イージーライターのつぶやき

ちょっとマニアックな職業ライター兼アマチュア小説家が、作品と日常生活のつぶやきを紹介します。

モロッコ紀行1997

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自転車はぼろいマウンテンバイクだ。トドラ渓谷までは約15km。途中かなりの坂を登らなければならない。ちょっとつらいが、トライアスロンのトレーニングでふだん自転車に乗っているので、一般人よりは楽だ。

「地球の歩き方」には自転車でトドラ渓谷に行った女性のリポートが載っていて、登りでは自転車から降りて歩いたと書いてあるのだが、日本によくある程度の傾斜で、特に問題なく走れる。

3月に腰をいためてからしばらく練習を休んでいたのだが、休養で元気になったのか、久しぶりの登りが楽しい。

坂を登るたびにすばらしい風景が次々と現れる。地層がむきだしの丘陵、ひたすら広大な空、緑濃いオアシスとその上に広がる昔ながらの土色の町。オアシスのある渓谷沿いに徒歩で行くコースもあると「地球の歩き方」には出ている。歩けばきっと涼しいのだろう。

坂の途中で子供に会ったので。10DHやって写真を撮ってもらった。片言のフランス語でおざなりの会話をする。
「このへんに住んでるのかい?」
「うん」
「歳はいくつ?」
「12歳」

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何も買わずに織物工房をあとにしてからもムハンマドは親切だった。
「ふだんは料理をしないんだけど、お望みなら夕食にクスクスを作ってあげるよ」
「そりゃいいね。ぜひ頼むよ」

といった話をしながらレンタルバイク屋に連れて行ってもらった。すでに2:30を回っているので、近郊の唯一の名所トドラ渓谷に歩いて行くには遅すぎる。そこで町のレンタルバイクを借りることにしたのだ。100DH(1,300円)。

この店は「地球の歩き方」にも出ていた。主人はカマール・スズキと名乗ったが、たぶんそう名乗ると日本人に受けると考えているのだろう。

カマールは「地球の歩き方」の紹介記事が簡単すぎるとしきりにぼくに語った。写真入りのもっとくわしい記事を載せてくれというのだ。どうもムハンマドからぼくがライターだと聞いて、「地球の歩き方」の仕事もやっていると勘違いしているらしい。まあ、「地球の歩き方」には一般人の投降も載っているから、紹介できないわけではないが、よほど興味深い情報の場合だ。ただの店紹介がそんなに大きく扱われることはありえない。

「写真と文章はこのガイドブックの編集部に送ってやるけど、ただのアマチュアの寄稿者としてだ。おれはプロのコピーライターだけど、ジャンルが違うんだよ。だから掲載されるかどうかはわからないよ」とぼく。
「わかった。おれは日本のものが好きなんだ。日本人はみんないいやつだからな。いろんなやつがいろんなものをくれたよ。ある日本人は100ドルの帽子をくれたっけ」とカマール。
「ああそうかい。じゃあな」

ぼくはさっさと自転車で出発した。ぼくは日本人がみんな金持ちで、モロッコ人に何か恵んでやらなければいけないという考え方が嫌いだ。モロッコ人にはもっと誇りを持ってほしいものだ。

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迷宮のような小路をうろついてから、彼の母親の友達だというベルベルの女の家に案内された。ラクダの毛や絹で織物を作るところを見せてもらい、お茶をごちそうになる。

最後に女がたくさん織物を出してきた。壁を飾る大小様々なタペストリー。ムハンマドはそれがどれだけ手の込んだものかを説明する。女はベルベル語で何か言い、ムハンマドがそれを通訳してくれる。

「完成品を見てもらってとてもうれしいと言ってるよ。別に買っても買わなくてもいいんだ」
「そうかい。悪いね。ぼくは旅先で土産物を買う趣味はないんだ」
「友達にも土産をあげないの?」
「あげないね。それがぼくのスタイルなんだ。ひたすら知らない土地を歩き、いろんなものを見て、いろんな体験をして、それを文章に書く。それがぼくのお土産なんだ」

