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ひさしぶりに長編の夢を見た。
家でカレーを大量に作り、母と兄にふるまう。
かけるのはごはんではなく、なぜかスパゲティー。
市販のカレールーでいい加減に作ったのだが、母と兄には好評で、
「三食これでもいいね」などと言っている。
大量に作りすぎたので、別の鍋にカレーを入れて、近所の友人の家に持っていく。
途中で、ロードバイク(長距離レース用の自転車)を修理に出している自転車屋をのぞく。
バイトの青年がぼくの自転車をいじくっている。
そのうちブレーキだかギアの変速機のワイヤから、小さな部品がひとつどこかへ飛んで行ってしまう。
バイトの青年はそれに気づかず、「おかしいなあ」などと言っている。
そこですぐさまミスを指摘すると、彼を追い詰めてしまうのではないかと思い、知らん顔をして店を出る。
友人宅は神戸に昔からよくあるような、白っぽい木造の洋館で、台所のドアが開いている。
勝手に入ってカレーを温め始めると、友人が庭から戻ってきて、
「
カレーに味が足らんようやったら、これ入れて」と、いろんなスパイスやらわけのわからない漬け物みたいななのやらが小分けして入れてあるガラス容器を渡してくれる。
食べもしないうちからまずいと決めつけられて気分を害したので、ガラス容器に入ってるものを全部カレーにぶちこみ、味見もしないで立ち去る。
帰りがけに自転車屋に寄ると、今度はバイトではなく知り合いの主人がぼくの自転車をいじくっている。ワイヤの部品がとんでしまっているので、変速機だかブレーキだかが動かないのだ。
「ハラさんのバイク、ここのワイヤーを動かすパーツがなくなってるんだよね。買ってきてくれないかな」と主人が言う。
部品の取り寄せは自転車屋の仕事じゃないのかと思いながら、言い争いをするのがいやなので、何も言わずに店を出る。
家に戻ると母と兄が寝そべって、壁に斜めに取り付けられた大画面テレビでSF映画を見ている。
「カレーを三食食べてたら、テンピュールがなくなたぞ」と兄が言う。
彼はスパゲティのことをテンピュールと呼ぶのだと思い込んでいるらしい。
兄は間違いを指摘されるとものすごい剣幕で怒るので、スパゲティーを買いに行くふりをして散歩に出る。
外は真っ暗だ。道には外灯がひとつもない。
明け方らしく、犬を散歩させる人や会社・学校に出かける人たちがせかせか歩いている。
暗闇の中でものすごく長い鎖をつけた犬がぼくに噛みつこうとしてくる。
「ちゃんとおさえてろよ」と飼い主にいいたいのだが、下手に喧嘩になって、犬に噛みつかれては困るので、「わあああああ」と大声をあげながら走って逃げる。
そのうち駅が近づいてきて、高架下に並んでいる飲み屋のあかりが見える。
飲み屋ではまだ客がいるらしい。
べろんべろんに酔っ払って亭主にお別れを言っているサラリーマンたちがガラス戸ごしに見える。
ぼくは自分の中にものすごくストレスがたまってきているのを感じ、内山田洋とクールファイブの「会わずに愛して」を大声で歌い出す。
涙枯れても夢よ枯れるな
二度と咲かない花だけど
夢の夢のかけらを
せめてせめて心に
ああ永久にちりばめ
と歌っていると、本当に涙があふれてくる。
高架線をくぐって駅の反対側に出ると、広場でミニコンサーををやっていて、
5人くらいのバンドをバックに、派手な衣装を着たおばさんの演歌歌手が「会わずに愛して」を歌っている。
客は誰もいない。
すぐ近くで道路工事をやっていて、アスファルトの道を掘り返す音がうるさい。
いたたまれないので、足早にその場を離れ、家がある山の方へ歩いていくと、
急斜面をたくさんの中学生だか高校生がジャージ姿で下ってくる。
もう朝で、授業が始まるところらしい。
遠くの山の稜線には「ファミリー遊園地」という見慣れないカラフルな巨大看板が見える。
どうやら道に迷ってしまったらしい。
とりあえず大きな幹線道路にかかっている陸橋を渡る。
歩道を歩いていくと、いつのまにかフェンスで前後左右をふさがれた袋小路のようなところに入り込んでしまう。
どこにも行きようがないので、溶岩の斜面を上に向かってのぼっていくと、
上の方も橋梁の端がフェンスでふさがれている。
頭上には急斜面を降りてくるジャージ姿の中高校生たちと、
斜面をのぼっていく制服姿の中高校生たちが交錯している。
短いスカートの女子高生たちの色とりどりの下着が見える。
戻ろうとしても、フェンスがすぐ下まで迫っていて降りられない。
気ままに散歩しようとして、いつのまにか檻のような場所に閉じこめられてしまったのだ。
これがぼくの人生そのものなのだと気づいたところで目が覚めた。
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