将棋の茶店「芹沢鴨?」

将棋は大切な日本文化の一つ。将棋界が羽生(はぶ)さんを得たことは、天恵です。

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第2回電王戦は、是が非でも、プロ棋士に勝って貰いたいので、引き続き将棋ソフトの弱点を指摘してみたい。

【コンピュータ将棋ソフトの弱点】

将棋ソフトが、1秒間に「 3億手読む、6億手読む 」と言う話にプロ棋士が驚く。

村中六段が「 3億手って、読みすぎでしょう 」と呆れていた。(注1.)

しかし、はっきり言って驚くほどの数ではない。

プロ棋士の方が、遥かに読んでいるのだ。


では、なぜプロ棋士が驚くか?

それは、プロ棋士が「 場合の数 」を錯覚しているからだ。(注2.)

「 場合の数 」とは、要するに、変化手順を含め、ルール上、何通りの指し手があるのか?

という数値のことだ。

錯覚しているからと言って、別に悪いことでも短所でもない。


例えば、第60期NHK杯戦 準決勝 羽生vs渡辺戦 (注3.)

96手目後手渡辺が△1一金と打った局面。(図3.)


解説の郷田九段は、次の指し手を考えながら、

「 ここまでするんだから研究しておけばいいじゃあないかと思われるかも知れないんですけど・・・ 」

と、自嘲気味に呟いた。

意味は、「 75手位までお互いにノータイムで指してきたんだから、そこから20手先の詰む詰まないくらい事前に

研究しておけよ 」と視聴者の皆さんに指摘されそうだ、という意味だ。

私は、テレビの前で驚いた。

こんなところ(96手先)まで詰む詰まないを研究するなんて、不可能だ、と。

しかし、郷田九段は、殆ど1本道(の読み筋)の印象だったのだと思う。

流石、A級!凄い!


棋士は、幼い頃から将棋を強くなることだけに専念し、『 直感方式 』と呼ぶ読み飛ばしが

出来るように鍛えてきた。(注2.)

局面をパッと見れば、有力な指し手が1手(通り)か3手(通り)浮かぶ。

その中には、必ず、最善手、次善手が入っている。

アマチュアには到底真似出来ない職人芸だ。

と言うより、逆に、プロになるためには、この技能が必須条件なのだ。


それでは、あらためて「 場合の数 」を簡単に説明する。
将棋の各局面で、ルール上、指せる手は平均80通りと言われている。
高々6手先でも、80の6乗=2621億通りの局面になるのである。
10手先になると、80の10乗=1073京7418兆2400億通りの局面になるのである。
この数を力づくで読むやり方を『 ブルドーザー方式 』と呼ぶ。

棋士は1つの局面で正確な『 3手のフォーカス 』が出来る。
1つの局面毎に80通りではなく、3通りの局面に絞ることが出来るのだ。
それでも、6手先で、3の6乗=729通りもの局面が存在する。
ここで、一旦手を止めて、よく考えて頂きたい。

6手先の最善の局面を見つける為には、729通りの局面を一つ一つ頭の中で比較検討しなければならないのだ。

こんなこと、何時間あっても不可能だ。


10手先になると、約6万通りの局面を比較検討しなければならない。

僅か、10手先だ。

6万通りの局面を一つ一つ頭の中で比較検討し、最も良い局面を見つけるなんて、何十年かけても不可能だ。

14手先で、3の14乗=約470万通りもの局面が存在する。(注4.)

もう説明の必要は無いだろう。


ところが、プロ棋士は、前述した通り『 直感方式 』と呼ぶ、読み飛ばしの方法で、

有力な指し手を1手(通り)か3手(通り)に絞っている。

当然の一手が続く場合には、『 必然の1手連続 』というトンデモナイ読み飛ばしが出来る。

そして、この『 3手のフォーカス 』と『 必然の1手連続 』を駆使して、

10手先〜14手先を30局面程度に絞って比較検討していると推測される。


郷田九段クラスになると、この30局面でも多い、と感じているはずだ。

なぜ、もっと局面を絞れないのか、と、長年自分を追い込み鍛錬を積んできた。

何億、何千億の局面が存在するなんて、夢にも考えたことがないはずだ。

考えたことはあるかも知れないが、普段は全く意識に無いはずだ。

だから、棋士が「 場合の数 」を錯覚するのは、しぜんの成り行きなのだ。


整理すると、

『 ブルドーザー方式 』で10手先まで読むなら、1073京通りの局面
『 3手のフォーカス 』で10手先まで読むと、約6万通りの局面
『 直感方式 』で10手先から14手先まで読むと、30通りの局面

となる。


コンピュータ将棋ソフトは、基本的に『 ブルドーザー方式 』である。

そして、どれが最善の局面かを比較する為の点数の計算式が評価関数である。

10手先まで読むなら、1073京通りの局面に、一つ一つに点数付けして、最も点数の高い局面を最善と

判断することになるのだ。

( 将棋ソフトの『激指』は、「実現確率探索」などの工夫により、ここまでは読んでいない。)