ぼくらはいつのまにか英語で話していた。ムハンマドはアムステルダム時代に覚えたのか、英語もしゃべるし、どちらかといえばフランス語より聴き取りやすい発音をする。

「わかった。もちろん買わなくてもいいんだ。君とこうしてひとときを過ごせてすごくうれしいよ。ただ、彼女を撮った写真は、日本に帰ったらうちのレストランに送ってくれ。おれが届けるから」
「いいよ。お茶と織物を見せてくれたお礼に何か日本でアクセサリーを買って送るよ」

ムハンマドは本気でぼくに織物を売りつけたかったのだろうか? もちろん商売になるかもしれないという可能性がまったくなかったら、レストランの給仕の仕事を放りだして、わざわざ外国人を案内したりしないだろう。

しかし、だからといってマラケシュの商売人のように露骨にものを売りつけようとはしない。それでいて、あっさりあきらめるのではなく、ベルベル人の機織り女の工房でも、二階にぼくを案内して、豪華なタペストリーを見せながら、「買っても買わなくてもいいんだ。ただ見てもらうだけでうれしいんだよ」と繰り返した。それは彼なりの売り込みのスタイルなのだ。

ここにモロッコ人(というより先住民だろう。ティネリールはベルベル人の町だ。いわゆるアラブ系の大柄でギョロ目の男はまず見かけない)のプライドとつきあう難しさがある。

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11:30ティネリール着。休憩した町と変わらない小さな町だ。路線バスにとってはここも休憩地点のひとつにすぎない。細長い広場があり、そのまわりにホテルやちょっとしたレストラン、カフェがある。

広場に面したホテル・トドラに部屋をとる。古くておそろしくぼろい建物だが、大きなガラスのドアと木をふんだんに使った広いロビーが伝統を感じさせる。バーカウンターもあるロビーには巨大なソファがたくさんあってくつろげる。風呂付きで106DH(1378円)のツイン部屋はなんだかほこりっぽい。ベッドはスプリングがふにゃふにゃだ。まあ、トドラ渓谷を見物する以外特にすることもないから、一晩寝られれば十分だ。

広場の反対側にある小さなレストラン・ラヴニールでビーフタジン(牛肉の煮込み)とサラダの昼食。羊のタジンに比べると硬くてあまりうまくない。

店を手伝っているムハンマドというプータローがフランス語をしゃべるのであれこれ話をする。パリとアムステルダムで料理人をしていたことがあるのだという。そのわりにはひどい発音だが、なんとか話は通じる。

ティネリールに来たら、トドラ渓谷なんてどうでもいいからカスバに行けとムハンマドはしきりに勧めた。
「よかったら案内してやるよ。ユダヤやベルベルの女たちがいろんな工芸品を作っているのが見られるぞ」というので案内してもらうことにする。

ちょうどランチタイムだから店の給仕はしなくていいのかと心配になるが、そんなことはどうでもいいらしい。客はぼく以外いないし、地元民のためのレストランではないようだから、路線バスが行ってしまえば当分客が来ることもないのかもしれない。

ついていくとたしかにアイト・ベン・ハッドゥのような廃墟と違って、今人々が生きている現役のカスバに、色々な工房が並んでいた。ムハンマドは1DHくれと群がってくるガキどもを追い払い、すれ違った知り合いの若者が持っていたピンクのバラを2本もらい、1本を自分の耳に飾り、もう1本をぼくにくれた。

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2時間ほど走ったところでバスは町に着いた。隣に座っているおじさんに「ティネリール?」ときいたら違うという。中間地点にある町らしい。

休憩タイムなのか、運転手も客も降りていって、カフェのようなところに入っていく。ぼくもトイレに行きたいのでカフェに入り、カウンターにいた男にフランス語で「トイレはどこ?」ときいたら、そこらにいた客のおじさんが屋上まで案内してくれた。トイレはなぜか屋上にあるのだ。ここでも一般人は無愛想だがとても親切だ。

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