田原発言:これは『情報源の秘匿』といった問題ではない!
拉致被害者:家族会などが田原総一朗氏とテレ朝に抗議
北朝鮮による拉致被害者の家族会と支援団体「救う会」は11日、横田めぐみさん(行方不明時13歳)と、有本恵子さん(同23歳)の安否を巡り、テレビ番組で根拠のない発言をしたとして、ジャーナリストの田原総一朗氏とテレビ朝日の君和田正夫社長に抗議文書を送付したと発表した。
家族会などによると、田原氏は4月25日放映のテレビ朝日の討論番組「朝まで生テレビ」で、2人について「外務省も生きていないことは分かっている」などと発言した。
東京都内で会見しためぐみさんの父滋さん(76)や恵子さんの父明弘さん(80)ら家族会側は「確実な証拠もないまま死亡説を唱えるのは家族や国民の気持ちを踏みにじるもの」と批判した。
田原氏は「家族のお気持ちは分かる。ただ、情報源は言えないが情報を得ている」と説明。テレビ朝日広報部は「内容を詳細に検討し、誠意をもって対応したい」と話している。
( 『 毎日新聞 』 2009.5.11 20:24 )
この報道をめぐって、多くの人たちが田原総一朗に批判的である。「拉致被害者家族の心情をどう考えているのか」、「拉致家族に配慮がたりない」、「無責任だ」、「情報源を明らかにすべきだ」というのがおおよその意見である。
確かにそうなのだが、ここで気をつけなければならないことは、拉致被害者家族に気を遣うあまり、事実を知っていたとしても萎縮してそれを明らかに出来ない、いわば言論封殺的雰囲気に怖気づくことである。拉致被害者家族にとって、活動の拠り所となっているのは「拉致被害者が全員生存している」という前提からである。もしそのことが否定されたら、家族会は活動の論拠を失うことになりかねない。しかし、だからといって事実を隠蔽していては、かえって拉致被害者家族に対し罪作りなことになりはしまいか。もし「裸の王様」であることが確かなら、それを根拠を明示してはっきり指摘してやることの方が誠意というものであり、今後の家族会の活動の方針を明確にする上でも大切なことなのではないか。それが誠実な勇気というものではないかと思う。
さて、おそらくこの記事の争点はジャーナリストの『情報源の秘匿』という問題なのであろう。情報源の秘匿に肯定的な立場からすれば、「情報源を秘密にすることが認められなければ、手に入る情報も手に入らなくなり、その結果なされるべき報道がなされなくなる」という主張になる。一方、これに批判的な立場かからすれば「いたずらに情報源の秘匿を認めてしまっては、メディアがそれを濫用して不適切な報道が横行してしまい、また裁判の公正な実施にも悪影響を及ぼす」といった主張になる。
確かに両者にはそれぞれの言い分があるが、『情報源の秘匿』肯定論者の核心的論拠となっているのは、上記の言い分はもちろん「その情報源の人にどんな悪影響(不利益や迷惑)が及ぶかわからない」という、情報提供者の保護の意味あいが強いのではないか。むしろそちらの方が、肯定論者には強力な「建前」になっている気がしてならない。
例えば、週刊誌などでよく目にする「近所の住民によれば」という表現。読者からしてみれば「近所の住民」という記載だけでは情報源が十分に開示されている状態とはいえない。だからといって「○○在住の××さんの話によれば」などと個人名を出してしまっては、その情報源の人にどんな悪影響が及ぶか分からない。従って、そのような状況下では情報の提供者などほとんど現れなくなってしまうという、最初の理屈につながるのである。
では、今回の田原総一朗の発言はどうであろうか。彼は「情報源は言えないが情報を得ている」と言っている。明らかに『情報源の秘匿』を盾に取っているのだが、仮に田原の情報が確度の高い情報であったとして、情報提供者を何のために、誰から守ろうとしているのであろうか。つまり、誰による情報提供者のどんな不利益を想定して、情報源を秘匿しようとしているのであろうか。例えこの情報提供者が外務官僚であれ、北朝鮮の高官であれ、国内に潜むエージェントであれ、こうした拉致問題が閉塞状態にある中、それを公表したところで、その情報提供者がいかなる不利益を被るというのか‥‥さっぱり分からない。むしろ事実がつまびらかになって、利益を受けるのではないか。
拉致問題は遅々として進展していない。わが国政府は相変わらずやる気がなく、北当局も相変わらずデタラメ。米国は自国の国益だけに熱心で、同盟国であるわが国の拉致問題などにはまったく関心がない。むしろ拉致問題は停滞ではなく後退しているのではないかとさえ思われる。拉致被害者が本当に生存しているのか否かも定かでなく、根拠に乏しい慰めを頼りに空虚な運動を『お涙頂戴劇的』に繰り広げている拉致被害者家族会。この際、田原が言う「拉致被害者の死亡」が事実であるとするならば、少なくとも拉致被害者家族の皆さんには、はっきりとそのことを自信に満ちた証拠をもって、誠実に伝えるべきではないのか。これは一ジャーナリストの『情報源の秘匿』といった詭弁で済まされる話ではない。
shiraty5027
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