イージーライターのつぶやき

ちょっとマニアックな職業ライター兼アマチュア小説家が、作品と日常生活のつぶやきを紹介します。

京嵯峨野2008冬

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帰りがけ、行きはパスした天竜寺に寄ってみた。

京都に住んでいた小学生時代、何度も親戚を案内して訪れた寺だ。京都を離れてからも、小学校・中学校時代に遠足で何度か来ている。観光の定番コースだ。

禅宗の大本山らしく、広大な敷地にたくさんの小さな「●●院」が並び、その奥に巨大な建物とメインの庭園がある。
もう夕方近いので、建物には入らず夢想国士が設計した有名な庭を歩く。わらぶき屋根の小さな建物ばかり見てきたせいか、見事な瓦屋根の大型建築が異様に見える。

仏陀はひとりで静かに瞑想して悟りを開いたはずだが、室町時代の禅は大集団で行なう修行になっていた。永平寺のドキュメントを見たことがあるが、掃除や炊事、座禅など、緻密に組み上げられた毎日のスケジュールを見事な統率の下で1秒の無駄もなくこなしていく禅宗の行動を見ていると、なんだかストレスがたまりそうな気がする。曹洞宗の若い僧侶と話したとき、「永平寺の修行はものすごくきつかった」と語っていた。そもそも仏陀はいろんな苦行に挑んでちっとも効果がないので、リラックスして自然の中で瞑想し、悟りを開いたはずなのだが。

まあ、小さな寺で静かに悟りをめざす禅宗の寺もあるだろうし、一度は苦行を経験しないとリラックスも効果がないのかもしれないから、素人があれこれ言うべきことじゃないのだろうが。

様々な隠遁所や無縁仏を訪ねたこの半日もぼくなりの修行だったのだが、「心」の字を表しているというこの庭を見ていると、不思議と心がやすらいでくるのを感じる。

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清滝、愛宕山神社まで歩くにはもう遅すぎるので、嵐山へ引き返す。

来たときとは別の道を歩いてみたが、嵯峨野らしい散歩道は、来たときに歩いたコースだけらしい。

大覚寺方面に向かって屋敷町と農村が混じり合ったような不思議なエリアを抜け、大通りを右折して嵐山方面へ南下。

京都から丹波方面へ続く街道も車の往来は少なく、シャッターを切った瞬間は1台の車もいなかった。

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念仏寺からさっきの土産物屋が並んでいた道に降りる。

このまま戻ろうかとも思ったのだが、目の前にわらぶき屋根の家があったので、ちょっとびっくり。この通りはもしかしたらただの土産物屋が並ぶ参道ではないのかもしれない。

来た方向と逆へ少し歩いてみる。
何軒かわらぶき屋根の家が並んでいる。農家ではなく街道沿いの町屋なのだが、わらぶき屋根なので、ものすごく田舎に来たような錯覚に陥る。京都というより、山梨から長野あたりの旧街道みたいな風情だ。
屋根の藁にはびっしりと苔がむしている。いかにも山あいの陽があまり当たらない昔の街道らしい屋根だ。

道標には、この先車道を行けば3キロほど、山越えをすれば1.4キロで清滝に出るとある。この道はたぶん地図にある清滝街道なのだろう。京と丹波を結ぶ昔の幹線道路のひとつだ。
清滝の先はたしか愛宕山で、明智光秀が織田信長を本能寺で急襲する前に、連句の会に出席した神社があるはずだ。

ときはいま あめがしたしる さつきかな

この句は光秀が天下を狙う気持をこめたものとして伝えられている。これから謀反を起こして政権を奪おうというときに、そんな証拠を残すわけがないような気もするが。
この句は政権への野心というより、時代は混沌としているけれども、そろそろ「あめ」つまり天の神様が正しい政治へと導いてくれるだろうというような意味だったという解釈も成り立つ。

去年読んだ小説「信長の棺」では、実は光秀がこの句会に出たのは、近くの豪商茶屋四郎次郎の別荘で朝廷の実力者・近衛なんとかと密会し、信長追討の公式命令が出たことを確認するためだったということになっている。天皇の公式な追討命令が出たと信じた光秀は、_柴秀吉の中国攻めに加わるはずだった大群を率いて本能寺を襲う。光秀は朝廷に政権を返す正義の味方のつもりだったのかもしれない。

そのとき軍勢はこの狭い街道を通ったのだろうか? 大群が通るには狭すぎる気もするが、昔の幹線道路というのはどれもものすごく狭いものだ。

信長暗殺に成功した光秀は、見事に裏切られることになる。朝廷も公家たちも知らん顔をする。信長討伐を命じた天皇の公式などなかったのかもしれない。孤立した光秀がまごまごしているうちに、秀吉は中国地方で戦っていた毛利と和睦して京に急遽引き返してくる。天王山の戦いで敗れた光秀は近在の土豪の手にかかって殺される。

