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ぼくらは表通りに停めてあったルノー・メガーヌ・グラスルーフ・カブリオレに飛び乗り、道修町を出た。修業時代が終わり、いよいよ準備してきたことを試す番だと思うと全身が震えた。しんめとりが助手席から抱きついてぼくの震えを止めようとしたが、震えは彼女に伝わり、全身の肉をぷるぷる震わせた。
「ああ、やだ、どきどきする」と彼女が言った。
「言葉に出すとよけいどきどきするね」とぼく。
「でも、ふたりでどきどきするのって楽しいね」と彼女。
「みんなでどきどきするのは?」とぼく。
「想像もつかないくらい楽しそうだね」と彼女。
「じゃあどきどきしに行こう」
道は渋滞していた。
人が歩道からはみだして車道を歩き出したからだ。みんな次々と服を脱ぎ、南をめざしている。パテだからどこに行くべきなのかわかっているのだ。
カーナビのディスプレイは浪速区桜川の中学校で起きた人質籠城事件のニュースを映している。犯人の数は籠城の歴史始まって以来だとアナウンサーが言う。
「籠城の歴史っていつ始まったの?」としんめとりがきいた。
「さあ。千早城とか島原の乱くらいからかな」とぼく。
浪速区に入った頃には車の流れは完全に止まってしまった。前の車から次々と人が降りて歩き出したので、ぼくらも歩いていくことにした。止まった車の流れのすきまに人の流れができていたが、それもだんだん詰まってきたので、ぼくらは車の屋根に乗り、手をつないで屋根から屋根へジャンプしながら進んだ。車の屋根は最初のうちベコンベコンとへこんだが、そのうち跳び方がうまくなったのか、プルンプルンと適度な弾力でぼくらを跳ね上げてくれるようになった。
「骨構造スチールかな?」とぼくは義足の中の瀬谷さんにきいた。
「大ヒット商品やな」と義足の中の瀬谷さんが言った。
木津川ぞいの小学校が見えてきた。校舎の窓という窓から犯人たちが、処刑した人質の首と胴体を投げ捨てていた。死んだ人質は生徒とピエロや猛獣使いの衣装を着た先生たちだった。犯人は大人と子供の混成部隊で、小学生も中高校生も大学生もサラリーマンも白衣を着た研究員も青い制服を着た技術者も銃と刀で武装していた。校庭には途中で破壊されたカレーチューブがあって、透明なガラスかプラスチックのギザギザした断面から勢いよく茶色がかった黄色い液体が噴出し、校庭の機動隊を蹴散らしていた。液体は糞尿やゲロや下水が混じり合った汚水らしく、ものすごく臭い。
「ここでわたしたち死ぬのね?」としんめとりがさすがに怯えながら言った。
「どきどきする?」とぼくはきいた。
「うんどきどきする」としんめとり。「うんことゲロにまみれて、犯人たちにバカ呼ばわりされながら死ぬのね?」
「そういうのいや?」
「ものすごくいやだけど、すごく興奮する」としんめとりがぼくの手を握って彼女の性器にもっていった。粘液がすごい勢いで流れ出していた。
「見物人に罵られながら死ぬのは平気?」
「平気じゃないけど、すごく素敵」
「テレビ見てるやつらがぼくらを見ながらオナニーしても?」
「そういうのって大好き」
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なんだか凄い展開になってきてますね。続きは・・・・どうなるのですか。せっかちなので、結末が知りたいです。
2006/7/4(火) 午前 8:57 [ アマルフィー ]
もうこの次が最終回なんですよ。ストーリーの展開を期待されているとしたら、ちょっとがっかりかもしれません。作者としては、書くべきことは書いたと思っていますが。
2006/7/4(火) 午前 10:10 [ shu*i*ha*a ]