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シャワーを浴び、8:00に食事に出かける。
ヴッチリア市場近くの小さな広場にある「サンタンドレア」に飛び込みではいる。まだ開店したばかりで、店はすいていた。
内装は簡素なアンティークといった感じだが、かすかに聞こえる程度の音量でジャズが流れている。店員はみんな若くて普段着姿だ。
客も昨日の「レジーナ」のようなおっさんやイライラしたビジネスマン夫婦ではなく、ちょっと知的な感じのカップル、家族連れ、大学の教員みたいな感じのグループ等々。会話の声も静かで、ちょっとパリ5区・6区あたりのビストロにいるみたいな気分になる。
前菜はシチリア風前菜いろいろ。カポナータやでかいオリーヴ、魚介や野菜の揚げ物などがきれいに盛られている。
プリモピアットにシチリア名物として名高いイワシのパスタを注文した。イワシを揚げて香草、松の実、小さなドライフルーツなどが入ったソースであえてある。香草の風味、松の実の脂っこい香り、ドライフルーツの甘みが複雑な味を作り出す。
パスタはマカロニの穴をふさいで細くした感じのブカティーニ。複雑で濃厚なイワシとよく合う。もしかしたらこの複雑な味はこの店のアレンジで、本来はもっと素朴な料理なのかもしれないが、とにかくうまい。
チーズの代わりにパン粉を揚げたのをかけるのがシチリアの伝統だ。シチリアでは酪農が発達していないのでチーズがとれない。たしかこの代用品のパン粉を「貧乏人のパルミジャーノ」と呼んでいるのだ。これをかけるとイワシのパスタがさらに濃厚になる。
セコンドピアットは、シチリアでぜひ食べたかったマグロのステーキ。赤パプリカ、ニンジン、玉ねぎなどを炒めたものの上にどかんと分厚いのが乗っていて、白い皿に線を描くように敷いてあるオリーヴ油と緑色のソースをつけながら食べる。日本人好みの淡泊な味だ。
漁師が長い銛でしとめる豪快なマグロ漁は、マグナムの写真家サルバドール・サルガドの代表作、世界の仕事シリーズで知った。地中海で本マグロが捕れることもそのとき知った。
それ以来、シチリアと言えばマグロ料理だと思いこんでいたのだが、今回の旅行でカジキはあちこちで食べたものの、マグロにはまったくお目にかからなかった。シチリアではあまり捕れなくなっているのかもしれない。銛使いの名人が少なくなったからなのか、マグロそのものが減っているのかはわからないが。
テレビのドキュメントで見たのだが、本マグロは大西洋からジブラルタル海峡を通って地中海に入ってくるらしい。最近スペインでは日本の商社の出資で海に巨大な生け簀をつくり、そのマグロを囲い込んで育てる養殖ビジネスが盛んになっている。
マグロにエサをどんどん与えて、全身トロにしてしまうのだという。出荷先はもちろん日本だ。日本の回転寿司で最近やたらと安いトロを見かけるようになったのは、このスペイン産の半養殖全身トロマグロのおかげらしい。
もしかしたらシチリアでマグロが捕れなくなっているのは、回遊してきたマグロが地中海に入ったとたんスペインで根こそぎ捕獲されてしまうからなのかもしれない。
とすると、このマグロはスペインから買ったものだろうか? いや、半養殖全身トロマグロならこんなきれいな赤身はとれないだろうから、スペインで捕獲網をすり抜けてシチリアまでやってきた、貴重なマグロなのかもしれない。
ドルチェは数種類あったが、「いちごが食べたい」とリクエストしたら、細かく刻んでソルベを上にのせ、真っ赤なソースをかけて、きれいなデザートに仕立ててくれた。レモンがきいていてうまい。
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