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新居には、家具が一切無く、白木の臭いが漂っていた。 畳の間に二人で横たわった。 布団も無い。 僕は、範チャンの首に腕をまわし、抱き寄せ、唇にキスをした。 範ちゃんは、実在するのだが、電話があった件から夢である。 もう、三十五年近く会っていない。 夢を見たのは、朝、六時だった。 飛び起きた。 こんなに鮮明に見たのは久し振りで、直ぐに携帯のメールに綴った。 久し振りに会いたくなった。 何処に住んでいるのだろうか。 相変わらず、綺麗だろうか。 夢を見た二日後の日曜日。 ひょんなことから、病院で療養している叔父さんを見舞いに行くことになった。 叔父さんとは、四年振りである。 叔父さんは、範ちゃんとも伯父と姪の関係だった。 そこで、思わぬ話を聞かされた。 思わず「 えーっ!! 」と辺り構わぬ大声を上げてしまった。 雷に撃たれたような衝撃だった。 夢に範ちゃんが現れたことと、他界した知らせを受けたこと。 三十五年間、思い浮かべなかったのに、僅か二日間という時間で。 偶然にしては、あまりに偶然な時間の一致だ。 この二年間、範ちゃんは、天使となって、色々な知人を訪ね回っていたのだろうか。 そして、最後に、誰か忘れていないかなあー、と思案して、やっと僕に思い至ったのだろうか。 |
想い出
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嬉しかった。 幼い頃から、僕も好きだった、と、告白した。 違和感はあったが、嫌な気がしなかった。 昔から決められた運命だったような気がした。 でも、範ちゃんは、「 好き 」とは言ってくれていない。 大体から、何で結婚したくないのか。 結婚式の一週間前になるまで、誰かに相談しなかったのか。 どうして、僕なのか。 範ちゃんは、何も喋ろうとしない。 |
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範ちゃんの相談に乗ると、範ちゃんは結婚したくないと言い出す。 結婚式を一週間後に控え、新居も用意されいるのに・・・。 帰りたくない、と泣く。 範ちゃんは、突然、「 私と結婚して 」と、僕に迫った。 そして、今夜は誰も住んでいない新居に二人で泊まろうと。 新居は範ちゃんの両親が用意したもので、名義も範ちゃんのものらしい。 |
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範ちゃんは、勉強も良くできて、目鼻立ちのはっきりした美人だった。 僕は、高校卒業してから、 神戸三ノ宮の レストランでアルバイトをしていた。 ある日、倉庫へ物を取りに先輩2人の後に着いて『 サン地下 』を歩いていると、「 Yチャン! 」と僕を呼び止める女の人の大声がした。 振り向くと範ちゃんだった。 範ちゃんは、「 ここで何しとるん? 」と言いながら近付いてきた。 そして、僕の後ろに立ち止まっている白いカッターシャツに蝶ネクタイの二人の先輩を一瞥した後、 二言三言喋って、名残惜しそうに後輩らしき女の子達と去って行った。 そうすると、アホな先輩二人は僕を挟んで、「 誰やあれ!美人やなあ 」とチヤホヤするのである。 きっと二人とも、嫌らしい目で範ちゃんを見ていたに違いない。 それほど美人だった。 |
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僕が二十五歳のとき、幼馴染みの範(のり)ちゃんから電話があった。 結婚式を一週間後に控えた彼女は、相談したいことがある、と、深刻そうだった。 範ちゃんは、近所に住む一歳上の女の子で小学校まで、男の子に混じって、毎日のように一緒に遊んだ。 僕と範ちゃんが生れてから、高校卒業まで過ごした田舎は、兵庫県但馬の山奥だった。 |





