北朝鮮問題

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拉致-北朝鮮特別委員会なるものの正体

 西岡力氏(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会[救う会]会長)が、チャンネル桜の討論番組『拉致問題から見えるアジア外交戦争』の中で、次のようなことを述べている。

「生きている被害者が殺されて遺骨になって、それが死亡の証拠として提出されるという危険性をはらみながら、彼らはこの秋何らかの調査結果と称するものを出してくると約束した。その中身が一体どういうものとなるのか緊張している。‥‥今のところ金正恩が、全被害者を返すといった決断をしたという情報なり証拠なり兆候は一切ない。」

 西岡氏によると、昨年12月処刑された北朝鮮国防委員会副委員長の張成沢(北朝鮮ナンバー2と目されていた人物)は、「拉致被害者すべてを日本に返すべきだ」と政府部内で主張していたという。そういう勢力が粛清され心配したが、張成沢に関する罪状には「拉致を動かして日本に接近しようとした」という文言はなく(彼の粛清後に北が我が国に接近してきた)それが唯一救いである、とも述べている。

 西岡氏は今回の「北朝鮮特別委員会」なる組織は、国家機関のみで構成されており、国家機関の上部に位置する党の機関が入っていないことを指摘する。つまりこの特別委員会は野田政権末期の時の構成と全く変わっておらず、これでは拉致を直接担当した党の機関に権限が及ぶはずがなく、意味がない委員会だと懸念するのだ。

 「あたかも拉致奪還に権限がある委員会が出来た出来たと安倍総理に記者会見をさせて、ああいうことを言わせた者は誰なのか‥‥。これでうまくいくんだ、という世論操作を行っているのはたぶん外務省ではないか」と西岡氏は警戒感をあらわにしている。

  以下に西岡氏の正論に寄せた論文を紹介したい。

全拉致リスト、既に正恩氏の手に 東京基督教大学教授・西岡力

 日朝協議で、北朝鮮側は拉致問題などを調査する特別調査委員会の権限、構成、人事、活動について説明し、それを受けて日本政府は北朝鮮に科す制裁の一部を解除した。だが、北の説明を分析すると、そのような委員会では拉致問題の十分な調査は不可能だと言わざるを得ない。この点、マスコミの多くは日朝協議を進めたいと考える勢力に誤導されている。

 ≪調査委員会は欠陥だらけだ≫

 委員会の欠陥を指摘する。第1に権限である。「朝鮮の最高指導機関である国防委員会から、北朝鮮の全ての機関を調査することができ、必要に応じ参加関係機関及びその他の関係者をいつでも調査に動員することのできる特別な権限が付与される」とされている。しかし、国防委員会は国家機関であり、国家の上にある朝鮮労働党を指導する権限を持たない。国防委員会から付与された権限では、党中央委員会に所属する工作機関を調査に動員できないのだ。

 第2の問題。「委員会には国家安全保衛部、人民保安部、人民武力部、人民政権機関、その他の機関や関係者を含める」とされ、拉致を実行し、そこに被害者を管理している党の工作機関の名前がない。北朝鮮の党、政府、軍など全機関を検閲する権限を持つ党組織指導部も明示されていない。

 第3に、「拉致被害者分科会」に保健省が入ったことは、新たに死亡診断書や病院カルテを偽造する布石になるかもしれない。

 第4に「日本側からの資料等も参照しつつ、人民保安部の住民登録台帳の精査を含め、北朝鮮への入境の如何(いかん)、行方不明者の現状等について状況を確認する」とされた特定失踪者についてだ。党の工作機関が管理する大多数の拉致被害者は住民登録台帳に登録されていない。この調査だと、大半の特定失踪者は北朝鮮に存在しないとの回答が出て、事実上の特定失踪者切り捨てになりかねない。

 もっとも、委員会の実態の議論はあまり意味がない。拉致被害者の調査はすでに終わっており、全被害者のリストは金正恩第1書記の手元にある。問題は金正恩氏が全被害者を返す決断を下しているかどうかだ。局長級の協議の結果を、安倍晋三首相自らが記者発表したのは、一つには金正恩氏に決断を迫るメッセージだった。

 ≪焦点は全被害者返す決断に≫

 北朝鮮は今回、「日本政府が認定している拉致被害者について改めて調査し、それぞれの被害者について入境からの経緯を調査し、確認する」と約束した。認定被害者は現在17人、うち5人は帰国したから残る被害者は12人だ。北朝鮮は横田めぐみさんら8人を「死亡」、曽我ミヨシさんら4人を「未入境」としているが、客観的根拠は何一つ示せていない。

 認定被害者以外にも拉致被害者は必ず存在する。安倍政権が「認定の有無にかかわらず全ての被害者の安全確保及び即時帰国」を目標とするのはそのためだ。だが、現段階で金政権が全被害者の帰還を決断した証拠は全くない。

 彼らが2004年に「白紙に戻して再調査をした」として日本に伝えてきたのは、偽遺骨など、でたらめな内容だった。同年12月、政府も約50項目の疑問点・問題点を指摘して、「全く受け入れられない」と断じている(「北朝鮮から提示された情報・物証の精査結果」=平成16年12月24日)。

 北朝鮮がそれらの疑問、問題にどう答えるのかが、今回の調査の核心だ。新たに「死亡」証拠を偽造して出してくる危険性も十分にある。安倍首相自身、幹事長代理だった04年12月、横田めぐみさんのものとされた遺骨から別人のDNAが検出されたとき、「これからは証拠を出せというと危険だ。生存者を返せというべきだ。彼らは生きている人の腕を折って、本物の遺骨を作ることすらやりかねない」と警告を発していた。

 ≪日本の確認能力甘くみるな≫

 日本の技術で遺骨を鑑定すれば死亡時期も特定できる。北朝鮮が1994年に死亡した被害者のものだとして、遺骨を返してきたとしよう。日本側の鑑定結果で死亡時期が2002年以降と判明すれば、北朝鮮がウソをついていることが明白となる。北朝鮮もそれを承知しており、高温で焼けば死亡時期は識別不能になるのではないかなどと、日本の技術に関する調査を数年前から行ってきた。

 私は日本の専門機関関係者にわが国のDNA鑑定技術水準に関して尋ねたことがあり、日本警察が現在持っている技術は世界最高水準であることを知っている。

 日本には被害者の生存を確認できる多くの情報もある。古屋圭司拉致問題担当相も5月22日の「第2回日朝首脳会談10周年談話」で「我が国は、安否不明の拉致被害者についての情報収集活動を一貫して強化してきました。…拉致被害者の存在を隠蔽(いんぺい)することで拉致問題の終息を図っても、日朝関係を取り返しのつかない状況に追い込むだけです」としている。

 金政権には、日本のDNA鑑定能力と情報収集能力を甘く見たら取り返しのつかないことになると繰り返し警告しておきたい。( にしおか つとむ 『正論』 2014.7.8 03:07 )

 本文にもあるように、数年前から北朝鮮は「何度で人骨を焼いたらその骨が誰のものであるかは分かるが、死亡時期までは分からないという温度があるはずだ」という調査をし、ヨーロッパで実験をしていたということが明らかになっている。

 いまさら言うまでもなく当たり前の話だが、北朝鮮というのは国家などではなく、盗賊・山賊の集団である。そんな奴らを相手に人質交渉をしているのだということを我々は肝に銘じ、片時も忘れてはならない。

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