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気になる将棋

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1月8日の記事で、故・村山聖九段の「格の違いを見せ付けた一手」を紹介した。

私は、それと同じ衝撃を受けたのが、第3回電王戦トーナメント、5位決定戦 ▲技巧 vs △たぬき 戦。

今月の『 将棋世界 』誌に載っていた話です。(注1)

相掛模様から進んで図1。



【図1. 34手目△7四歩まで】
イメージ 1



ここで技巧は、なんと▲6五飛と切って、銀と交換したのだ。

大きな駒損!

大丈夫か?


後手は当然△6五同歩。

返す刃で、技巧は▲4六角!



【図2. 37手目▲4六角まで】
イメージ 2


これで有利と判断したのか?


うん?

確かに、△9二飛と避けたら、▲8三銀と打たれる。

しかし、角の直射を受けるには、7三に駒を打つしかない。

が、飛車しか持っていない。


なるほど!

まあ、この程度では、驚かない。

後手、たぬき、困ったか?

と、思ったら、なんとここで

△8六歩!


【図3. 38手目△8六歩まで】
イメージ 3


えっ!?

飛車が只!

ところが!

なんと、技巧は、

▲8六同歩!


えっ!?

じゃあ、もし、▲8二角成としたら、どうするの?

△8七歩成▲同金に△7七角成と切られて、先手嫌だとのこと。


佐藤秀司七段、勝又六段も「うお〜っ!」と叫んだらしい。

ショックだ。

プロ棋士が一瞬にして理解できない!


△8六歩は、人智を超えている。

▲8六同歩は、さらに驚いた。

両ソフト共に読み筋なのだから。

これが5位決定戦の将棋?

先日書いた故・村山聖九段の「格の違いを見せ付けた一手」と同じ。

さて、名人竜王は、△8六歩が指せただろうか?
一瞬で理解出来ただろうか?


*----------*----------*
【注解】

注1.今月の『 将棋世界 』誌に載っていた話

  『 将棋世界 』平成28年2月号 「第3回電王戦トーナメント さらなる挑戦」 p.94〜95

*----------*----------*
【対局概要】


対局日:平成27年11月23日

第3回電王トーナメント

 五位決定トーナメント1回戦

 ▲技巧(開発:出村洋介) vs △たぬき(開発:野田久順)

持時間:2時間切れ負け

戦型:相居飛車+角交換

結果:121手で技巧の勝ち
今月の『 将棋世界 』誌は、故・村山聖九段の特集でした。(注1)

恐らく多くの将棋ファンは、亡くなってから、彼のことを知ったんじゃあないでしょうか。

私もその口です。


その彼の将棋で、強烈に印象に残っているのが、NHK杯戦での三浦との将棋。(注2)

三浦は陽動振飛車で、思惑通りの序盤展開だった。

△2二飛と向飛車に振ったときは、早くも、後手必勝じゃあないか、と、素人目に映った。



【図1. 16手目△2二飛まで】
イメージ 1



しかし、村山は動じることなく、泰然自若、恬淡と指していた。

今から考えると、

「 短い命、こんなところで負けるハズがない。神様がそんな仕打ちはしない。」

の思いだったのだろうか。


結局、91手で村山が勝ったのだが、私は、「 将棋って奥深いなあ 」としみじみと感じた。

私が先手なら、簡単に潰されている。


なぜ、後手の攻めを凌げたのか、全く理解できなかった。

目の当りに観戦し、解説を聞いていても、(解説者不明)・・・



ところが、ところがだ。

感想戦で村山八段が「 後手が勝っていた 」と驚愕の指摘をした。


それが、49手目▲2四歩の局面。


【図1. 49手目▲2四歩まで】
イメージ 2



後手三浦は、当然、△2四同歩と取ったのですが、△5五銀と進めるべきだった、と。

▲2四歩を手抜きせよ


と指摘したんですね。


つ我々素人だと、▲2四歩の手抜きは、第一感です。

だが、プロの場合、第一感で、根元の角を取られてダメとしたもの。

その上、一連の流れの中で、▲2四歩には、100%△同歩です。

傍らで聞いた解説者も、絶叫したくらいですから。

仮に10人棋士が居ても、誰も事前に予想できなかったに違いない。

村山が指摘しなければ、誰も気付かなかった。


普通、プロ棋士同士の感想戦は、相手が

「 ここで・・・」

と、言い掛けたところで、

「 ああ、そうそう 」

と間髪入れず、同調するか、


「 ▲2四歩を手抜いて・・・」

とまで、ヒントを出されたら、

「 ああ、なるほど 」

と、雷の如く、一瞬にして理解し合うのが、見慣れた光景。

だが、この日は違った。

「 ▲2四歩を手抜いて・・・」

とまで、村山がヒントを出したにも拘らず、傍らで聞く解説者も、三浦も、理解出来なかった。

「 ▲2三歩成なら? 」(と金での飛車角両取り)

