イージーライターのつぶやき

ちょっとマニアックな職業ライター兼アマチュア小説家が、作品と日常生活のつぶやきを紹介します。

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 機動隊が退却すると、パテたちが入れ替わりに四方八方から校庭に流れ込み始めた。前の方のパテたちはたちまちカレーチューブから吹き出すカレーソースに吹き飛ばされたが、それでも懸命に立ち上がって、
「人間のパテです。人質の身代わりに来ました」と声を揃えて叫び始めた。

 犯人たちは一斉に機銃掃射を始め、カレーまみれのパテたちは次々とカレーの沼に血を混ぜながら倒れていった。
「あほんだら。この腐れパテが」
「殉教者気取りは百万年早いんじゃ、ボケ」
と犯人たちは叫んだ。

 猪野井さんと瀬谷さんが逝ってしまってから、人質救済ボランティアはうまく機能していない。彼らのように超人的な力で犯人を投降拒否児童に変えるのは容易なことではないからだ。何万人というパテが命を落とし、パテ殺しの快感が新たな占拠事件を生み、虐殺される快感がパテ登録者をねずみ算式に増やすという悪循環が起きている。事件がなくならないのはパテが犯人の何万倍という速度で増加しているからだ。

「ぼくらで犯人を投降させることができたらいいんだけどな」とぼくはウェブマスターのプレッシャーに押しつぶされそうになりながらつぶやく。
「できるよ、きっと」としんめとりがぼくの首に腕をまわしながら猪野井さんに似た声で言う。
「どうやったらいいかわからないんだ」とぼくは正直に白状する。
「サッキー、みんなを愛してる?」としんめとり。

「愛してる。たぶん」とぼく。
「あの子らは犯人ちゃうよ。ただの投降拒否児童やねん」としんめとりが猪野井さんの声で言う。
「そうやねん。あいつらは犯人ちゃうねん。おまえと同じかわいそうな投降拒否児童やねん」としんめとりの義足の中の瀬谷さんが言う。

 ぼくらはお互いの体を鎖でしばり、校舎に近づいていく。
 犯人たちの数はどんどん増えていて、屋上から処刑した人質の首と胴体を豪雨のように降らせている。血はすでに赤い滝のようで、その陰に隠れて校舎が見えなくなってしまった。

「人質が足らんぞ」と犯人たちが叫んでいる。
「腐れパテども早よ上がってこい」
「片っ端から処刑したる」
 校庭を埋め尽くしているパテたちが血の滝に突進する。彼らの顔はゆがんだ欲情に突き動かされているようにも見える。

「屋上で首をはねられて世界中に恥をさらすんや」とパテのひとりがうれしそうに叫んでいた。
「何千万人がわたしたちのぶざまな殉教を見てオナニーするんやわ」
「犯人に犯されて、糞まみれになって死ねるんや」

 なんだかちょっと違う気もした。しかし、血と糞の滝の前でパニックに陥っているパテたちをコントロールする力はぼくにはない。ぼくにできるのはせいぜい尻込みする新参パテたちをウェブマスターとして勇気づけてやることくらいだ。
「怖がることはないよ」とぼくは彼らに言う。「こっちはとても多いんだから」

                              おわり

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急坂をまた歩いて下る。

花畑がいたるところに広がり、ついつい足を止めて見入ってしまう。2500年前にはこのあたりにも家々があったのだろうか? それとも山の上の住民たちはこうした花々を眺めながら暮らしていたのだろうか?

遺跡の入り口近くまで降りてきたところで、さっきのチリ人がゆっくり上がってくるのに出会った。これから山を登るらしい。こんな速度で登っていたら、日暮れまでに降りてこれるんだろうかと心配になる。少なくとも、ぼくが乗ろうとしている15:39の最終電車には間に合わないだろう。下の道路にはモーテルみたいな宿泊施設兼レストランの案内が出ていたので、いざとなればそういうところに泊まるのかもしれない。

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