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昭和天皇と大韓民国大統領の会談に同席する夢を見た。
ホテルの大ホールみたいなところにいる。中央に回転寿司のカウンターみたいなのがあり、まわりで外交官たちが慌ただしく動き回っている。大事な会談があるのだ。
カウンターにはグレーのコートを着た昭和天皇がすわっている。その横にすわって挨拶すると、昭和天皇がコートのポケットに手を突っ込んだまま、「寒いねえ。これから大事な交渉だから気が重いよ」と気さくな感じで言う。
カウンターの中にはタキシード姿の男がいて、大きな年代物の封筒から、たくさんの署名が並んだ名簿のような誓約書のような書類の束を取り出す。署名にはすべて実印らしい捺印がしてある。
「どう? 何人くらいいける?」と昭和天皇がタキシードの男にきく。
「まあ、20万くらいかな」とタキシード男。
「じゃあ、悪いけどそれで頼むよ」と言いながら昭和天皇は書類の束を受け取る。
ぼくの横から外交官らしい男が慌てて割って入り、
「陛下、両国で一部ずつ持たなければ意味がありません」と言い出した。
「もう一部はまだなんだよね」とタキシード男が言う。「とりあえずそれを受け取って仮調印ということにしてくれないかな」
「しょうがないよね」と昭和天皇は言い、外交官の方を向いて「とりあえず仮調印の準備をしてくれないかな」と言う。
「すまないね」とタキシード男が言う。
どうやらタキシード男は韓国側の代表で、もしかしたら大韓民国大統領なのかもしれない。
両国首脳は外交官たちとホールを出ていき、会場にはテーブルの列が整えられる。たぶん晩餐会をやるのだろう。並べられたテーブルにはたくさんの人が群がる。ぼくもあいている席に座ると、マスコミがどっと押し寄せてきた。
「交渉の成果は?」
「何人で妥結したんですか?」
「韓国に譲歩したんじゃないでしょうね?」
しつこく質問を浴びせかけてくる記者たちを、スタッフが廊下へ叩き出す。ほっとしたところへ、ぼくの彼女がやってきてとなりに座る。
「お疲れさま。大変だったでしょ?」
「まあ、戸籍謄本の原本だけ受け取って仮調印ということに……」と言いかけて口をつぐむ。
彼女が新聞記者だということを忘れていた。
彼女は「戸籍謄本ね」と言いながら、メモをとっている。
「おい、今のはなしだ。記事にされたらとんでもないことになる」
「あなたの名前は出さないからだいじょうぶよ」
「バカ、そんな問題じゃないだろ。いいか、記事に書いたらお前を殺すぞ。お前の家族も親戚も殺すからな」
と大声で叫んでいる自分の声で目が覚めた。
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