|
封じ手のエピソードを囲碁界ばかりから紹介して来ましたが、将棋界ではどうでしょうか。 第54期 名人戦 七番勝負 羽生名人 vs 森内八段 第1局 我らが羽生名人が七冠を独占しているときですね。 この第1局で、後々まで語り草となる出来事が起った。 挑戦者森内が、封じ手時刻直前に指したのだ。 すわ、盤外戦術か!? 周囲に緊張が走った。 しかし、皆さん解りますよね? 前回まで紹介した囲碁界の例とは違うって。 森内の人柄を知るファンなら、森内がそんな盤外戦術をやらないって、直ぐに解る。 森内は、この名人戦が、初のタイトル戦出場で、当然、二日制なんて初めて。 封じ手も初めて。 どうやって封じたらいいのか、その手順が分らない。 いや、知ってはいるが、それに気を遣いながら行うのが嫌だ。 で、悩んだ挙句、定刻直前に指して、慣れている羽生名人に譲った。 相手の羽生名人は、全く意に介さず、泰然自若としたものですから、何のトラブルにも至らなかった。 むしろ、森内の方が遥かに動揺していたに違いない。 そうすると、先の竜王戦で糸谷七段(現竜王)が、初のタイトル戦、初の二日制、初の海外旅行、初の和服、 そして、いきなり初の封じ手を物怖じせず行ったのには、大物感が漂ってますよねえ。 頼もしい! 封じ手は、定刻の概ね30分前に手番の方が、封じるのが礼儀としたものです。 封じ手時刻の5分前、1分前に指すのは、挑発していると受取られる。 喩えて言えば。 朝の通勤ラッシュの時間帯、早めに行ってホームで行列の先頭に並んで待っている。 電車が入って来て、ドアが開く。 そこに横からサッと自分の前に割込んで来て、電車に乗ろうとする、非常識な奴。 腹が立ちますよねえ。 襟首掴んで、「ちょっと待たんかい!!」って、引き摺り降ろしたくなります。 と、まあ、こんな場面の心境でしょうか。 *----------*----------* 【注解】 第54期 名人戦 七番勝負 第1局 平成8年4月11・12日(2日制・持時間各9時間) 羽生善治名人(竜王・棋聖・王位・王座・棋王・王将の七冠 25歳) 挑戦者 森内俊之八段(25歳) 福岡県福岡市「シーホークホテル&リゾート」で行われ、121手で先手の羽生名人が勝った。 このシリーズ、羽生名人は出だし3連勝し、第4局を落としただけで、4勝1敗で防衛した。 *----------*----------* 【シリーズ「封じ手の駆引き」】 |
全体表示
[ リスト ]





