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幼い頃のテレビの楽しみは、洋画だった。 大抵の男の子が好きなように、西部劇が好きだった。 特にマカロニ・ウェスタンのジュリアーノ・ジェンマが甘いマスクで格好良かった。 悪役ではリー・ヴァン・クリーフ。 運動会や祭りの度に、玩具の鉄砲を買い、早撃ちの練習をしたものだ。 人さし指で、クルクルと回してストンとホルスターに入れる早さは、ジェンマ顔負けだった。 小学校五六年の頃、多分土曜日の午後だと思う。 何気なく観た映画に釘付けになった。 もう一度、観たいと思った。 あれほど好きだった西部劇でさえ、もう一度観たいと思ったことはない。 しかし、当時、ビデオがあるわけでなく、録画は出来ない。 勿論、レンタルビデオ屋があるわけがない。 もう一度観たければ、再度テレビで放映されるまで、待たなければならない。 それから毎日、新聞のテレビ欄と首っ引きである。 来る日も来る日も探した。 そして、ようやく、やっと、それから三年後に、見つけた。 『或る夜・・・』 これだ! きっとこれだ! 出だしの音楽で判った。 そう、これだ、これ! 間違いない! そして、全ての場面を目に焼き付けるように観た。 字幕スーパーだから、場面を観ながら、字も読まなければならない。 中学生になっていたとはいえ、息つく暇もない。 食い入るように観た。 一番印象に残っている場面? 部屋に毛布で仕切りを作って泊り、翌朝、探偵を煙に巻く場面。 バスの同乗客シェープリーという男を脅かす場面。 ピーターがエリーを肩に担いで川を渡る場面。 お金が無くなり、夜、藁もみの中で寝る場面。 ヒッチハイクの場面。 エリーが告白する場面。 いや、それよりも、私が小学生の時に、一番不思議に思ったのは、 クビになった新聞記者のピーターが、特ダネを餌に編集長に対して横柄な態度で喋っていることだ。 当然、編集長はカンカンに怒る。 その上、特ダネと交換にお金を借りるが、その特ダネがボツになる。 編集長は前にも増してカンカンに怒る。 こうなったら、ピーターを殴りつけるだろう、と、見ていたら、 あにはからんや、「気を落とすな」と肩をたたいて、飲み代を渡し優しく元気づけるのである。 これに一番驚いた。 う〜ん。 アメリカ人の男同士とは、こんな風なのか。 あれだけ怒鳴りあっていながら、後腐れが残らないのだろうか、と不思議だった。 日本の男子は、滅多に怒らない。 じっと我慢して相手を見据える。 口論なんてしない。 しかし、怒る時は、それまでの鬱憤を吐き出して相手を叩き斬るのである。 まあ、この映画、どこが印象に残ってるって、全部である。 全てのカット、一つ一つが傑作であり、きちんと繋がっている。 そして、十年前に、急に思い出して、VHSビデオで、観た。 そこで、初めて知ったのである。 1934年アカデミー賞5部門受賞。 主演クラーク・ゲーブル、クローデット・コルベール。 ああ、そうか、あの髭の男、クラーク・ゲーブルだったんだ。 実は、『風と共に去りぬ』でのゲーブルが嫌いだった。 実業家で金持ちで、ハンサム、喧嘩に強く、機転が利き、誇り高く、運も良い。 と、三拍子も四拍子も揃って、鼻持ちなら無いのである。 ところが、『或る夜の出来事』でのゲーブルは、同じようでいて貧乏なのだ。 それに、気が優しくちょっと間抜けなところがある。 だから、好感がもてた。 「文化」は、その国に好感を持たせるものなのだ、とつくづく思う。 この映画を観る限り、私は、世界中で二番目に好きな国がアメリカである。 一番は、勿論、自国日本である。 最近、昔の映画がDVDで格安の値段で販売されるようになった。 真っ先に『或る夜の出来事』を買い、夜な夜な楽しんでいる。 *----------*----------* 【解説】 1934年アカデミー賞5部門受賞(作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞) この記録は、1975年の『カッコーの巣の上で』が成し遂げるまで出ないほどの大記録であった。 ラブコメディの最高傑作。 