イージーライターのつぶやき

ちょっとマニアックな職業ライター兼アマチュア小説家が、作品と日常生活のつぶやきを紹介します。

大和路紀行2008秋

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全12ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]

イメージ 1 イメージ 2 イメージ 3 イメージ 4 イメージ 5

イメージ 5

3時半、桜井線の線路を渡って三輪駅へ。

まっすぐのびる線路を見ると、自分が歩いてきた距離の長さをあらためて感じることができる。
となりの巻向駅ですら見えないが、
その先の柳本駅・長柄駅のさらに北、天理から歩いてきたのだ。

三輪駅は無人の小さな駅だった。
次の電車までなんと1時間近くある。

駅前に一軒だけある喫茶店で、クリームあんみつとコーヒーをいただきながら、
デジカメの写真をぼんやり眺め、
今日歩いてきた道を思い出す。

山辺の道はこの先、桜井まで続いていて、
そこには纏向遺跡からの出土品を展示している博物館があるらしい。

大和王権の成立についてはまだまだ謎が一杯だ。

訪ねれば訪ねるほどまた来たくなる大和の国。

とりあえず今日はさようなら。

イメージ 1

まだ午後3時だが、ものすごく腹が減っていることに気づいた。
そりゃ午前10時から15kmくらい歩いて、
その間に柿の葉ずししか食べてないんだからあたりまえだ。

鳥居のそばにそうめん屋があったので入ってみる。

関西でそうめんと言えば三輪そうめんだが、
そうか、三輪そうめんの三輪とは、この三輪山の三輪なのかと気づいた。

酒が万葉の時代からの名物だとしたら、
そうめんはいつからだろう?

小麦を作るようになってからだろうから、
うどんと同じ室町時代くらいだろうか?

あたたかいそうめん「にゅうめん」というのを注文。
うどんと違ってコシのないにゅうめんは、
わが家では子供の頃、風邪をひいたときの食べ物だったような気がする。

さっぱりしただしに、名前通りのやわらかなにゅうめん。
関西らしく、白ピンクのかまぼこやしいたけなどがのっている。
歩き疲れた身体にはありがたいやさしいおやつ。

イメージ 1 イメージ 2 イメージ 3 イメージ 4 イメージ 5 イメージ 6

イメージ 6

大神神社の鳥居はちょっと変わったかたちをしている。
二本の柱が横木を支えているのではなく、
太いしめ縄が二本の柱のてっぺんをつないでいるのだ。

長野の諏訪大社などのように、
神様の領域を示すしるしとして、
鳥居ではなく木の柱を立てるのが神社の古いかたちだというから、
これもそうした古いかたちのひとつなのかもしれない。

太いしめ縄はなんとなく大蛇を思わせる。

手洗い場には水を吐く蛇がいた。

手前の柱にはこんな句が。

 酒造る隣に菊の日和(ひより)かな

万葉集に「うま酒 三輪の山」と歌われるくらい、この地は酒と関わりが深い。

そして奥には大蛇の胴体のような太い杉の木。
さっき見た巳の杉よりも蛇の神様が宿りそうな大木だ。

もともとのご神体であるはずの三輪山を忘れてしまうくらい、
このあたりは蛇のイメージに満ちている。

そして大蛇の内臓を思わせる、薄暗くて長い参道を歩き、
表の大鳥居を抜けると、
なんだか魔界から無事生還したみたいなすがすがしさを感じた。

イメージ 1 イメージ 2 イメージ 3 イメージ 4 イメージ 5 イメージ 6 イメージ 7 イメージ 8 イメージ 9
イメージ 10 イメージ 11 イメージ 12

イメージ 12

狭井神社を出てさらに南下すると、
すでに大神(おおみわ)神社の境内扱いということなのか、
山道の両側に灯籠が並び、小さな祠や鳥居、参拝客が目につき始める。

それまでハイキングの中高年といった感じの人ばかりだったのが、
あきらかに参拝目的の人たちだ。

何やら材木のようなものを持っている、
神官的な感じの白装束の一団とすれちがった。

鳥居の奥でなにやら1人熱心に拝んでいる若い女性と、
鳥居の外で待つ母親らしい人がいた。

娘さんがかなり深刻な悩みを抱えているのだろう。

そういう人が真剣に祈りを捧げに来るところに、
大神神社の底力が感じられる。

娘さんが立ち去ったあとに、鳥居の奥をのぞいてみると、
神籬(ひもろぎ)の石みたいな石がひとつ、きれいな木の柵で囲われていた。

ここも石器時代から神々が降臨する場所として崇められてきたのだろう。

大神神社の拝殿前には、秋らしく黄色の菊が飾られ、酒樽が山積みしてあった。
イベント的なテントが張られて、酒をふるまっている。
新酒ができあがる時期だから新酒フェア的なことをやってるのだろうか。