だから、将棋ソフトが、「 3億手読む、6億手読む 」と言うことに驚く必要はない。

むしろ、少な過ぎる。

「 プロ棋士は、何千億何百億手を読んでいる 」

否、正確には、

「 プロ棋士は、何千億何百億手を読み飛ばして、最善手に辿り着いている 」


その証拠に、将棋ソフトは、高々3億手しか読めないから、プロ棋士の棋譜を基に評価関数を生成した。

そういうことなのだ。


よって、将棋ソフトは、序盤、中盤の大局観において、まだまだ、人間に遠く及ばないのだ。

近い将来、将棋ソフトが、神様の最善手を指すだろうと息巻いているそうだが、

そんなこと、現在の機械学習の方法では、絶対に有得ない。

人間の最高峰に勝つのが精一杯だ。

神様の足元にも及ばない。


但し、人間も万全ではない。

100%最善手に辿り着いているとは言い難い。

これは、前回、書いた。

その上、最善手と次善手の間の優劣の差が小さい場合が多々ある。

理論的には優勢でも、具体的に良くするのが難しい局面は山ほどある。


従って、将棋ソフト相手に、最終盤に五分五分で雪崩れ込んだら、人間は不利だ。

中盤において、大局観で2手差のリードをつける戦いをしなければならない。

これは、プロ棋士なら意外と簡単に出来るかも知れない。

いや、そう信じなければ、勝ち目は無い。

*----------*----------*
【検証】

それでは、羽生vs渡辺戦を検証してみよう。

この羽生vs渡辺戦は、矢倉4六銀3七桂の戦型で、二人の指定局面のようなものだ。

先手が▲6四銀と角を取った手に対し、後手が64手目△同歩と銀を取り返したのが図1.


[ 図1. 64手目△6四同歩まで ]

イメージ 1


ここから、96手目△1一金まで(図3.)の指し手とルール上可能な指し手の数、有力な指し手の数を

表にしたのが、図2.だ。


[ 図2. 第60回NHK杯 羽生vs渡辺戦の64手目〜96手目までの「 場合の数 」 ]

イメージ 2


表の通り、中盤のルール上「 可能な指し手の数 」は、56通りから281通り、平均170通りだ。

よって、64手目から96手目の変化局面数=場合の数は、約10の70乗ぐらいになる。


「ランク別指し手」の「S」は、郷田九段が解説で候補に挙げた数と思って頂いたら良い。

空白のところを1とすると、64手目から96手目の33手間、2が6個、1が27個だ。

よって、変化局面数=場合の数は、64通りだ。


次に「ランク別指し手」の「A」は、私が、「S」以外に有力候補に挙げた数だ。

「S」と「A」の合計の64手目から96手目の変化局面数=場合の数は、398京2060兆4866億通りだ。

スーパーコンピューターを使えば、400年位長考すれば、答えを弾き出すだろうか。(笑)


整理すると、64手目図1.から96手目図3.の間の変化局面数=場合の数は、

 ルール上可能な指し手の場合、約10の70乗通り。

 ランク「S」と「A」の合計の場合、398京2060兆4866億通り。(=3.98x10の18乗)

 郷田九段の解説の候補、「S」ランクの場合、僅か64通りだ。


人間は、なんと、偉大なのだろうか!

33手先までの変化を僅か64通り程度で比較検討しているのだ!


しかし、64通りも実はあったのだ。

郷田九段の印象では、4通りから8通り位で、64通りの認識は無かったと思う。

だから、冒頭のような「ここまでするんだから・・・」の自嘲気味の言葉が、つい口から漏れた。


[ 図3. 96手目△1一金まで ]

イメージ 3

*----------*----------*
【注解】

注1.村中六段が「3億手って、読みすぎでしょう」

 野月浩貴七段、村中秀史六段、西尾明六段、佐藤和俊五段が、GoogleのHangouts On Airを使って
 WEB上で、コンピュータ将棋の分析をした座談会の中での発言。
 2012年世界コンピュータ将棋選手権優勝のGPS将棋の棋譜を題材に分析した。
 You-tubeより録画配信。配信日: 2012/06/15

注2.『 直感方式 』『 3手のフォーカス 』


注3.第60期NHK杯戦 準決勝第1局 羽生善治NHK杯保持者vs渡辺明竜王
  113手で先手羽生勝ち。2011年3月6日放送。解説者の郷田真隆九段が96手目の局面で呟いた。
 「 ここまでするんだから研究しておけばいいじゃあないかと思われるかも知れないんですけど、
  研究じゃあカバーし切れない部分があるんですね 」

注4.「14手先で・・・」

 なぜ「14手先」に拘るかと言うと、人間の世界チャンピオン、カスパロフ氏に勝ったチェス専用スーパー
 コンピューター「ディープ・ブルー」が、14手先を読むように作られていたからだ。
 蛇足だが、この当時、「ディープ・ブルー」は1秒間に2億通りの局面を処理できた。
 チェスの1局面でのルール上可能な指し手の数は、平均35通りだ。(将棋は80通り。)
 それでも、14手先は10の21乗通りの変化局面が存在し、毎秒2億通り処理できても、時間内に指せない。
 よって、カスパロフ氏の読み筋を予想して、それに対抗する14手先だけを読んだ。

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2013/3/14(木) 午前 5:02 [ ymi*3o3*3zb**32 ] 返信する

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