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曙光

「笑うこと」を死者が横切ると書いたり
「思い出のひとつばかりかすべてさえも」
緑野を覆って光る雷鳴と
いいなして
滝を下った
途中の通りでは
となりあわせのひとごみ(ひとなら怒ってもいいのに
こえもあげずに)
の向こうから
やはり弟や自分や
見知らぬ父や母に
くりかえしこえをかけられる
涙腺がゆるむのか
そのたびに眠りに落ち
額には大きな暗闇が覗ける
水の中に流れている星々や
たなびく節句の幡の色彩を
飲み込むのか
それとも
一風
かわった風に
紛れてもいくのだろうか
一面が白い紙のうねりでもあって
しどけない声音がそこここに
飾られている気配はあるが
輪郭も身の丈にみあう影さえもない
あったところで
描けまい
ことばももたぬ
生まれる前の
画家にすぎない自分のでさえも
(などと何故か思いながら)
呼吸も今注ぐ日差しも
似ていて
どこでも瞬きのように
凍りつく(不覚にも)
かつての潤いの中に
響き渡るものにすぎない姿を預けた
すべての終わりに
とあきずに書いて
その場所に重ねて
ぴたりとはめ込まれた曙の全景
その一片だけが乾ききって
無臭になるに
まかせる


.


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