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故升田幸三 実力制四代名人は、故大山康晴 十五世名人と昭和の一時代を築いた名棋士である。 二人は、三歳違いの兄弟弟子であり、最大のライバルであった。 対戦成績は、大山の96勝70敗で、升田が負け越しているが、升田以外に大山に対抗出来る棋士はいなかった。 だから、タイトル戦と云えば、大山対升田のカードばかりであった。 生涯成績でも、タイトル獲得数でも、圧倒的に大山が升田を凌いでいる。 しかし、これは升田が最も指し盛りだった頃に、兵役を務めたことと、その戦争中に患った病気が原因で復帰後も健康が優れず、長期休場するなど、条件が悪かったことも背景にある。 だが、人気は断然升田の方が上だった。 それは、升田の発言が、将棋界だけにとどまらず、多くの人から拍手喝采を浴びたからだ。 こんなエピソードがある。 昭和二十三年の夏、升田幸三はGHQ(連合軍総司令部)に呼び出され、将棋に関する事情聴取を受けた。 GHQは 「 チェスと違って日本将棋では、取った駒を自軍の兵隊として使用する。 これは捕虜の虐待で国際条約違反だ。日本軍の捕虜虐殺に通じる野蛮なゲームである 」 と難くせをつけてきた。 升田は、まず「 酒を少し飲ませろ 」と言った。 ビールが出され、それを飲むと、 「 冗談を言われては困る。チェスで取った駒を使わんのこそ捕虜の虐待だろう。 日本の将棋は敵の駒を殺さない。常に全部の駒が生きておる。 これは人の能力を尊重し、それぞれに働き場所を与えようという正しい思想である 」 さらに 「 アメリカ人はしきりに民主主義を振り回すが、チェスでは王様が危なくなると、 女(クイーン)まで盾にして逃げようとするじゃないか。あれはどういうわけだ。 民主主義やレディーファーストの思想に反するではないか 」 これには係官も呆れたらしく 「 貴君は実に良くしゃべる。珍しい日本人である、みやげにウイスキーを持って行け 」 などと言ったそうだ。 『 升田幸三物語 』 東公平著 平成7年3月 日本将棋連盟発行この話、今聞いても痛快である。 羽生四冠は、亡くなった棋士の中で最も指してみたい棋士に、「 升田幸三 」を挙げている。 *----------*----------* 【追記 2012.12.19】 この挿話は、「 将棋の持ち駒再利用は、人の能力を尊重する正しい思想である 」と略して 将棋史上第3位の名言と位置付ける。 時代背景と共に順位は入れ替るが、いつ第1位になっても、不思議ではない至高の名言である。 *----------*----------* 【参考】 将棋史上最高の名言ベスト5 将棋の名言 第6位以下。将棋史上の名言 将棋の名言 番外編その1。将棋史上の名言 将棋の名言 番外編その2。将棋史上の名言 将棋の名言 番外編その3。将棋史上の名言 |
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