賽銭箱の上には、お酒や玉子がお供えしてある。
そばには「巳の杉」という札が立てられた杉があり、
そこにもゆで玉子らしき供え物。

三輪山をご神体とするといいながら、
どうやらヘビを酒の神様として祀っているらしい。

石器時代からの原始信仰のスタイルを持ちつつ、
女性の悩み相談も受け入れ、
ヘビの姿をした酒の神様でもあるというところが、
いかにも日本最古の神社らしいスケールの大きさ、ふところの深さだ。

拝殿の前をなにやら急ぎ足で横切ろうとした神官が、
険しい顔をしながらも一応立ち止まり、拝殿に向かって一礼して、
また急ぎ足で立ち去っていった。

この敬虔さがなんともいい感じだ。

イメージ 1 イメージ 2 イメージ 3 イメージ 4 イメージ 5 イメージ 6 イメージ 7 イメージ 8 イメージ 9
イメージ 10 イメージ 11 イメージ 12 イメージ 13 イメージ 14 イメージ 15

イメージ 15

檜原神社からさらに南下すると、いよいよ神々の山が迫ってくるのを感じる。

狭井(さい)という、これも大神神社の摂社らしい神社があった。

弁天様を祀った池のほとりには、
三島由紀夫の「清明」という文字を刻んだ石碑と、
遺作「豊饒の海」の第2巻「奔馬」を書くにあたってこの地を訪れ、
三輪山に登った三島のことを紹介した銘文がある。

三島由紀夫が「楯の会」という右翼団体を率いて、自衛隊市ヶ谷駐屯地に軍服姿で現れ、
自衛隊幹部を人質に立てこもり、
自衛隊員相手に時代錯誤の演説をして割腹自殺したのは、たしか1970年の11月だった。

その日の夕刊の第1面には、
三島ともう1人腹を切った若者の首が床に並んで置かれている写真が掲載された。

そのときぼくは高校2年。
その年の9月にジミ・ヘンドリクスが死に、10月にジャニス・ジョプリンが死んで、
アメリカでひとつの時代が終わろうとしていたときだ。

フラワー・チルドレンやヒッピー、ロックミュージック、反戦運動、左翼運動など、
色々なかたちはあったものの、
人間を抑圧する社会のシステムに様々な人たちが疑問を感じ、
異議申し立てのために行動した時代だった。

その時代の流れの中で、
三島由紀夫の昭和初期みたいな右翼ファッションとハリキリは、
とても滑稽でグロテスクな感じがしたのを覚えている。

当時「豊饒の海」は第3巻まで出ていて、
ぼくはちょうど1週間ほど前に、その第3巻「暁の寺」を読んだばかりだった。

「豊饒の海」は第4巻で完結することがすでに予告されていたので、
「この第4巻はどうしたんだろう?」と思ったら、
自殺の直前に原稿を出版社に届けていたらしく、
まもなく第4巻「天人五衰」は出版された。

しかし、なんとなく三島に幻滅していたぼくは、
その後、長いことこの「天人五衰」を読まなかった。
第3巻までの時代錯誤的なワクワク感に、
ちょっと魅力を感じていた自分が恥ずかしかったのかもしれない。

読んだのはほんの数年前のことだ。
第3巻までのワクワク感にくらべて、
第4巻は衰えと幻滅の感覚に満ちている。

とても頭がよく、感性豊かだった三島は、
単なるアナクロニズムの人ではなく、
ほとんどの日本人が近代化のために目をそむけている自分たちのアイデンティティーを、
彼らの目の前に突きつけるために、
ひねくれた、インパクトの強い表現を選んだのだ。

自分も50歳を越え、生命の衰えを感じるようになり、
日本人とは何かをリアルに考えられるようになって、
三島の気持が少しはわかるようになった。

文学として評価するということとはまた違うのだが。

狭井神社の境内に入ると、三輪山の登山口があった。
社務所に届出をすれば、誰でも登れるらしい。
ただ、時間制限があって、この日はすでにその時刻を過ぎていた。

社殿の左側奥には水汲み場があった。
名水らしく、きれいに整備されている。
そばには殺菌装置の中にならんだコップ。
「ポリタンク、ペットボトルに汲んで持ち帰らないでください」という看板が掲げてあるのだが、
老夫婦がポリタンクにせっせと水を汲んでいた。
たくましいなあ。

殺菌ボックスからコップをとりだして一杯飲んでみた。
日本のどこにでもある軟水だが、
たしかに清らかで甘い。
砂糖に甘さではないのだが、不思議と「甘い」という表現を使いたくなるようなうまさなのだ。

全12ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]


.
shu*i*ha*a
shu*i*ha*a
男性 / B型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

Yahoo!からのお知らせ

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト≪さとふる≫
実質2000円で好きなお礼品を選べる
毎日人気ランキング更新中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事