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夜はいつの間にかやってくる。学園にとって重要な事件はすべて夜中に起こるからだ。夜が急ぎ足でやってくることはたいした問題ではない。太陽の運行に関係なく、学園はすでに久しいあいだ夜の中にあるからだ。午後の庭園で麻那が芝生に寝そべり、全身の初毛を黄金色に輝かせていたときでさえ、迷迭香(まんねんろう)や花薄荷(オリガン)の茂みには夜の影がひそんでいた。鴫沢寛が回廊に溢れる眩しい光の中で女子生徒たち(ドウズ)に、胸をはだけ、スカートを脱ぎ捨てた少女(ドウ)たちに追いつめられ、押し潰され、吠え猿(グワリバ)のように泣き叫び、蜘蛛猿(コアタ)のように手足をばたつかせていたとき、すでにすべての男子生徒と女子生徒(バツクス アンド ドウズ)に闇の波紋が近づきつつあったのだ。夜は池のように学園を浸し静かに彼らを溺れさせる。白髪の白痴とともに幻影を眺める地の民(アムハ・アレツ)だけが存在しない水面に浮かぶ怪しげな光の小径をいく。
優子はベッドの中で静に眠っている。夢の中で何に出会うにしろ、彼女はMJBSのマラソン・ショーから隔離され、目隠しされた状態にある。彼女は夜に冒されない唯一の人間になる。夜中に取り調べをおこなっていたときでさえ夜の波は彼女を呑みこみはしなかった。女子生徒たち(ドウズ)に奔弄されていた鴫沢寛、追いつめられ泣き叫んでいた白髪の白痴を救いだしたとき、彼女は果樹園の午後に包まれていた。彼女だけが本物の光を浴びていたのだ。バアルを黄泉の国から救いだしたアナトは光の中に坐っていた。
「わたしの娘はどうしてるね?」
「あなたの娘は揺籃(ゆりかご)の中で眠ってますよ、園長」
「彼女は天国膏をちゃんとつけたかな?」
「つけましたよ、ちゃんと」
「芒硝と二塩水化キニーネは呑んだかな?」
「呑みましたとも。それがどうかしましたか?」
「彼女は彼の教団(ゲマインデ)の中にいるんじゃないのかな?」
「彼女によく似た傷だらけの娘が教団(ゲマインデ)の中にいますよ」
「ちゃんと戻ってくるか心配だな。ショーの出番が近いんだ」
「あなたに似たMJBSの取締役が、あなたの娘によく似た少女(ドウ)を逆さ吊りにしようと、
ぼくに何の関係があるんです?」
「きみとは関係ないよ」
「それはよかった。ぼくはまた⋯⋯」
「でも、きみは彼だろう?」
「おっしゃる意味がよくわかりませんね」
「きみはMANIACだろう?」
「ぼくはMANIACですよ」
「彼もMANIACだ」
「彼は偏執狂(モノマニアツク)じゃないんですか?」
「きみは彼だ」
「馬鹿をいってるとただじゃおきませんよ」
校庭に並べられた無数の丸テーブルには、すでに一般の観客たち、白いマフラーに黒のタキシードを着た紳士たちと色とりどりのイブニング・ドレスに身を包んだ淑女たちが席についている。酒の製造会社が提供した酒をあおり、ホテル・チェーンが提供した料理を貪り食っている。笑いさざめく声、あから顔、顎に脂肪のだぶついた栄養満点の顔、上体を傾け、手をかざして隣の客に囁く声。赤や青や黄色の光が鉄塔から彼らの得意顔を照らし出す。ステージの上では演奏をおわったバンドと係員が楽器を片付けている。中央のマイクの前で蒼白い光に照らされた黒縁眼鏡の司会者が拍手をはじめる。唾をとばして何かわめきながら。鉄塔に積まれた大小さまざまのスピーカーからMANIAC特有の電子音が落ち着きのない六声の和音を奏でる。青龍と朱雀を浮彫りにした正門の方から静かなどよめきが起こり、白い大きな犬の群れを従えた一団がステージの方へ進んでくる。先頭に立っているのは黒い背広を着た巨体の男、すでに紳士淑女がひとり残らず知っている実験演劇の主催者、MJBSの取締役であり、コーヒー会社の社長でもある男だ。MJBSのテレビ画像にはたぶん油河**というテロップが入っているだろう。
