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昨年5月、アルファ碁 vs 柯潔(かけつ)九段の三番勝負が行われ、アルファ碁の3戦全勝で終った。 その第1局、解説の趙治勲先生が、 「 それにしても、柯潔の打ち方はなんだ!こんなの柯潔じゃあない! 」 「 柯潔は、ここ何ヶ月か、アルファ碁対策ばかりしていて、自分の碁を見失ってる。」 「 自分の碁を打てば勝てるんだ! 」と痛く憤慨なさって居られた。(笑) 左:吉原 六段 右:趙 名誉名人 これは難しいところで、相手の弱点を突く作戦はある。 ただ、それが行き過ぎて、自分の棋風やリズムを崩してしまうと、逆にマイナスである。 昭和47年(1972年)、第26期 名人戦 七番勝負。(註1) 大山康晴 名人(王将・王位 49歳) vs 中原誠 十段(棋聖 24歳)の有名な頂上決戦。 第5局までで、大山が3勝2敗とリード。 防衛に王手をかけた。 中原は、ここで方針転換。 第6局、第7局と振飛車を採用した。 左:大山 前名人 右:中原 新名人 この作戦は、皮相的に見れば、中原の分が悪いはずだ。 普通なら、負ける。 もし、敗退していれば、趙名誉名人は 「 中原はなんだ!同じ負けるにしても、自分の将棋を指せ! 」 と、お叱りになったに違いない。 私の結論は、 相手の弱点を衝く作戦は、それなりの技術が必要。と、言うことだ。 技術とは、訓練し、習得したもので、付け焼刃のことではない。 柯潔九段も、十分訓練していたに違いない。 作戦として、決して悪くなかった、と思う。 1年前のバージョンだったら、1勝くらいしていたかも知れない。(註2) 今回は、アルファ碁が強過ぎたのだ。 <続く> *----------*----------* 【ニュース冒頭】 米グーグル傘下の人工知能(AI)開発ベンチャー「ディープマインド」(英国)の囲碁ソフト『 アルファ碁 』と、 世界最強の中国人プロ棋士、柯潔(かけつ)九段による三番勝負の第1局が2017年5月23日、 中国浙江省(せっこうしょう)の烏鎮(うちん)で行われ、ソフトが初戦を制した。 「Future of Go Summit(囲碁の未来サミット)」と銘打たれた。 <対局概要> 主催:Google、中国囲棋協会、浙江省体育局 対局日程:2017年5月23日第1局、5月25日第2局、5月27日第3局 ※勝敗状況に関わらず、必ず3局実施 開催場所:中国浙江省烏鎮 対局ルール:持時間3時間+秒読み1分×5回 対局料:30万ドル(約3,400万円) 賞金:150万ドル(約1億7,000万円) 柯潔(かけつ)九段 中国の囲碁棋士。1997年8月2日生、19歳。 浙江省麗水市出身、中国囲棋協会所属、九段。 阿含桐山杯戦優勝、百霊愛透杯世界囲碁オープン戦、三星火災杯世界囲碁マスターズなど数々の世界戦で優勝し、 非公式ではあるが棋士レーティング世界1位に位置付けられている。 AlphaGo(アルファ碁) アメリカ・グーグル社の傘下にあるベンチャー企業「ディープマインド社」が開発した囲碁ソフト。 ヨーロッパのチャンピオンである中国出身のプロ棋士ファン・フイ氏と対局し、5戦全勝。 史上初めて19路盤で人間のプロ棋士に勝利した囲碁ソフト。 2016年3月には世界最強棋士の一人、韓国の李世乭(イ・セドル、33歳)九段との対決し、4勝1敗。 韓国棋院からプロとしての名誉九段を授与された。 日本での『ニコニコ生放送』 解説:趙治勲 名誉名人 聞き手:吉原由香里 六段 *----------*----------* 【注解】 註1.昭和47年(1972年)、第26期 名人戦 七番勝負。 大山康晴 名人(王将・王位 49歳) vs 中原誠 十段(棋聖 24歳)の有名な頂上決戦。 三冠vs二冠で、中原が名人を奪取すれば逆転する。 しかし、流石の大山「名人だけは渡さん」とばかり、第5局までで、3勝2敗と防衛に王手をかけた。 中原は、ここで方針転換。 第6局、第7局と振飛車を採用した。 振飛車は、晩年の大山の御家芸で、第5局まで、大山の振飛車、中原の居飛車だったのだ。 中原は、「受けの達人に、攻めさせる」ことにしたのだ。 大山とて若い頃は居飛車党だったから、苦にしない。 大山は「勝った」と思ったに違いない。 ところが、結果は、将棋も番勝負も、中原の逆転勝ち。 大山から名人を奪取した。 この名人戦を境に、大山時代が終焉し、中原時代が始った。 註2.1年前のバージョン 2016年3月、韓国の李世乭(イ・セドル、33歳)九段と対決したときのバージョン。 結果は、アルファ碁の4勝1敗。
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気になる将棋