と三浦が質問する。

村山は

「 それも手抜く 」

と説明して、やっと皆、理解した。

▲3三とと角を取れば、△2八飛成。

▲2二とと飛車を取れば、角の睨みは当分続く。



我々凡人は、天才を理解できない。

秀才は、天才をやっと理解できる。

天才を理解できるのは、ほぼ同等の天才だけである。



このとき、私は、村山聖に天才を見た。

A級八段と六段は、天才と凡人ほどの差があるんだなあ、と興奮したもである。


*----------*----------*
【注解】

注1.今月の『 将棋世界 』誌は、・・・

 平成10年8月8日に現役のまま亡くなった村山聖八段(追贈九段)、満29歳。
 今年、『 聖の青春 』が映画化される記念に特集が組まれた。

  『 将棋世界 』平成28年2月号 「特集・村山聖の追憶」 p.10〜83

 
注2.NHK杯戦での三浦との将棋

 放映日時:平成9年12月14日

 棋戦: 第47回NHK杯戦3回戦第2局

 ▲村山聖八段 vs △三浦弘行六段

 持時間:15分+30秒×10回、秒読み30秒

 戦型:後手の陽動振飛車

 結果:91手で村山の勝ち


*----------*----------*
【対局概要】


放映日時:平成9年12月14日

棋戦: 第47回NHK杯戦3回戦第2局

▲村山聖八段 vs △三浦弘行六段

持時間:15分+30秒×10回、秒読み30秒

戦型:後手の陽動振飛車

結果:91手で村山の勝ち
「 気になる将棋 」とは、棋士が、将棋ソフトを研究パートナーとして、本格的に活用し、

その結果勝ったのではないか、と思われる将棋のこと。

本局は、今期A級順位戦 5回戦 ▲屋敷九段vs △羽生三冠戦で第4例目となる。

先手番は、屋敷。

驚くことに順位戦で先手番12連勝中。

屋敷九段は、第3回電王戦への出場を自ら希望表明し、プロ棋士側の大将となった。
(注1.)
このことから推測すると、彼が以前から将棋ソフトに慣れ親しんでおり、研究にも大いに活用していることは想像に難くない。

12連勝も満更関係なくないだろう。

その推測に基づいて、第2例、第3例と彼の将棋を紹介した。

今日も、準備万端臨んだはずである。

羽生三冠、危うし!


屋敷の用意して来た戦型は、▲7六歩に対して

(1)△8四歩なら、▲6八銀で相矢倉

(2)△3四歩なら▲2六歩として、中座飛車

の予定だったと思われる。


ところが、羽生の2手目は、△3二金と意表を突くものだった。(図1.)


【図1. 2手目△3二金まで】
イメージ 1


2手目△3二金は、通常、相手に振飛車にされると囲い方が難しくなるため少し損をする。

逆に言うと振飛車を誘っている意味がある。


屋敷は、昨年、「 指定局面エックス 」を迎えながら、羽生に敗れた。(注2.)

今日は、緻密に研究を行い万全の準備をして、同じ轍を踏まない心構えで臨んでいる。

しかし、痛いほどそれを感じとっている羽生三冠は、それを避けた。

屋敷の研究はこの一手で全てふいになった。


屋敷は、典型的なオールラウンド・プレイヤーで、振飛車、居飛車の両方をこなす。

2手目△3二金は、こういうタイプの棋士に有効でない、と定説がある。

屋敷も相手が単に奇を衒ったのなら、ノータイムで中飛車に構えたのだろうが、・・・

屋敷は、24分考えて▲7八金とした。

3手目に24分も考えるのは、異例である。


【図2. 3手目▲7八金まで】
イメージ 2

誰でも、自分のよく知っている戦法、得意な戦型で戦いたいと考える。

それは相手も同じで、半分は相手の得意な戦型で戦わざるを得ない。

トップ棋士は「 相手の得意形を避けてばかりいられない 」と考える。(注3.)