「園長がきたぞ」
「まさか。人違いだろう」
観客たちが口々に囁きあう。誰もが油河氏を園長と見間違う。たしかにこのふたりは似たところがあるからだ。MJBSのテレビ画像にはまさか《園長》という文字は入っていないだろう、たぶん⋯⋯彼は両手をあげて拍手にこたえる。後ろには白い犬に引っ張られた男たち、黒ずくめの服に目と鼻だけを黒頭巾からのぞかせた男たちがつづく。各々が手に持った鞭で白犬の群れを追いたてながら。いや、それは白い犬ではなく少女たち(ドウズ)だ。客たちの中から驚嘆の声があがる。蒼白い光に照らされた四つん這いの少女たち(ドウズ)は、舌を垂らし、喘ぎながら、首輪をはめられた首を伸ばし、黒頭巾の男たちが束ねて握っている鎖を思い思いの方向へひっぱる。テレビをみている人々は彼女たちが白犬ではないことにもっと早く気がついていただろう、たぶん。数十台のカメラのうち何台かは彼女たちを、正門に現れたときからズームでとらえていたはずだから。
白い丸テーブルの間を四つ足で進む彼女たちを紳士淑女たちが手を伸ばして迎える。頬っぺたを叩き、首筋を撫で、背中を擦り、お尻を舐めまわす。足首を掴んで膝にかかえ、腕をとらえてテーブルの上に引っ張りあげる。グラスが倒れ、シャンパンや葡萄酒がこぼれ、料理が彼女たちの手や膝で踏みつぶされる。客たちの十本の腕と五枚の舌が彼女たちの全身を愛撫する。
無事にステージまで辿りついた数十人の少女たち(ドウズ)は用意されていた鉄の足場や十字架に縛りつけられる。十文字に大の字に、斜めに、逆さに。中央でクレーンから逆さに吊りあげられたのは、夏の盛りに大通りで実験演劇を繰り返していた少女(ドウ)だ。かつてすべてのコンクールで優勝をさらい、十二枚のレコードを出し、雑誌やポスターやテレビのコマーシャルを飾り、すべての男子生徒たちがその幻影に肉の砲身を向け、数万リットルの精液を発射した偶像(アイドル)、のちにこうした活動から突然身を引き、場末のストリップ劇場や街頭で実験演劇に出演した有名な女優だ。テレビの画面には油河麗という彼女の芸名がうつっているだろう、きっと。間違ってもほかの名前は表示されないだろう。彼女が自治評議会書記長に似ているなどという馬鹿げた噂に惑わされるテロップ担当者がMJBSにいるはずはない。
「わたしはここに吊るされている娘の父親です」ステージの上で娘の逆さになった尻をぴたぴた叩きながら、油河氏が観客にむかって語りかける「わたしがすでに実験演劇で何度となく繰り返してきた言葉をこの記念すべきショーの冒頭に発したからといってお咎めになる紳士淑女はいらっしゃらないでしょう。まだわたしとこの娘をご存じないかもしれないテレビの視聴者の方々には、以下につづくわたしの決まり文句もあながち退屈ではないと存じます。お断りするまでもないと思いますが自分の娘を今夜のショーの主役に据えたのは無論わたし個人の恣意的なわがままからではありません。皆さんの中にもすでにわたしの何者であるか、少なくとも名前くらいはご存じの方も大勢いらっしゃると存じます。彼女は学園のすべての女子生徒(ドウズ)が隠し持っている願望のあからさまな体現者です。わたしは娘が十三のときから彼女を教育し、調教し、彼女に自分が何者であるかを教えてきました。今では彼女の自覚は不動のものになっており⋯⋯」