この映画からゲーブルは、一躍スターになり、コロンビア映画も倒産を免れたらしい。 主演 クラーク・ゲーブル クローデット・コルベール 監督 フランク・キャプラ 原作 サミュエル・ホプキンス・アダムズ 小説『夜行バス』 脚本 ロバート・リスキン 製作国 アメリカ合衆国 映像 モノクロ 言語 英語 【ストーリー】 銀行家の富豪の娘エリー(クローデット・コルベール)が、父親が猛反対する気障な婚約者のところへ逃避行する。 一人娘を男手一つで育てた父親は、探偵を雇って探す上に、発見者に1万ドルの賞金を出す広告を新聞に載せる。 まだ、飛行機も普及していない時代。エリーは人目を忍んで、マイアミからニューヨークまで夜行バスに乗って婚約者の下へ向かう。 約1800キロメートル。恐らく四五泊しなければならない旅程だったのだと思う。 そこにたまたま同乗した失業中の新聞記者ピーター(クラーク・ゲーブル)がエリーを見つけ、特ダネにしようと考える。 美人で笑顔が可愛く、気が強い。世間知らずで何でも思い通りになると考えている我が儘な娘エリー。 喧嘩に強く、機転が利き、ユーモアがあり、物識りだが貧乏な新聞記者ピーター。 父親に通報されたくないし、父の雇った探偵に見つかりたくもないエリー。 新聞社に復帰したいピーターは、エリーの逃避行の独占記事を書かせて貰う換りにニューヨークまで無事届けることを条件に出す。 ここから、二人の珍道中が始まる。 ピーターとエリーは、口論しながらも、笑いが絶えない旅を続ける。 いつの間にか惹かれあっていた二人。 もう少しでニューヨークに着くというところで、エリーは、もう一泊したいとピーターにねだる。 その夜、エリーは、ピーターに自分の気持ちを告白する。 ピーターは、婚約者の下へ向かうエリーが本気だと信じられず、彼女を諌める。 しかし、エリーが眠りについた頃、自分も彼女に惹かれていたことに気付く・・・。 そして、二転三転のどんでん返しの結末。
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この映画は本当にストーリーが練られていて、何度見ても人を楽しませる力を持った映画で、昔のアメリカ映画の良さというかやはりキャプラ&リスキンだから出来た映画だったのでしょう。ゲーブルをこんな味のある魅力的な個性で描いたものは他にないと思うし、コルベールも一見嫌な女なんだけど、可愛くて愛すべき女だと思わせてくれるのも、ゲーブルのキャラクターとストーリーの面白さとキャプラの巧みな演出力に負う所大でありましょう。<イヤー、映画って本当にいいものですね!>と思わず膝を叩いて言ってしまう作品だと思います。
2008/8/3(日) 午前 11:55 [ 風天 ]
>風天さん
思い出の歌謡、思い出の場所とかが一人一人違うように、思い出の映画も人それぞれだと思います。この映画は、私にとって最高の宝物です。
将棋の矢内女流名人は、幼い頃『風と共に去りぬ』を観てビビアン・リーの美しさに虜になり、何十回観たか分らないそうです。
やはり、男と女では観点が違うんですしょうね。
2008/8/3(日) 午後 6:10 [ 銀桂一行 ]
はじめまして♪『或る夜の出来事』のゲーブルも『風と共に去りぬ』のゲーブルも大好きです♪
レット・バトラーの方は何拍子もそろいすぎてお嫌いだったのですね(^O^)私はもちろん金持ちの方が好きです〜
ビビアン・リー、とても綺麗でしたね〜♪二人の写真を部屋に飾ってるので毎日見ていますが、リーの美しさにはいつもうっとり♪これだけの美貌を持ってしてもあまり幸せな人生でなかったのが可哀想ですね。
2008/8/12(火) 午後 7:13
はじめまして。
ダメですよ〜。「金持ち好き〜」何て言ったら(笑)。
我々は、貴方のような美人にプロポーズできなくなるじゃあないですかあ。
チャンスは平等にして下さい。
バトラーには負けない様なシャベリとか、お笑いがあるかも。
そうそう、『風と共に去りぬ』のビビアン・リーは、不幸だったんですね。
なるほど、女性向の映画として製作されたんだ。
2008/8/12(火) 午後 9:12 [ 銀桂一行 ]