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特異な人とは、三段リーグ突破者(四段昇段者)90名の中で、私が分類に悩んだ人のことだ。 今回の特異な人は、阿部光瑠(現四段)である。 彼は、大物である。 私が、大いに期待している若手の一人だ。 昨年の3月、彼は第2回 電王戦の先鋒だった。 初の現役プロ棋士vsコンピュータ将棋の初戦である。
世紀の対決の開幕戦。
緊張するな、落ち着け、と諭しても無理である。A級最終局「将棋界の一番長い日」を凌ぐマスコミの殺到。 関係者の予想を遥かに上回った。 タイトル戦の雰囲気である。 いや、羽生七冠が誕生したとき並みのマスコミの量だ。 阿部光瑠って、誰? 固唾を呑んで見守った。 そんな中、18歳の童顔の男子が登場した。 カメラのフラッシュを浴びせられているのは、棋士になって2年余りの若者である。 勿論、タイトル戦など経験あろうはずがない。 きっと、普段の力の半分も出せないだろう。 皆、心配した。 ところが、阿部は、臆することもなく、気負うこともなく、飄々としていた。 そして、皆が心配するのを他所に、昼食に鰻重と特上にぎり寿司の両方をペロリと平らげたそうな。 周囲は、唖然とすると同時に安堵したに違いない。 私は大笑いした。 以来、阿部光瑠四段の大ファンである。 さて、その彼の三段リーグの成績が次の表だ。 彼が、四段昇段したのは16歳のとき。 正しく「 天才型 」だ。 と言いたいところだが、実は「 秀才型 」にするかどうか悩んだ。 「 天才型 」の基準は、 1.1期抜けで20歳以下。 2.3期以内に抜けて、17歳以下、通算勝率が0.600以上。 3.5期以内に抜けて、16歳以下、通算勝率が0.600以上。 上記各条件に加えて昇段時の勝数が13勝以上。 次の表は、リーグ突破の年少記録である。 やはり、ほぼ全員「 天才型 」である。 しかし、彼と山崎だけが唯一違う点がある。 勝率(通算勝率)である。 .600を下回っている。 阿部の成績表を見ると、負越しが2度あり、通算勝率も.528と昇段基準の.550すら下回っている。 この成績だと、更に3期以上かかりそうなものだ。 しかも、昇段した期が13勝で、その直前が僅か7勝で負越している。 普通なら14勝ぐらいしないとこの順位の差を飛び越えられないはずなのだが、彼は物ともしていない。 私が推測するところ、阿部は、恐らく「 ここ一番に強い 」のだと思う。挑戦者決定戦とか、タイトル戦の最終局とか、大舞台に異常な強さを発揮する。 そんな素質を備えているのではないか。 これは、天性のものだ。 「 16歳以下で四段になった者は、必ず、タイトル奪取する。」この法則に従えば、阿部は必ずA級まで上るし、タイトルを奪取するに違いない。 しかし、棋士になって3年、やや物足りない。 昨日行われたC級2組 最終回で佐々木勇気(新五段)が、C級1組へ昇級した。 同じ「 天才型 」の佐々木に先を越されてしまった。 だが、渡辺明二冠(29歳)の次の世代を形成するのは、豊島七段(23歳)に次いで、 阿部光瑠、佐々木勇気の2人の19歳のはずである。 私は、阿部を「 天才型 」に分類した判断は間違っていないと信じている。 来期こそ、C級1組へ、竜王戦で5組へ昇級することを祈る。 無茶な注文ではないはずだ。 *----------*----------* 【プロフィール】 阿部 光瑠(あべ こうる)四段 青森県弘前市出身 中村修九段門下 四段昇段 2011年4月1日付。16歳6カ月 順位戦 C級2組 竜王戦 6組 *----------*----------* 【統計の解説】 現在、第54回を迎えているので、発足して27年目である。 統計は、第11回(1992年)〜第53回(2013年)までの43期分、約22年分である。 第1回からの統計にしなかった理由は、次の3点である。 1.第1回在籍者の在籍期間が、1期となってしまい数値として不適当になる。 2.第1回は17名、第2回は16名と少なく18戦になったのは第3回以降。 3.構成員が30名を超えるのは第11回以降。 よって、今回、統計をとるに当って第10回以前を除外した。 また、昇段、退会に関する規約が途中変更されている。(注1.) 次点2回者も同等の昇段者として扱い統計に加えた。 なお、編入試験で四段になった瀬川晶司氏は、三段リーグで退会者として扱った。 また、同じく編入試験で三段リーグへ再度参加した、今泉健司氏は、通算した。 *----------*----------* 【注解】 注1.昇段、退会に関する規約が途中変更 1997年以降次点を2度取ったものは、フリークラスの四段に昇段する権利を得る。 奨励会発足時は年齢制限がなかったが、1968年に「満31歳の誕生日までに四段に昇段できなければ奨励会を退会」 という規定を 設ける。その後、1982年に満26歳に引き下げられてた。1994年に次の延長規定を追加する等して現在に至る。 満21歳の誕生日までに初段、満26歳の誕生日を迎える三段リーグ終了までに四段に昇段できなかった者は退会となる。 ただし三段リーグで勝ち越しを続ければ満29歳を迎えるリーグ終了まで延長して在籍できる。 年齢・勝ち越し条件に関係なく三段リーグに5期(2年半)在籍できる。 *----------*----------* 【参照】 |
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