気合い負けに繋がるからだ。

羽生、渡辺などは、相手の研究のど真ん中と知りつつ飛び込んで行くこともある。

逆に、自分の得意形に付合って貰うこともある。

あるいは、お互いに不慣れな将棋に突入することもある。


羽生は、A級順位戦で前期、前々期と屋敷の得意形に付合った。

大体どんな戦型で研究して来ているか薄々想像がつく。

特に前期は研究のど真ん中に飛び込んで苦労した。

今回は、それを避けて違う将棋に誘導した。


図2.以下 [カッコ内は考慮時間]

△3四歩[7]
▲2六歩[-]
△8八角成[2]図3.


【図3. 6手目△8八角成まで】
イメージ 3


結局、一手損角換となった。

屋敷の想定していなかった戦型だ。

定跡外、研究外の将棋だ。

地力の勝負、読みの力の勝負である。

結果、羽生三冠が104手で勝ち、順位戦無傷の5連勝を飾った。

本局は、序盤の数手で勝負が決まった、と言っても過言ではない。

それは、2人の作戦や思惑が絡んで織り成した数手なのだと思う。

屋敷が3手目に24分も考えたことがそれを物語っている。

*----------*----------*

本局は、「 気になる将棋 」の定義と異なる将棋となった。

しかし、明かに水面下で、序盤の駆け引きに現れていたと思う。

よって、取上げた。

*----------*----------*
【注解】

注1.電王戦への出場を自ら希望表明

 屋敷九段は、第2回 電王戦 第5局 三浦八段vsGPS将棋(2013年4月20日) の解説で「出場したい」と表明して、
 聞き手の矢内女流を驚かせていました。あれで、好感度が一気に上昇しました。

注2.「 指定局面エックス 」

 自分の研究範囲の課題局面

注3.相手の得意形を避けない

 第24回朝日オープン将棋選手権五番勝負(朝日新聞社主催)で、羽生選手権者が3勝1敗で防衛。
 藤井猛九段の四間飛車に対し、羽生は4局とも急戦を仕掛け、競り勝った。
 このときのインタビューで「直球勝負することもあります。」と語っている。

 『 プロフェッショナル仕事の流儀 〜 直感は経験で磨く 〜 』 第20回 2006年7月13日放送


*----------*----------*
【今回取上げた将棋】

第72期 順位戦A級 5回戦 ▲屋敷伸之九段(41歳)vs △羽生善治三冠(王位・王座・棋聖 43歳)

対局日: 2013年11月7日
対局場: 東京・将棋会館「特別対局室」

リーグ成績:羽生4勝0敗、屋敷2勝2敗。
対戦成績:羽生18勝、屋敷2勝。1998年2月から現在まで羽生が13連勝中。
但し、屋敷はA級先手番12連勝中。記録の更新が懸っていた。

結果は、104手で後手羽生の勝ち。

終局時刻24時37分。消費時間は▲屋敷5時間59分、△羽生5時間55分。
勝った羽生は5勝0敗、屋敷は2勝3敗となった。
「気になる将棋 」とは、棋士が、将棋ソフトを研究のパートナーとして、本格的に活用し、

その結果勝ったのではないか、と思われる将棋のこと。

本局は、昨年のA級順位戦 4回戦 ▲羽生三冠vs △屋敷九段戦で第3例目となる。


相矢倉に進めば、62手目△3八香は、屋敷の準備してきた想定局面(図1.)。

今回の「 指定局面エックス 」である。


ここが分岐点。

本局の1ケ月後に行われた第2例の▲屋敷vs△渡辺戦で、渡辺は62手目△2六銀成とした。

当時、渡辺は、これしか指していないので、屋敷はピンポイントで準備できた。

今回の羽生も、相矢倉にさえ進めば、この直前までは必然だ。

62手目、△3八香、△2六銀成のどちらも、屋敷が手薬煉引いて待ち構えていた

正に「 忍者屋敷 」の入口だったのだ。


【図1. 62手目△3八香まで】
イメージ 1


この局面の前例は2局。(注1.)

その中には、羽生が負けた将棋もある。


進んで74手目

△3九角



【図2. 74手目△3九角まで】
イメージ 2


ここで前例を離れた。

これが、「 忍者屋敷 」の用意してきた罠。

▲5八金と引いてくれたら、数手後の詰み筋が消える。(注2.)


羽生は、夕食休憩を挟んで113分の長考をした。

休憩を含めれば約3時間だ。

長考の中身は、如何に未知の世界へ持ち込むか。

研究範囲内では、ヤラレル。


75手目▲4六金



どうやらこの手は、屋敷の想定外だったようだ。(注3.)

