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七味唐辛子の小瓶は中身がなくならない。
無論、使うたびにわずかずつ減っているのは確かだろうが
その変化がつぶさに伺えるほど、そもそも七味唐辛子は私の周囲において消費されない。
なので私は七味唐辛子の小瓶を空にしたことは人生で一度もなく、
七味唐辛子の余命は私の中でほぼ永遠であり、
つまり七味唐辛子の小瓶が空になるのを見ずにそのうち私は死ぬだろう。
―僕には生きる価値がない。
そう日記に書いたのは数年前に付き合った、八歳下の恋人だったが
夫が眠い目をこすり、疲労と闘い
仕事をしている間に
私は部屋をごみだらけに散らかし、物を食い漁り
およそ意義あるものの意義を奪い有を無にばかり変え
いまの私にこそ彼の言葉はうってつけだ。
七味唐辛子は役に立つ。
七味唐辛子は食品に振りかけられるが、私は食品に振りかけられない。
七味唐辛子と私の共通項は、粉々になると赤いものが飛び散るという一点に尽きる。
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