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今回の結果で、若手がA級棋士を超える実力だ、と、長年の将棋ファンは誰も思っていない。 その証拠に、逆に、負越していたら、絶望するからである。 非公式戦だったので、トップ棋士が実力発揮できなかった訳ではない。 一生懸命指していた。 では、何故、トップ棋士が負越したのか? それは、アマタイトル保持者クラスとプロが平手で指すに似ている。 やり難いのである。 要するに 「負けても何も失うものがない者」vs「勝っても何も得るものがない者」 または 「全力で向える無心の挑戦者」vs「汲々とタイトルを守る者」 あるいは 「兵站充分の兵8万の大軍」vs「兵1万の孤城」 と表現すれば、ご理解得られるであろうか。 若手7人(聡太君を含む)との本当の勝負は、 順位戦、竜王戦、各棋戦のリーグ戦、本戦トーナメントでの対戦である。 そこで、勝てるか、どうか。 もう一度繰返す。 今回、若手が勝ち越したことで、やっと、トップ棋士の視野に入った。 トップ棋士の視野、すなわち、トップ棋士がマークしている相手は、B級1組以上である。 今回の結果で、将棋界は、活況を呈した。 AbemaTVさん、有難う。 *---------*----------* 【「魂の七番勝負」若手vsトップ 対戦結果】 平成29年9月30日〜11月11日 毎週日曜日放送 1.▲佐々木大地四段(22歳)vs △屋敷伸之九段(45歳) 89手で佐々木四段の勝ち。 2.▲佐々木勇気六段(22歳)vs △藤井猛九段(46歳) 83手で佐々木六段の勝ち。 3.▲行方尚史八段(43歳)vs △藤井聡太四段(15歳) 132手で藤井四段の勝ち。 4.▲郷田真隆九段(46歳)vs △青嶋未来五段(22歳) 128手で青嶋の勝ち。 5.▲八代弥六段(23歳)vs △森内俊之九段(46歳) 135手にて八代六段の勝ち。 6.▲増田康宏四段(19歳)vs △三浦弘行九段(43歳) 111手にて増田四段の勝ち。 7.▲近藤誠也五段(20歳)vs △木村一基九段(44歳) 98手で木村九段の勝ち。 若手vsトップ棋士は6勝1敗という結果となりました。
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挑戦権を逸し、師匠の板谷進八段から七番勝負の記録係を命じられた。(註1) 随分話題になったエピソードである。 それから独特の四間飛車を駆使してA級まで上った。 その頃、棋士と云う職業をよく知らない私の友人が、乗馬クラブで小林九段に一局教わり 全く敵わなかったと驚いていたのが、昨日のことのようである。 それなりに対策を立てて臨んでいる。 特に世間から注目されているだけに、いい加減に臨むのは、失礼である。 また、勝敗とは別に、聡太君の素質は一体どれくらいのものか、自分の目で確かめてもおきたい「試験官」としての気持ちもある。 練習将棋と違い、公式戦での真剣勝負でなければ、伝わらないものもある。 大体から今の自分を軽々と超えるようでなければ、タイトルを期待できない。 現役棋士としては、負けたくないが、負かされれば負かされたで、厭(いや)な気がしないと云う、複雑な親心であろうか。 63手で、聡太君が勝った。 小林九段は、5分考えて投了を告げた。(註2) 【投了図】 「先手優勢だが、まだまだ先は長い」と話していた解説陣は、一様に驚いた。(註2) 私が、小林九段の気持ちを代弁する。 投了図から、まだ粘れることは知っている。 だが、手数が伸びても確実に負ける。 前回の対局では、序盤早々、見たことも無い急戦を仕掛けられ圧倒された。 今回は、序盤で優勢にする積りで臨んだ。 その予定が狂った時点で、自分の負けである。 序盤優勢から引っ繰り返されたのなら、粘ることもするが、この将棋は、違う。 試験官としての役目は、十分果たした積りだ。 *----------*----------* 【註釈】 註1.七番勝負第1局の記録係を命じられた。 四段時代の昭和52年(1977年)、第18期王位戦の挑戦者決定リーグ戦に進出。 白組で有吉道夫八段(当時)らを破り5戦全勝で優勝、 挑戦者決定戦へ進出した。将棋界初の四段によるタイトル挑戦かと騒がれ、 紅組で優勝した米長邦雄八段(当時)との対局も途中までは優勢であったが、終盤で逆転負けし、 惜しくもタイトル挑戦とはならなかった。 師匠の板谷進八段(当時)は対局前、負けたら記録係をやらせるとハッパをかけていたが勝利かなわず、 中原誠王位と米長八段による王位戦第3局では本当に記録係を務めることとなった。 註2.小林九段は、5分考えて投了を告げた。 投了図の▲5三馬で▲6二金としていれば、将棋ソフト「ポナンザ(ponanza)」は800点超の先手優勢を示していたが、 ▲5三馬では、500点超の評価値であった。 しかし、逆に、人間としては、▲5三馬に△4二角と打たされる方が、遥かに粘る気を喪失する。 *----------*----------* 【ニュース冒頭】 第66期 王座戦 一次予選 1回戦 ▲藤井聡太四段(15歳)VS △小林健二九段段(60歳) 平成29年9月20日、関西将棋会館で行われた。 結果:63手目で先手藤井の勝ち 勝った藤井は次に平藤vs西川和の勝者と対戦する。 開始時刻:10時00分 終局時刻:16時54分 持時間:各5時間 消費時間:▲藤井3時間18分、△小林2時間22分。 主催:日本経済新聞社
