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取引先のオフィスで、女にカネを取られる夢を見た。
久しぶりに親の家に行くと、宝塚の丘の上にある住宅街のはずが、なぜかそこは地方都市の旧街道にある町屋で、お祭りかなにかの準備でにぎわっている。
上がりがまちに弁当と、印刷用の紙が所狭しと積み上げられ、その奥は事務所になっていて、死んだはずの父が上っ張りを着て仕事をしている。
そのさらに奥は食堂になっていて、母は体の具合が悪いらしく、たくさんの薬をテーブルに並べ、小さなプラスチックのカップに入った水で、ひとつひとつ呑んでいく。
兄は不機嫌そうにキッチンで水をくんでいる。
ぼくは腹が減って、食堂とキッチンのあいだにある造りつけの棚を片っ端から開けていく。
そこには水を満たした小さなプラスチックのカップがたくさん入っていて、乱暴にあけた衝撃でそれがひっくり返り、水がこぼれてしまう。
「何をやってるんだ」と兄がキッチンで怒鳴る。
「知らなかったのよね」と母が力なく笑う。
ぼくは腹を立てて、さらに家の奥に入っていく。
そこは取引先のオフィスで、昔からよく仕事をしている女性がうれしそうに迎えてくれる。
オフィスは閑散としていて、日焼けした遊び人風の社長がなにやら電話で指示を出している。
「社長、紹介します。昔からお世話になってるハラさん」と女性が言うと、
社長は電話を切り、近寄ってきてカラフルな名刺を出す。
ぼくも急いでカバンから名刺入れを出すが、あいにく他人からもらった名刺しか入っていない。
「ぼくはいいですよ」と社長がしらけた感じで言う。
「いえ、まあ、そう言わずに」とぼくは財布を取り出し、ポケットに入れてある予備の名刺から1枚取り出す。
名刺の紙は表が白で、裏が虹色。
ありあわせの紙で試し刷りした名刺らしい。
「最初の何十枚かはよくこんなのに刷るよね」と社長が嫌味を言う。
「いや、まあ、こんなのもありかなと思って」とぼく。
気まずくなってきたので立ち去ろうとかばんを見ると、今帰ってきたところらしい若い女子社員が、ぼくの財布に小さな外国紙幣を入れようとしているところだった。
「なにやってるんだ?」とぼくは言い、財布を取り返す。
5万円くらい入っていたはずなのに、外国紙幣以外は何も入ってない。
「返せよ」とぽくはその若い女に詰め寄る。
「まあ、そんなに怒らなくてもいいじゃない」と女は薄笑いを浮かべながら言う。
「5万円くらい入ってただろ? せめて2万くらい返せ」と言いながら、ぼくは彼女を窓際に追い詰めて、みぞおちのあたりを指で突く。
女は身をかがめてされるままになっているが、カネを返すとは言わない。
「おたくはこういうことを平気でやるんですか?」と社長の方を見ると、
社長はぼくの知り合いの女性を膝にのせて胸をいじくり回しながら、
「それで、それで?」と仕事の報告をさせている。
女性もまんざらいやそうでもない。
泥棒女の方を振り返ると、彼女はすでにとなりの部屋に行って、自分のデスクに座って仕事を始めようとしている。
「なんか、わけわかんない言いがかりつけられてさ」と、同僚らしい若い男性社員に言う。
「そういうやつ、いるよね」と男性社員がぼくの方を見ながら言う。
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