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「虫が恩返しに来ますよ」と緩和ケア病棟の看護師さんが笑って私に声をかけました。 窓から出られなくなったナミテントウを名刺で動かして左の人差し指に止まらせました。左手を窓の外に出して外の風に当てると、ナミテントウは小さな羽を広げて東の空に向かって高く飛んで行き、最後には小さくなって見えなくなりました。 病状が進行して「もう後がない」と思っていた患者さんがおられ、その日「苦しいけど治療を受けますか?」と問いかけたところ、「受けます。でも苦しまないように治療の時は眠らせてください」と答えられました。他科の医師に依頼し、その日のうちに治療をしてくださいました。病状は改善し、いよいよ退院することになりました。 ナミテントウが恩返しをしてくれたと、その日以来ずっと思っています。小さな命を助けたいと思う気持ちも、患者さんを助けたいと思う気持ちも、どちらも同じ心から生まれるのだと思いました。(くま)
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