イージーライターのつぶやき

ちょっとマニアックな職業ライター兼アマチュア小説家が、作品と日常生活のつぶやきを紹介します。

失われた時探訪

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真壁散策でおそろしく腹が減ったので、飲食店を探してみたが、まともな店が見あたらない。
たぶんこの町で働く住民は外食の習慣がないのだろう。
一軒、ラーメン屋だかそば屋だか大衆食堂だかわからない店があったが、
アルミサッシの引き戸を閉ざしているので、やっているのかどうかさだかでない。

あきらめて車で出発し、お菓子屋で買った「きんぴらごぼう」をかじって飢えをしのぎながら筑波山へ向かう。
筑波山なら何か飲食店があるだろうと思ったのだが、ラブホテルみたいなものは数軒あるが、
飲食店はつぶれていたり、休業していたりしていて、
結局「そば」の幟が立っている一軒しかなかった。

そこは大きな古民家を移築したらしい和食店だった。
元農家の建物だったのだろうか、大きな囲炉裏のある寒い板の間でやたらと待たされて、
それほどおいしくない寿司・そば定食2200円を食べる。

この店のごちそうはなんといっても古民家の建物だ。
木をふんだんに使った部屋の内装、美しい絵が描かれた木製のゆりかご、骨董品を飾った棚、
なつかしいカギの字に曲がった縁側など、見ていて飽きない。

真壁の文化財建築の中を、じっくり見てみたかったなと思った。

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最後に、散髪屋のおじさんが教えてくれた谷口(やぐち)家というのを見に行った。
一番豪壮な建築だというのだが、中心部からは少し離れたところにある。

途中、谷口なんとかさんの銅像と顕彰碑が立っているところを見ると、何か大きな業績をあげた家なのだろう。
資料館でもらった地図には48の文化財に番号がふってあるのだが、谷口家住宅は1番になっている。
偶然なのかもしれないが、もしかしたら真壁に功績がある家だからなのかもしれない。

「真壁の近代を支えた谷口製糸所建物群と旧家住宅建物」という説明があるところを見ると、絹の製糸工場を兼ねていたらしい。

江戸時代までは流通の中継地として栄えた真壁も、明治以降は日本最大の輸出品だった絹糸の生産に力を入れた。それを牽引したのが谷口家だったのだ。

なるほど、通りから門を眺めただけでも豪壮な建築群だということがわかる。十四番という電話番号の札が掲げられているところがいかにも時代を感じさせる。

散髪屋のおじさんによると、映画の撮影にも使われたことがあるという。

細い道を入って屋敷の裏を見てみると、住宅は保存されているが、工場や倉庫跡らしい建物が崩れた廃墟になっているのがわかる。

ぼくのうろ覚えの記憶では、たしか明治の日本が絹でボロ儲けできたのは、たまたまヨーロッパの養蚕・製糸の中心地だったイタリアにカイコの病気が蔓延して養蚕業が全滅したおかげだった。多くの実業家・企業がこれで巨万の富を築き、日本も近代化に成功したのだが、絹糸の需要がおちついてくると、三井など有力企業は製糸業から撤退し、事業の中心を色々な製品の輸出入に移していき、ビジネスのシフトに遅れた企業は衰退していった。

群馬の富岡製糸工場や信州・諏訪に残っている製糸工場跡などがレンガ造りの近代的な工場だったのに比べると、この真壁の製糸所は木造でいかにも牧歌的だ。大正時代以降のさらなる近代化には乗り切れなかったのかもしれない。

倉敷レーヨン→クラレ、東洋レーヨン→東レ、旭化成など、繊維ビジネスで生き残り、ナショナルブランドに成長した企業は、化学繊維メーカー、化学品メーカーに進化し、事業を多角化していった。
グンゼのように、京都の絹糸メーカーとしてスタートして、下着メーカーへと転身して生き残った例もある。グンゼとはたしか京都の丹波産地にある郡が地方自治体の産業振興のために「郡是」として起こした会社という意味だ。

西武百貨店や丸井、ダイエーなど流通業の隆盛と低迷、最近のIT産業や人材派遣業、シルバー産業の打ち上げ花火のような急成長と不祥事による企業崩壊などを見てきたぼくとしては、産業の諸行無常みたいなものを感じるのだが、産業の栄枯盛衰は最近始まったものではなく、昔から繰り返されてきたことなのだ。

大切なのは必ずしも「近代化」の波に乗り続けることではない。産業や地域が、あるいはひとつの国が隆盛期を終えてからいかに成熟するか、人をいかに幸せにできるかだという気がする。

イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダなど、ぼくがこれまで訪ねたヨーロッパの国々には、適度な産業とそれを支える人口のバランスを保ちながら、伝統文化や地域経済の質を維持している国・地域がたくさんあった。

ヨーロッパに比べて日本は、優れた伝統文化がありながら、あまりにも地域が荒廃している。たぶんあまりにも「近代化」にウエイトを置きすぎ、効率を求めるあまり、地域経済や生活の質をなおざりにしているからだろう。

この真壁も、伝統建築が点在している以外はかなり殺伐とした町だ。
一歩郊外に出れば、道路沿いには全国どこの地域とも変わらない、自動車ディーラーやスーパーなどの量販店、パチンコ屋などが道路沿いに並ぶ。

こんな「近代化」などあっていいわけがない。

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そこここにある古い商家を眺めながら、御陣屋前通りを抜けて、
真壁の南側の一帯をぐるぐる回る。