羽生の長考は実った。


さらに79手目▲6五竜



これこそ本当に屋敷の意表を突いた。

控え室の検討にもなかった。(注4.)

▲4六金〜▲6五竜、これが羽生の構想だった。


以後難解で、後手にも勝ち筋があったものの、87手目▲2四香が決め手になってしまった。

屋敷は、これを△同銀と取れると錯覚していたのが痛かった。(注5.)

結果は、113手で先手羽生の勝ち。

屋敷の研究は、功を奏し切れなかった。


*----------*----------*

さて、ここからが本題。

図3は、本局の62手目〜83手目までの指し手の「場合の数」を書き出したものだ。


【図3. ▲羽生vs△屋敷戦の「場合の数」の表】
イメージ 3



62手目〜74手目まで「場合の数」は、Aランクだけで、5,760通り。

Aランクは私が選んだもの、プロ棋士ならもっと少ないかも知れないので、1手づつ減らすと、僅か48通り。

しかし、プロ棋士とは言え、逆に漏れも発生する。

例えば、71手目▲8四角に代えて▲6六金も大いに有力だった。

よって、僅か48手でも相当な研究時間が必要だと言うことだ。おそらく丸1日かかる。

74手目△3九角が、屋敷の新手。

研究で温めていた手だ。

この新手以降75手目〜83手目までの「場合の数」は、Aランクだけで、1,440通り。

各Aランクから1手を減らすと、これまた48通り。

そして、いきなり75手目▲4六金が、屋敷の研究外の手だった。

なぜ、研究外だったか?

▲5八金の方が自然であり、そう指しても、かなり難しい戦いが続くからだ。

一例を示せば、

▲5八金 △7四飛
▲6三飛成△7三飛
▲6一竜 △2五歩
▲6四角 △3三玉

以下、後手は入玉を目指し、先手は飛車の只取りを画策しながら、駒の補充を図る。

後手優勢とは思うが、勝ち切るまで相当な苦労がある。

屋敷は、この辺り一帯を丁寧に研究していたのだと思う。

おそらく、この手順になれば、90%以上の確率で勝っていただろう。

それを察知した、羽生さんは、75手目で変化技に出た。

そして、見事に屋敷の意表を突いた。

しかし、約3時間もの長考を要した。

相手の研究外で尚且、形勢が五分五分の局面を探すためだ。

『新感覚の一手』が見付かればいいのだが、矢倉では、どうも見付かり難い。

ともあれ、羽生が辛うじて勝った。

では、屋敷の将棋ソフトによる研究は無駄かと言うとそうではない。

研究には、3つの効用があることは以前書いた。(注6.)

屋敷は、本局に敗れたが、1ケ月後の渡辺竜王戦では、見事に将棋ソフト研究を活かして勝った。

将棋ソフトによる研究は、更に創意工夫が加わり、白星に繋がって行くことだろう。


*----------*----------*
【注解】

注1.62手目△3八香の前例は2局。

 ひとつは今年(2012年)3月の▲橋本vs△羽生戦(竜王戦1組)で先手橋本勝ち。
 もうひとつは2年前の順位戦で結果は持将棋。


注2.数手後の詰み筋が消える。

 中継室を訪れた高見泰地四段は後手の狙いを次のように推測する。
 「前例は角を打たずに△7四飛▲6三飛成△7三飛▲6一竜と進みました。
 そこで後手は△7五歩▲6四角△7六歩で寄せを狙いたいのですが、▲3一竜から後手玉が詰む変化があります。
 しかし5八金型にしておけば詰みません」(高見四段)

注3.75手目▲4六金

 △4六同銀成は▲同歩で後手玉が4五に逃げ込む変化が消える。
 ※感想戦※
 「▲6三飛成は△5七角成で勝てません。▲4六金は非常手段のようなもの。全然自信がなかった」(羽生)
 「ここでどの駒を取るべきか分からなかった。」(屋敷)

注4.79手目▲6五竜

 「これは意表を突かれました。検討とまったく違う将棋になりました」と行方八段。
 ※感想戦※
 感想戦の大半はこの局面に費やされた。
 「何を指せばいいのか分からなかった。」(屋敷)
 「自信がありません」(羽生)

注5.87手目▲2四香[決め手]

 △2四同銀は▲1一角△同玉▲3一竜△2二金▲3二金で後手玉は受けがない。
 △3二玉も▲6四角が痛打になる。
 ※感想戦※
 屋敷は▲2四香を取れると錯覚していた。
 以降は後手の勝ち筋は見つからなかった。

