イージーライターのつぶやき

ちょっとマニアックな職業ライター兼アマチュア小説家が、作品と日常生活のつぶやきを紹介します。

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またの日の妖精物語

 白状すると瀬谷さんの名前で「夢のミンチ」に載せたテキストも、ずいぶん前からぼくが書いていた。彼が「桜庭、好きに書いてええよ」と言ってくれたからだ。
 厳密に言うとぼくが書いていたというより、ぼくが作ったアプリケーション・プログラムが書いていたことになるが。

 このプログラムは、過去の瀬谷さんの文章や動画から彼の人柄を読み取り、彼が生きていたら書いただろうと思われるようなテキストを定期的に生成する。
 もう少し正確に言うとそれはぼくが作ったプログラムですらなく、「夢のミンチ」の運営協力者たちに頼んで世界中で使われているオープンソース・プログラムに適当に手を加えてもらったものだ。そこに人格はない。生身の瀬谷さんがそうなってしまったように、テキストは世界中に言葉のミンチとして散布されている。それだけだ。

 すぐにバレるはずだから、あらかじめ白状しておくと、このテキストもぼくが書いているわけじゃない。ぼくが書き残したものにプログラムが続きを書き足したものだ。つながりをスムーズにするためにあの手この手の改竄も当然のように行われている。

 そこには現実のかけらもない。フィクションすらない。もちろん予言など気配すらない。瀬谷さんしか見ることができなかったこの世に潜伏中のあの世の出来事、今読んでもピンと来ないコードの羅列、たぶんずっと月日が経ってからぼくらのまったく知らない人たちが読むために書かれた夢の記述だ。

 世界中のサーバに分散されたプログラムが執筆を引き継いでからというもの、もしかしたら瀬谷さん自身にも理解できなくなってしまったかもしれない。もうこの世にいないぼくとしては知ったことかと言いたいところだが、「夢のミンチ」の仕組みすべてがぼくひとりのアイデアから生まれ、運営されているかぎり、そうは言えないのがつらいところだ。

 猪野井りえという女性については、とっくにその実在さえ疑う空気が「夢のミンチ」の中に漂っている。ぼく自身も彼女は存在したなどと偉そうに言える気分ではない。たとえばぼくは中宮寺しんめとりが人間のパテ登録所に現れたとき、猪野井さんは彼女をモデルにプログラムが創造したネットアイドルだったんじゃないかという気がしたものだ。猪野井さんが楽しそうに笑いながらぼくらの首にやわらかい腕をニシキヘビみたいに巻きつけてくるときの、やさしく有無を言わさない命令の気配すら、本当に存在したのかどうか疑わしくなった。

 でもそんなことはどうでもいいのだ。彼女は生前からぼくらの聖母観音大菩薩だったんだから。

 ぼくら?

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街の遺跡の先に劇場跡があった。
平野と海と海際の小さな山を見下ろす場所で、演劇が上演されたのだ。小さな劇場だが、それでも1,000人以上は座れるだろう。丘の上の小さな町にしては大きすぎる。劇のある日には周囲の村々から、あるいは海辺の都市からも観劇に来たのだろうか。

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