に行く北朝鮮の学生たちを見たが、中国に到着するやいなや、赤いネクタイをはずしてしまう。北に帰る時は、機内食がまずいと手もつけなかった」と、彼らの生活の実態を皮肉る。中朝貿易などで財産を貯えた新興富裕層は、既に政権に対する信頼を失ったにもかかわらず、金正日体制のために得られる利益が大きくて、体制の変化を拒否すると分析しているのである。それはもはやイデオロギーが云々の世界ではない。

 つまり、われわれが考えていた「特権階層」VS「非特権階層」、「チュチェ思想」VS「自由主義思想」という構図は崩れつつあるのである。金正日を中心とした特権階層を駆逐し、チュチェ思想に束縛されている非特権階層を解放する事が、北朝鮮に平和な社会をもたらし、ひいてはわれわれに利益をもたらすといった単純な考え方では済まされなくなってきているのである。

 金正日の後継者は誰になるのか。それ如何によっては北朝鮮は開放された国になるのではないかと、ひそかに期待を寄せる人たちがいるが、それはまったく幻想でしかない。つまり、後継者が誰であろうと、権力形態がどうなろうとも、こうした体制下で受益者が増え続ければ、そうした人間が北朝鮮の体制を支え続け、ますます頑強で意固地な体制が強化されていくと考えられるのである。

 脱北者の中には、西側での生活に順応できない人たちが数多くいるという。北朝鮮での生活に郷愁を覚える人たちも多いという。資本主義社会に馴染めないというのだ。現在、韓国で生活している、母と兄を目の前で公開銃殺にされた脱北者シン・ドンヒョク氏は、韓国へ来て“自由”を得たにもかかわらず、その自由をうまく使えず逆に苦しんでいるという。

 そう考えると、われわれが北朝鮮に対し、一刻も早く北朝鮮で苦境に喘ぐ住民たちを解放してあげなければならない、一刻も早くあの独裁政権を打倒し自由をもたらしてあげればならないと思っているのは、むしろわれわれの思い上がりなのではないだろうか。自由と健全な競争社会が“善”で、独裁政権による不自由と社会主義的非競争社会が“悪”という誰もが疑わない単純明快な常識は、ひょっとしたら、われわれの独善、ひとりよがりなのかも知れない。

 世界の国々は、かならずしも正義や善で動いているのではない。むしろ国益というある意味、醜い実利で動いている。冒頭述べた国連加盟国や安保理国、6者協議関係国の足並みが揃わないのは、まさにこの自国の国益に従ってそれぞれの国が動いているからである。

 わが国が北朝鮮との関係で何よりも考えなければないことは、言うまでもなく拉致被害者全員の奪還である。その目的は、わが国が北朝鮮によって不当に侵された主権の回復である。つまり国益以前の問題の解決なのである。それ以外は何もない。北朝鮮の住民の解放でもなければ、金正日政権打倒でもない。まして補償金のようなものを支払ってまで、国交を回復することでもない。

 北朝鮮の行く末が、たとえ金正日亡き後も、予測としてこうした暗澹たる国であり続ける以上、われわれは悠長なことを言ってはおられない。金正日政権を打倒することが、あるいは苦境に喘ぐ北の住民を解放することがひいては拉致問題解決に繋がるなどと楽観的な予想を立てていてはならないのである。金正日政権がどうなろうと北朝鮮は変わらないという前提で、この問題解決に取り組んでいかなければならない。

 アメリカをはじめ、いかに他国が当てにならないものであるかはわれわれの十分知るところである。ならばわが国としては次に何をなすべきか。拉致問題解決には時間があまり残されていない。わが国がわが国の国益を考え、本気になってこの問題を解決しようとするなら、おのずと答えは明らかである。日本が腹をくくれるかどうかにかかっているのである。




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