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猪野井さんは放免たちに注がれる酒を次々飲み干しながら楽しそうに社長のお説教を聞いていたが、だんだん酔いが回ってきたのか、妖艶な目つきで社長を見つめだした。社長の声はだんだん小さくなり、最後には黙ってしまった。
それから気が遠くなるような無言の時間が流れ、ぼくらは社長から目をそらさずに、命令を待った。社長は根負けしたのか、
「きみら、そんな目でわしを見るな」
と言いながらぼくらを手招きした。
放免たちがぼくらの腕をつかんで社長の前に引きずっていき、着ているものを脱がせた。すると、ぼくの中で撮影が終わってしまってから漠然と感じていた空虚な気持が消え、わくわくするような幸福感がわき上がってきた。
「契約はまだ終わってません」と酔っぱらった猪野井さんが自分から両腕を後ろにまわして、社長の膝に顔をこすりつけるようにしながら言った。
「なんでや、たった一日でものすごい売上げやったやないか」
と社長は猪野井さんの胸を鷲づかみにしながら言った。
「まだ社長の口座には振り込まれてません」
と猪野井さんはせつなそうな顔で社長を見上げながら言った。
「そらクレジット会社がちゃんとしてくれるやろ」
社長は猪野井さんの股間に手をすべりこませながら言った
。
「契約書には、『連雀商人たちの借金および家賃の滞納分に相当する額が口座に振り込まれるまで』と書いてあります」
と猪野井さんは急に真顔になってきっぱりと言い放った。
「そんなん、わしがええと言うてるんやからええやないか」
社長は叱られた子供みたいに小さな声でつぶやいた。
「お金はカリブ海やらヨーロッパやらあちこちの会社やら金融機関を経由して振り込まれます。そのあいだに何か手違いか裏切りがあったらどないします?」
「ほんまは金なんかもうどうでもええねん。わしはきみらを娘と息子みたいに思てるんや」
「あきませんて」猪野井さんは息子をなだめる母親みたいな口調で言った。「社長がそんな弱音を吐いたら、放免の皆さんに示しがつきませんやんか」
社長は大人しく頷いた。
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