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この企画で出場した若手だけでなく二十代の棋士は、震撼したでしょう。 ベテランのA級棋士達は度肝を抜かれたに違いない。 しかし、羽生さんだけは、違います。 羽生さんが若手と対戦して極度の緊張を見せたのは、 第51期 王座戦、渡辺 明 五段(当時、19歳)を挑戦者に迎えた時です。 羽生さんの指が震えて話題になりました。 誰もが憶えている、あの光景ですね。 もう、13年も前の話です。 しかし、あれ以来、羽生さんが若手と闘って、取り乱したのを見たことがない。 ここ数年の羽生さんの若手とのタイトル戦を振り返ると、 15度のタイトル戦で、11度の防衛・奪還、4度の失冠・奪還失敗。(下記参照) 従って、若手が羽生さんを乗越えたとは、認められない。 まだ、まだ、です。 藤井聡太四段がどんなに強かろうが、羽生さんは互角以上に戦うと思います。 渡辺竜王からも一度は竜王を奪取すると、期待しています。 佐藤天彦名人からも、名人を奪還をすると予想しています。 ( 稲葉名人かも知れませんが・・・ ) 私は羽生ファンなので贔屓目、僻目、偏見が大いにあります。 眉唾で聞いて頂ければ結構です。 *----------*----------* 【参照】 第51期(平成15年、2003年)王座戦 羽生善治王座(名人・竜王・王将 33歳) ○●●○○ 渡辺 明 五段(19歳) 羽生王座が3勝2敗で防衛。 *----------* 【近年の羽生さんの若手とのタイトル戦】 15度のタイトル戦で、11度の防衛・奪還、4度の失冠・奪還失敗である。 相手別で言えば、7人。 渡辺明と佐藤天彦の2人に負け、5人に勝っている。 名人戦 第74期(2016年) 佐藤天彦 羽生の1勝4敗で失冠 竜王戦 第23期(2010年) 渡辺 明 羽生の2勝4敗で奪還ならず 第21期(2008年) 渡辺 明 羽生の3勝4敗で奪還ならず 王位戦 第56期(2015年)広瀬章人 羽生の4勝1敗で防衛 第52期(2011年)広瀬章人 羽生の4勝3敗で奪還 王座戦 第64期(2016年)糸谷哲郎 羽生の3勝0敗で防衛 第63期(2015年)佐藤天彦 羽生の3勝2敗で防衛 第62期(2014年)豊島将之 羽生の3勝2敗で防衛 第61期(2013年)中村太地 羽生の3勝2敗で防衛 第60期(2012年)渡辺 明 羽生の3勝1敗で奪還 第59期(2011年)渡辺 明 羽生の0勝3敗で失冠 棋聖戦 第88期(2017年)斎藤慎太郎七段の挑戦 第87期(2016年)永瀬拓矢 羽生の3勝2敗で防衛 第86期(2015年)豊島将之 羽生の3勝1敗で防衛 第84期(2013年)渡辺 明 羽生の3勝1敗で防衛 第83期(2012年)中村太地 羽生の3勝0敗で防衛 *----------*----------* 【藤井聡太四段 炎の七番勝負〜New Generation Story〜】 師匠の杉本昌隆七段(48歳)は、七番勝負では羽生善治三冠(46歳)などトップ棋士がずらりと並ぶが 「全部負けてしまうかもしれないが、逆に全部勝ってもそんなに驚かない」とコメントした。 弟子に取った時から「びっくりするくらいの才能を持っていた」と認める逸材だけに、デビュー以来の好調ぶりも想定内だ。 「最年少四段の記録を打ち立てたわけですから、次は最年少のタイトルを期待しています」と語る。 【七番勝負の対戦相手と勝敗】 結果:藤井聡太 四段(14歳)の6勝1敗 第1局 vs △増田康宏 四段(19歳) 95手で先手藤井の勝ち。 第2局 vs △永瀬拓矢 六段(24歳) 114手で後手永瀬の勝ち。 第3局 vs △斎藤慎太郎 六段(22歳)91手で先手藤井の勝ち。 第4局 vs △中村太地 六段(28歳) 117手で先手藤井の勝ち。 第5局 vs ▲深浦康市 九段(45歳) 122手で後手藤井の勝ち。 第6局 vs △佐藤康光 九段(47歳) 95手で先手藤井の勝ち。 第7局 vs △羽生善治 三冠(46歳) 111手で先手藤井の勝ち。
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