イージーライターのつぶやき

ちょっとマニアックな職業ライター兼アマチュア小説家が、作品と日常生活のつぶやきを紹介します。

吉備路紀行2010春

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山道をさらに歩いて、鬼ノ城の復元された防壁の下に出た。

アイヌ〜北米先住民的センスの城門をくぐって敷地内に入る。



どんなすごい要塞が再現されているかと思いきや、

中はただの山というか山上の空き地。

まだ発掘途中なのか、復元工事の途中ということなのか、

石が無造作に積まれていたりする。



博物館で見たジオラマを思い出してみると、

この広大な空き地全体が城砦ということらしい。



南の平野がはるか遠くまで見下ろせるので、

山城としてはいい立地なのだろうが、

唐・新羅連合軍が朝鮮半島・中国大陸から攻めてきたときの

防衛のために築かれたとしたら、

効果はどうなんだろう?



こんな山の上に立てこもっても、敵が山城なんか無視して、

平野の海際を通過したらなんにもならないんじゃないか?



まあ、敵が通過したタイミングで平野に降りてうしろから攻撃すればいいのか……。

攻撃しなくても、補給路を断つことはできる。



中国・四国地方にこうした山城が点々と築かれているから、

補給路を確保しようとすれば、

敵はいくら大軍でも北九州から山陽道すべてに兵力を配置しなければならなくなる。



そうなってはまずいから、

こんな山の中の城砦でも攻略しなければならないわけだ。



しかし、敵があっさり船で瀬戸内海を通過し、

浪速から大和へ攻め込んだらどうだろう?



実際に唐・新羅の連合軍が日本に攻め込み、

大和を制圧した記録はないが、

その後の歴史を見ると、

白村江の戦いから9年後に壬申の乱が起こり、

唐の影響下にある勢力が権力を握っている。



663年に白村江参戦を指揮した中大兄皇子は、

敗戦の4年後の667年、大和(奈良)から近江へ宮殿を移し、

翌668年、天智天皇になる。



しかし、3年後の671年に天智が没すると、

672年、壬申の乱が起こり、

天智の弟といわれる大海人皇子が天智の子・大友皇子を破って天武天皇になる。



天武は天智の弟だし、その妃(のちの持統天皇)は天智の娘だから、

たんなる宮廷内の親族争いのように見えるが、

その後、藤原京・平城京の建設、大寺院の建立、

唐の制度を取り入れた政治の開始など、

当時のグローバリゼーションが急速に進んだことを考えると、

壬申の乱はグローバル派とアンチグローバル派の、

国家運営をめぐる戦いだったと見ることができる。



そう考えると、この鬼ノ城をはじめとする北九州〜瀬戸内海沿岸の防衛施設は、

敗者の軍事拠点ということになるのだ。

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小さな博物館からさらに山の中へ入り、斜面の小道を上ると、

ジオラマどおりに再現された砦が遠くの方に見えた。



日本で言う「山城」というより、

昭和三十年代の子供向けドラマに出てきた、

無国籍な感じの悪漢のアジトみたいだ。



土をミルフィーユみたいに何層も重ねてつき固めた土台は、

考古学的な発掘・検証で確認されているらしいが、

その上にのってるアイヌ的とも北米先住民的とも見えるデザインの木造建築は、

根拠があって再現されたものなんだろうか?



とまあ、いろんな想いがわきあがってくるような、

興味深い建築物ではある。

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鬼の釜から何百メートルか坂を登ると、鬼ノ城の入り口に到着。