石造りの郵便局は洋風建築だが、円筒形の郵便ポストと共に今も現役だ。
しかし、木造の古い商家は今どんな商売をしているのかわからないところが多い。
ガラス戸の中に何かしら見えるところもあるが、人がいる気配すらないのはさみしい。

流通の仕組みが変わってしまったのだが、
江戸時代からの交易で栄えた商店が衰退するのは当然なのだが。

開いている店で目につくのはお菓子屋だ。
たぶん地域振興運動の一環なのだろう。
地元の需要だけではこんなに狭いエリアにお菓子屋の数が多すぎる。
どこの店にも「真壁お菓子工房」みたいな共通の幟が掲げられている。
変な土産物屋を増やすよりは、地道にお菓子屋を育てて、特色を出そうということかもしれない。
散髪屋のおじさんがくれたあんこ飴も、たぶんそうした運動から生まれたものなのだ。

古い建物で営業しているお菓子屋に入ってみた。
目立つところにひな人形が飾ってある。
それほど古いものではないようだ。

「うちの娘が生まれたときのなんですよ」とおかみさん。
「奥さんのはないんですか?」
「私は嫁に来たわけだから、実家にあるけどここにはないですよ」

なるほど。ひな人形というのはその家に生まれた娘のために作るものなのだ。

「もっと古いのはないの?」
「ここにあるけど」

見ると、お菓子のケースの上に、お内裏様とおひな様だけが飾ってある。
「ほんとはもっと大がかりなセットなんだけど、場所がないから」とおかみさん。

「こういう古い家って気持が落ち着くからいいですね」
「私は寒くていやだけど(笑)」

そりゃそうだ。古民家を懐かしむのは暖かいマンションに住んでいて、木造家屋の寒さを忘れたやつだけだ。

ひな人形の写真を撮らせてもらったお礼に、お菓子を買うことにする。
大福とか桜餅では日持ちがしないので、「きんぴらごぼう」という焼き菓子を買う。
一見白ごまをまぶした、太いきんぴらごぼうに見えるが、
材料は米で、きんぴらごぼうの風味をつけた甘辛いスナック菓子みたいなものらしい。

早速1本試食。
なるほどきんぴらごぼうの味だ。

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御陣屋前通りの古い商家を写真に撮っていたら、
向かいの散髪屋のおじさんに「どこから来たの?」と声をかけられた。

店の前に飾ってある大きな黒い石のオブジェみたいなものを指さして、
「これ、うちのお客さんが造ったんだ」とあれこれ説明してくれたかと思うと、
「コーヒーご馳走するからあがっていきなよ」と店に入れてくれた。

中には奥さんと、スポーツ新聞を読みながら待っているお客さんが1人。
お客の相手は奥さんがして、おじさんはコーヒーをいれてくれたかと思うと、
さらに真壁のことをあれこれ話し続ける。

「真壁は観光地じゃないからね。土産物屋もないし、古い家以外見るものもないし。だからまあ、わざわわざ遠くから来てくれた人にお茶でもご馳走してあげようかってとこもあるのさ。あんた、ひなまつり知ってる? あと3日でひなまつりなんだけどね。3月まで1カ月、街の家がひな人形を飾るのさ。その時期だけはよそからたくさん人が見に来るよ。古い家には蔵があるから、古いひな人形がたくさん残ってるのさ」

「真壁のひなまつりって昔から有名なんですか?」

「いや、6年前から。最初は6軒しか参加しなかったけどね。今は百軒くらい参加してるよ」

どうも、観光地じゃないといいながら、街では観光客を呼ぶ努力をしているらしい。

「わたしらもよそから来た人に親切にしろって、上から言われてるからさあ。あははは」と奥さん。

「上」というのが何なのか今ひとつはっきりしないが、たぶん役所の観光課とか、商工会議所とか、真壁の振興を考えている組織のことなのだろう。こうしてコーヒーをご馳走してくれるのも、根っから人なつっこいというより、それなりの地域振興の努力でもあるのだ。


昔のひな人形をどこの家も蔵に閉まったままにしていたのを、最近町おこしのために飾るようになったのか、それとも家の奥に飾っていたのを、向かいの休憩所みたいに通りから見える場所に飾って、観光客が楽しめるようにしたのか、そこらへんもいまひとつはっきりしないが、ひなまつりについてもうすこし突っ込んで質問しようとしても、おじさんはミルキーみたいな飴を出してきて、「うちのお客さんがお菓子屋やっているんだけど、これあんこ飴。なかなかよそにないよ。けっこううまいから食べてみて」と勧めてくれる。

あんこを飴にしただけのお菓子だが、寒さがしみこんだ睡眠不足の体にはなかなかおいしい。観光地になりきれない真壁らしい素朴さがいい。

立ち去り際に「一回りして疲れたらまた寄りなよ」と言われた。
おじさんはあくまでのんきだ。
もしかしたら、嫌味にならない範囲で精一杯の真壁PRなのかもしれないが。

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民俗資料館に寄って無料の地図をもらう。
二階に展示コーナーがあったが、メインは真壁城の出土品やジオラマで、
街については大きな地図があるだけ。

無料の地図を作っているくらいだから、そこそこ観光客が来るのだろうが、
それにしてはそっけない。

地図を見ながら街のメインストリート、御前屋前通りへ。
古い商店があった。

無人の無料休憩所みたいになっていて、勝手にお茶が飲めるようになっている。
奥の間にはひな人形が飾ってある。
そういえば「真壁のひなまつり」というポスターをあちこちで見る。
有名なんだろうか?

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