注6.研究には、3つの効用がある。


*----------*----------*

[前例の▲橋本vs△羽生戦]

2012年3月7日 第25期 竜王戦1ランキング戦2回戦 ▲橋本崇載八段 vs △羽生善治二冠

 69手目▲3三歩△3一金▲8四角△同飛▲5七金△7四飛▲6三飛成△7三飛▲6一竜△2五歩▲6四角以下、159手で先手の勝ち

[本局以後の出現]

2012年11月13日 第71期 順位戦C級2組6回戦 ▲及川拓馬四段 vs △岡崎洋六段

 74手目△3九角▲4六金△7四飛▲6三飛成△7三飛▲6一竜△3四金▲6四歩△2五歩▲6三歩成△9三飛以下、142手で後手の勝ち

2012年12月12日 棋王・新人王記念対局 ▲永瀬拓矢新人王 vs △郷田真隆棋王

 69手目▲3九歩△4八銀成▲8四角△同飛▲5七金△7四飛▲6三飛成△7三飛▲6一竜△2五歩以下、136手で後手の勝ち

*----------*----------*
【今回取上げた対局】

第71期 順位戦A級 4回戦 ▲羽生善治三冠(王位・王座・棋聖 42歳)vs △屋敷伸之九段(40歳)

対局日: 2012年10月19日
対局場: 東京・将棋会館「雲鶴」

リーグ成績:羽生3勝0敗、屋敷2勝1敗。
対戦成績:羽生17勝、屋敷2勝。1998年2月から現在まで羽生が12連勝中。

結果は、113手で先手羽生の勝ち。
終局時刻23時48分。消費時間は▲羽生5時間27分、△屋敷5時間38分。
勝った羽生は4勝0敗、屋敷は2勝2敗となった。

なお、年齢、冠位、段位は当時のものです。
「 気になる将棋 」とは、棋士が、将棋ソフトを研究のパートナーとして、本格的に活用し、

その結果勝ったのではないか、と思われる将棋のこと。

今回は、事例ではなく、堂々と「 活用している 」と公言した棋士を紹介する。

なぜ「堂々」とを付けるかと言うと、今の将棋界では、タブーになっているらしいのだ。

*----------*

「 奨励会初段の貴方が自由にトレーニング・パートナーを選べるとしたら、次の誰を選ぶか。

 1.初段のライバル、2.先輩の三段、3.渡辺竜王 」

という質問に、大抵の棋士が「3.渡辺竜王」と答えた。(注1.)

対局して面白いのは、同程度の相手だが、教わるなら絶対に上位者、と言うのが理由だ。


これは、奨励会初段に限らず、誰でも自分より数段強い人に教わりたい。

しかし、トッププロになったら、もう教えて貰える相手はいない。

ところが、ここに将棋ソフトが出現した。

既に十年前から最終盤は間違いなくトッププロをも凌ぐ。

最近では序盤中盤でさえプロに近づいた。

たとえ、序盤中盤に多少不足なところがあっても、そこは自分が補えばいい。


先日、森下卓九段が、「 研究パートナーとして将棋ソフトが一番良い 」と吐露していた。

ここまで言い切った棋士は、彼が始めてではないか。(注2.)

森下は、来年春に行われる第3回電王戦に出場するので、将棋ソフトに詳しいのは当然である。(注3.)
パートナーとして一番良い理由は、

 1.何度でも同じ局面をこっちが納得いくまでやって貰える。

 2.自分の好きな時に、好きな時間だけ出来る。
人間の場合だとこうは行かない。

ましてや、複数の共同研究の場合だと尚更だ。

と説明していた。

*----------*----------*
【語彙】

将棋ソフト、コンピュータ将棋、コンピュータ将棋ソフト、CP将棋、CP将棋ソフトは
全て同じ意味で使っている。

*----------*----------*
【注解】

注1.「奨励会初段の貴方が・・・」

 『将棋世界』誌 2013年11月号 「イメージと読みの将棋観」 p.134〜136

注2.森下卓九段の発言

 第26期 竜王戦 七番勝負 第3局 2日目(2013年11月8日)『ニコニコ生放送』で解説したとき。

注3.第3回電王戦に出場するので、将棋ソフトに詳しい・・・

 第1回電王戦(2012年1月14日)でCPと対戦した故・米長永世棋聖から相談を受けており、その際、
 将棋ソフトと対戦もしていたと番組中、語っていたので、既に2011年頃から詳しかったようだ。

 第3回電王戦は、2014年3月より開催される。
 

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