光秀の誤算は、サポートを期待していた朝廷・公家・町衆に裏切られたことと、毛利とにらみあって中国地方から動けないと思っていた秀吉があまりにも早く和睦して京に戻ってきたことだと言われる。そこから本能寺の変は秀吉があらかじめ朝廷・公家と組んでいたという陰謀説が生まれた。徳川家康も一枚かんでいた、あるいは真の首謀者は家康だったという説もある。まあ、朝廷・公家・町衆・武将たちなど、誰にとっても絶対君主・信長は危険な存在だったのかもしれない。

信長が生きていたら、日本は地方分権の封建制からフランスのような絶対君主制に移行していただろうか? 科学技術や産業も発達しただろうか? あるいはいずれスペイン・ポルトガルの侵略を許し、中南米のように植民地になってしまっただろうか? 

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そば屋を出てさらに北へ歩くと、だんだん町らしい雰囲気になってきた。
道路も敷石が美しく敷かれ、土産物屋や工芸品の店、飲食店などが並んでいる。ただし、シーズンオフということで、かなりの店が閉まっている。

突き当たりを左折すると、そこは嵯峨野から清滝、愛宕山へ抜ける古い街道で、景色はまたちょっと田舎・山麓の気配を漂わせ始める。土産物屋がところどころあいているが、人影はほとんどない。
少し歩くと、化野(あだしの)念仏寺に着いた。

順路に沿って、敷地のいたるところにまとめられている無縁仏の群れを拝みながら歩く。「化野」とは化け物が棲む野原ということだろうか。そこには千年分の死霊が漂っているわけだ。

無縁仏というのは、捨てられた、あるいは行き倒れになった死体を供養するために建てられた墓石、石仏ということなのだろう。

このあたりは大昔から死体を捨てる場所だった。そもそもは原始時代からの風葬が起源だと言うから、「捨てる」という表現はおかしいかもしれない。死んだら体を自然に返す。それが原始信仰の死体処理だったのだ。

しかし、京都が都として栄え、人口が増えて、疫病や戦乱でおびただしい死者が出るようになると、そんな優雅なことは言っていられなくなる。都市にとって死体はスキャンダルなのだ。

それを引き受けるのが仏教寺院の役割であり、そのシステムは今でも続いている。

現代の寺でも、遺族が墓参りもせず、檀家としての付き合いも絶えてしまうと、無縁の墓として墓石を裏山にまとめ、新しく墓地を分譲したりしている。裏山に捨てられた墓石は新しい無縁仏になる。生きている人間が祀らないかぎり、墓も寺も神社も消えてしまうのだ。

結局、すべては生きている人間の自己満足のためなのかもしれない。

死者の霊は墓にはいない。あの歌みたいに、風になってそのあたりを吹き渡っているということだろうか。まあ、それも生きている人間、生き残った人間が自分を励ますために考えた、勝手な理屈のようにも思えるが。

それにしても境内の真ん中に集められた無縁仏の大群は圧巻だ。何の信仰も持たなくても、ついつい手を合わせてしまう。ぼくも身勝手な生き残りの人間だからだ。

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祗王寺を出て、さらに北へ歩く。

午後も1時近くになって、さっきからやたらと腹が減っているのだが、木立の中を細い道が延々と続き、飲食店らしいものは見あたらない。

これは桜餅で飢えをしのぎながら夕方まであるかなければならないのかなと思っていたら、突然「そば」とか「ぜんざい」と書かれた赤いのぼりやちょうちんが見えた。

小径を入っていくと、小さな門があり、その奥に農家みたいな建物がある。そば屋兼甘味処らしい。

木の引き戸を開けるといきなり日本間があり、小さな卓が並んでいる。ガラス戸の外はちょっと荒れた感じの庭だ。

客は初老の夫婦が一組。

床の間に生活雑貨や子供の玩具のようなものが雑然と置いてあるのは、ふだんここを家族の居間として使っているからだろう。建物の外観は農家のようでもあるが、もしかしたらやはり昔は金持ちの侘びさび系別荘か隠居所で、今はその孫・ひ孫世代が受け継いでそば屋をやっているのかもしれない。

京都らしいものが食べたくて、にしんそばを注文。豆腐が入っていた。身欠きにしんの甘辛さと、さっぱりした汁、淡泊な豆腐がなかなかいい取り合わせだ。

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