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桃印

 田中善信という方の著した「芭蕉二つの顔」という講談社学芸文庫版の本を読んだ。非常に面白く楽しかった。桃印と芭蕉と寿貞、この三者に関する論が大変興味深かった。特に、桃印は桃隣と同じく俳号であっろうが、桃印の句はどこにものせられて残ってなく、芭蕉も多くの親しい者へ追悼の句を残しているのに桃印へは贈っていない。それは、既に彼がその本当の死よりも先にゆえある「死」を与えられて、この世に存在していないことになっていて、「彼」への追悼はあってはならないことだったからだ、という説は本当に興味深いものだ。

遅延について

 世間は狭い。ある会合の酒席で紙田彰くんの高校時代の同級生という瀬戸という方にお会いした。
「魔の満月」という凄い詩集を若き日に刊行し、その後、長いこと会社経営をし、壮年になってから「画家」になろう(絵を描こうだったか)と思いたちだんだんさわやかな抽象画を描く画家になった彼。この人のことは、今でも奇妙になつかしい。

「文学極道」第2号

 ひょんなことから「文学極道」を本で見ることになり、ネット上のものと思い込んでいたので、紙の匂いが新鮮だった。極道は書棚にも鎮座するのかいなと。
 この、昭和の終わり頃以降に生まれた若い詩人たちは、旧来の詩人や詩篇の概念を抜けきったところから「ことば」をくりだすので、いやそんな物言いとはそもそも無縁の次元から「詩」を提出するし、またその詩篇たるや極めて素晴らしいので、「極道」って反語かいなと感心した。
 ていねいに読み切っていないので、間違っているやもしれないが、一条詩、泉ムジ詩、吉井詩には瞠目した。凄い才能と思った。でも、身につまされたのは軽谷佑子詩、もうとうに死んだ弟や母に出会った気がした。つまり、どこまでも人間の話だ。さて、「おっぱい」である。この4文字のつらなりをたよるべきおっぱいと思うところに「現代詩」の危機が潜んでいる。そう、ふと、希有の詩人一条氏にさえも思った事だった。綾子玖哉

北国に桜が咲き始めました。
「阿吽」は第5号夏号のために少しづつ動きはじめました。
「どれくらいカスタード」・・・・平川綾真智
「白痴ん」・・・・・植田理佳
「薄水」・・・・岸野華菜
「カサホロビアンテ」・・・・さなぎなぎさ
「ぎじいそかぼっこ」
「くらとるそ」
「ばなかしろ」
「るる」
「バベル(という註だけでなる詩篇)のため試篇」(つづき)・・・・綾子玖哉
*ロシア現代詩の旗手たち(第5回) セルゲイ・ソロヴィヨフ・・・・たなかあきみつ

 その他、佐藤裕子、青砥たづき氏らの作品、論など。
 7月下旬発行の予定です。

いつもながら、阿吽は皆様のご寄稿を待っております。(掲載については、事務局にご一任下さい。)
 詳細はメールアドレス、kyuya@i-next.ne.jpまで。または電話0157-32-9120に。

     阿吽塾塾長 綾子玖哉

暁に色をなすほどに
不覚にも眠ってしまう
一途さにむせび泣くまま あるいはままよ底なしに
埋もれて姿もなしに水つく屍となり
縁もゆかりもたよりにならぬから
押し黙る

重なった屍のただのひとりにさえ
名のある死はなく
気まずい記憶が 今寄せては返す水面のさざ波の表に
苦悶の形に青ざめている

渓声を聞き警世を聞かず
こともないただの銀河 そう思いなして
流離うのは他ならぬこのわたしあのあなた
静かに瞑目するばかりのわたしたち
すべなくすべきこともなく
そよ風に吹かれて 今
底なしの夢にいる

いつかたわむと知らずに酔いしれていた
地層の重なりの上だから
過去世の呻吟も知恵も刻まれてあったのだろうが
閃光の光景も忘れて久しい
禍福をあざなって原子の力さえ包み込み ありがとう
手を合わせて感謝する者のその手や
足跡を残すべき者のその足
いいえ ただ寡黙に歩んでいた地そのものを奪い去ったのだから
遠くから呼ぶ者たちには ごらん 唇も舌も喉もない

血が通わなくなっても 鼓動は天をめぐっている
もう海の冷たさは感じないから 
波になって岸辺に寄る流れる歌はあるが 
流れなかった礎石の上に団らんはない
残された悲痛は消えないが
ともに歌ったその声は消えた

逃げようもなかった者たち
彼らこそこの今のわたしたちであれば
夕凪にほほ笑み返し
夕焼けに明日を信じようが

人みな いたるところで
江戸期の浮世絵さながらの
青海波崩れる
瀬戸際にあるとき

絶景ということばの後ろに
瓦礫、泥沼という借景が広がる
その彼方へ
静かに静かに
晩鐘の音が
わたって
ゆく


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