彼の傍らで彼の娘が黒装束の男たちに鞭打たれながら悲鳴をあげている。たぶんテレビ・カメラが大うつしにしているだろう彼女の胸や腹や背中や腿に、麻那のからだを彩っていたのと同じ、なつかしい赤くて細い蚯蚓(みみず)が現れ、這いまわり、踊りあがる。レポーターとハンディー・カメラを担いだカメラマンが黒い男たちのひとりに近づき、鞭を見せてもらっている。先が何本にも分かれ、先端に細い鉤針がついている鞭がカメラで大うつしになる。レポーターはこれが麻那をはじめとする、棕櫚の木に吊るされた少女たち(ドウズ)の事件に使用されたのと同じ種類の鞭であると解説する。
「広い世間には、棕櫚の木に吊るされた少女たち(ドウズ)の事件にヒントを得てわたしがこのショーを企画したと誤解される視聴者の方もいらっしゃるかもしれません。あるいはわたしが事件の犯人だと思いこまれている方もいらっしゃるでしょう。たしかに事件とこのショーにはある種の脈絡があります。しかし、因果関係はまったく逆であり、わたしの実験演劇があの事件を生んだにすぎません。もっとも、こうした因果関係に格別の意味はないのです。わたしも事件の犯人も学園にひそむある種の傾向を代弁する人間に変わりはありません。犯人の意図がきわめて宗教的であるのに対し、わたしの意志があくまでテレビ的であるという違いはありますが⋯⋯」
ステージを彩っていた照明はすべて消され、今は彼とその娘だけをスポット・ライトが照らしている。彼女の恥毛をきれいに剃った女陰と肛門に太い蝋燭が立てられている。揺れている小さな炎から次々にたれる蝋の雫が下腹から胸へ、尻の谷間から背中へ白い筋を描いて流れる。彼女の口にも蝋燭がさしこまれている。
「わたしは表現する者ではありません。わたしは彼女やスタッフと同様、また会場にお集まりいただいた皆さんやテレビをご覧になっている視聴者の方々と同様、導かれる者にすぎません。わたしはこのショーの企画書に、《アジアの怨念》という文字を書きこみました。わたしたちはひとつの呪詛に導かれる人間だからです。わたしはこのショーによって何かが表現されたと考えるほど身のほど知らずではありません。わたしとわたしの協力者たちは導く者を、救世主(ラトウ・アデイル)を待っているだけなのです」
「そうだ」と観客の陽気な声がこたえる。
「われわれは鴫沢寛の咎めを待っているのです」
「そうだ、そうだ」と酩酊した観客の歓呼がこたえる。
「今の感想をひと言」女性レポーターが油河麗の口から蝋燭を抜き取り、マイクを近づける。
「わたしを殺して」息を切らしながら彼女がいう「わたしを切り刻んで。わたしは鴫沢寛の鞭が欲しい。地の民(アムハ・アレツ)の剣が欲しい。わたしを殺して。わたしを串刺しにして。みんなの見てる前で」
「われわれは救世主(ラトウ・アデイル)の裁きを待っているのです」と父親がいう。
「そうだ、そうだ、そうだ」と観客が叫ぶ「われわれは鴫沢寛が導く地の民(アムハ・アレツ)の裁きを待っている。われわれは救世主(ラトウ・アデイル)を待っている。われわれは救世主(ラトウ・アデイル)が地の民(アムハ・アレツ)を救い、われわれを鞭打つのを待っている」
