イージーライターのつぶやき

ちょっとマニアックな職業ライター兼アマチュア小説家が、作品と日常生活のつぶやきを紹介します。

小説「夢のミンチ」

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そんなわけで、ぼくはしんめとりの人間のパテ登録申請を受け付けた。
 彼女が登録所に現れる前に逃げ出すこともできたのだが、なぜかそうはしなかった。できなかったのかもしれない。自分でもよくわからない。

 それまで何度となくメールやチャットでいちゃついたり、お互い同時にイッたりしたことはあったのだが、彼女が生身の人間だとわかってみると、そのことがとても恐ろしかった。たぶんその恐怖をずいぶん前から予感していたのだろう。

「いつでもオッケーだよ、サッキー」としんめとりは言った。
「じゃ、まあ、とりあえず現世登録ということで」とぼくは口の中でもごもご言いながら、震える手でスタンプを押した。
「やった」としんめとりは躍り上がって叫んだ。「これであたしもパテだ」

 ぼくは初めて彼女の義足を間近に見た。それは彼女の太腿と完全に接合されていて、何のアタッチメントもなかった。彼女が飛び上がって着地したとき、腿の肉がやわらかそうにふるえ、その波動が骨構造/海綿構造スチール製の義足に伝わり、細かなさざ波が膝の下まで走った。ぼくは義足の中に小人の瀬谷さんが隠れているのを感じた。

「ウィンウィンウィンウィンウィンウィン」と瀬谷さんは言った。
「さあ行こう」としんめとりは笑いながら言い、ぼくの首に細くやわらかい腕を巻きつけてきた。
「オッケー」とぼくは言い、テーブルを乗り越えながら彼女の腰に手を回した。

 こんなふうに持ち場をいきなり離れるのはウェブマスターとして気が進まないのだが、しんめとりの腕には猪野井さんみたいに有無を言わさない強さがあった。彼女はその先でぼくがやるべきことを心得ていて、それに向かってぼくを引っぱっていこうとしていた。つまり猪野井さんが瀬谷さんに対して持っていた支配力を、彼女もすでに持っていたのだ。

 ぼくは彼女と登録所の出口の方へ歩きながら着ているものを脱いでいった。すごく恥ずかしかったが、同時にとても気持ちよかった。猪野井さんと瀬谷さんを見ていて、気持ちいいだろうなとは思っていたのだが、こんなに気持ちいいとは思わなかった。
 信徒たちも登録志願者たちはびっくりしたらしい。服を着ていないぼくを見たことなどなかったからだ。

「ついにそのときが来たんかな?」
「まさかご自分で殉教しはるとは思わなんだわ」
といった囁きが信徒たちのあいだから聞こえた。

「全裸はパテの制服だろ?」とぼくはしんめとりに言った。
「可愛いよ」
としんめとりが言い、そこらにたくさん落ちている鎖のついた首輪のひとつを拾い上げてぼくの首につけてくれた。ぼくも彼女の首に首輪をつけてやった。お互いの鎖を持つと、もう二度と離れられない気がした。

「ウィンウィンウィンウィンウィンウィン」としんめとりの義足の中で瀬谷さんが言った。
「じゃ、あとはよろしく」とぼくは信徒たちに言った。


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