まず無料の小さな博物館で、この遺跡の発掘状況、建造物を再現したジオラマなどの展示を見る。

鬼ノ城というと、桃太郎伝説で退治された鬼の城みたいに思われかねないが、

実際には百済の土木・建築技術で建設された山城らしい。



こういう山城跡が北九州から瀬戸内海沿岸にかけてたくさん見つかっている。

最近の研究によると、663年白村江の戦いで敗れた大和政権が、

敵の唐・新羅の侵攻を迎え撃つため建設した軍事防衛施設とのこと。



なぜそこに百済の技術が用いられているかというと、

中大兄皇子(のちの天智天皇)率いる大和政権は、

同盟国だった百済に協力して、対立する新羅とその同盟国である唐と、

朝鮮半島で戦ったのだが、

戦いに敗れ、百済は滅亡したため、大勢の亡命者が日本に渡ってきた。

そこにはたくさんの技術者がいたということらしい。



当時は日本より朝鮮半島の方が、技術的に進んでいたといわれる。

大和政権は百済から仏教や建築技術などを取り入れながら、

政治・経済・文化の改革を進めているところだった。

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鬼ノ城へ続く急坂を徒歩で登る。

自転車の苦労が嘘のように体が軽い。

デイパックの荷物は駅のコインロッカーに置いてきたので、
もともと自転車で登るのも相当楽なはずなのだが、
それでも登り切れなかったというのはけっこうショックだ。

10分ほど歩くと、小さな集落があり、
「鬼の釜」という表示が見えた。

五右衛門風呂をでかくしたような鉄釜だ。

錆びて底が抜けているが、釜の原型を完全にとどめている。

ということはそんなに古いものではないのだろう。


めざす鬼ノ城(きのじょう)は、
桃太郎の鬼退治伝説に出てくる鬼の城みたいなことでつけられた名前なのだろうが、

そもそも日本各地に残る鬼退治伝説の「鬼」は、
製鉄を生業とする一族のことなのだとする説がある。


たとえばこの吉備には、百済から製鉄技術をもたらした温羅(うら)という鬼がいて、
それを大和朝廷の英雄が退治したという伝説が残っている。

しかし、こうなると鬼退治は古代の話ということになってしまい、
大和朝廷の全国制覇が完了したのは5世紀あたりとすると、
こんな野ざらしの鉄釜が残っているわけもなく、
これが鬼の釜というのはあやしいということになる。

もうひとつ各地に残っているのは、
大江山の鬼退治みたいに、平安〜鎌倉時代あたりの武士の英雄が、
女たちを誘拐して山奥のアジトに連れ帰る鬼を退治するみたいな話だ。

これは鉱山業・金属精錬業を生業とする一族が、
有害物質を川に垂れ流すなどの問題を引き起こし、
時の権力に制圧されるという事件があちこちであり、
それが「鬼退治」として伝わったものだという解説を読んだことがある。

この手の話で興味深いのは、
鬼を殺して女たちを解放してみたら、
意外にも女たちは鬼を愛していて、
鬼が殺されたことを嘆き悲しんでいたというエピソードが加わっていたりすることだ。

つまり、「鬼」は悪いやつでも化け物でもなかったというわけだ。

明治時代の足尾銅山事件みたいに、
金属鉱山・精錬業者が毒を垂れ流す公害事件みたいなことが、
ほんとにあったのかどうかはわからないが、

製鉄・金属加工業は、政治権力の趨勢を左右しかねない重要産業だったろうから、
そうした産業を担う勢力で権力に従わないやつらは征伐する必要があったのだろう。

もしかしたら、「鬼」とは中央の権力に従わない地方の勢力のことだったのかもしれない。

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吉備線の線路を渡り、岡山自動車道の高架下をくぐると山が近づいてきた。

「鬼ノ城→」の道標にしたがってその山へ続く道に入ると、

桜が美しい砂川公園あたりから坂が始まった。


最初はなだらかな坂なので、自転車でぐいぐい登れたのだが、

公園をすぎ、本格的な山の中に入ると、傾斜が急にきつくなった。


山はぼくが育った阪神エリアの六甲山系に似ている。

細い木々のあいだに淡い褐色/ピンク色の花崗岩がもろそうな山肌をのぞかせる。


ところどころにピンクの前掛けをつけた小さな石像が立っている。

番号がふってあるところを見ると、

お参り・巡礼の道でもあるのだろうか。


坂がきつくなってきたので、

何度も自転車を停めて写真を撮ってはまたスタートする。


そのうち、歩くよりもスピードがおそくなり、

ついににっちもさっちも行かなくなってしまった。


あきらめてガードレールに自転車をワイヤーで固定し、

息を整えてから徒歩で登り出す。



「鬼ノ城まであと1.5km」の表示から百メートルほど登った場所なので、

もうそんなに距離はないはずだ。

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