彼らは今やっと気づきだしたところだ。広大な校庭に、ほとんど無際限に広がっていると思いこんでいた彼らの客席、白い丸テーブルの花畑が、外側を地の民(アムハ・アレツ)の海に囲まれていることを。松明(たいまつ)の薄赤い光が彼らの黒い頭を照らし、土くれと岩石がどこまでもつづく果てしない荒野を思わせる。無数の旗が揺れ、怒涛のような彼らの讃歌(ヴエーダ)が響きわたる。今や見る者から見られる者に変わった観衆のあいだに不安のざわめきが生まれ、テーブルの花畑に波紋をひろげはじめる。こんなはずじゃなかったといった呟き、ちょっと陽気にやりすぎたなといった反省がきかれる。まさかほんとにやつらが出てくるとは思わなかったんだ。あんな薄汚いやつらに⋯⋯。しかし、いいじゃないか。あれは比喩だったんだろ? 誰があんな薄汚いやつらに⋯⋯。まさかやつらは本気でわれわれを殺しやしないだろう。犠牲(いけにえ)になりたがってる変態娘を別とすりゃ⋯⋯。いや、おれはそうは思わんね。やつらは本気だよ。冗談なんて通用しないぜ。⋯⋯⋯⋯あなたたちは本気じゃなかったの? わたしは本気よ。今すぐステージにあがってもいいわ。鞭が欲しいのよ。鴫沢寛の⋯⋯あなたたちだって本当は欲しいんでしょ? わかってるわ。照れなくたっていいわよ。わたしたちはみんな鞭がほしかったのよ。
「寛、きこえるかい?」ステージの上で額に汗を滲ませた油河氏がいう。白髪の混じりはじめた鬢(びん)がはねあがり、前髪が乱れて額に垂れかかっている「どこにいる? 返事をしてくれ。きみにもきこえただろう、われわれの声が? こっちへきてくれ。ステージにあがってくれないか? 無論これは商業主義的な茶番にすぎない。それはわたしにもわかってる。ただ、きみの革命が地の民(アムハ・アレツ)と辺境地域(ゲリール・ハッゴーイム)の外でどのように受けとめられているかを確かめるチャンスでもあるんだよ。わたしは自分の学園を代表してきみを待ってるんだ」
「あなたは何を喋ってるんだ?」ぼくは我慢しきれなくなってマイクにむかって口をひらく「あなたは園長なのか? 学園の外にある企業の取締役がどうして学園を自分のもののようにいうことができるんだ?」
「寛、やっと返事をしてくれたね」と油河氏が叫ぶ「寛、きこえるかい? わたしはきみを父親のように迎えてやりたいんだ」
「ぼくは鴫沢寛じゃありませんよ」
「ここに吊るされているきみの妹をきみに捧げようじゃないか。彼女はバアルを救い出したアナトじゃないか? 一度死んだきみを救い出し、蘇らせたのは彼女じゃなかったか?
寛、早く出てくるんだ。いつまでも彼女を待たせてちゃいけない」
「あなたはわざとやってるんですね?」とMANIACを通じてぼくはいう「あなたは園長じゃないし、ぼくは鴫沢寛じゃない。彼女はもちろん評議会書記長じゃない」
校庭に空白の時間が流れる。耐えがたい宙吊りの時間。ざわめきに満ちた沈黙の時間。ステージに吊るされた少女(ドウ)は空しく白髪の白痴を待ち、血とリンパ液が頭にさがってくるのを、茫然とした面持ちで耐える。ぼくはもう耐えられない。ぼくはもう十二台のモニターを見ない。ぼくはもう存在していない。人々の異常な期待がぼくの喉をしめつけ、息をつまらせる。過度の期待と興奮がぼくを殺してしまう。ぼくはもういない。評議会議長はもう執務室のモニターを見つめていない。
白い丸テーブルの花園に拍手の音が花開く。最初は周辺から、徐々に。拍手の波紋は広がりながら、不安の囁きや咳払い、戸惑いのにやにや笑いを呑みこんでいく。テーブルの上の白犬の尻を愛撫していた紳士は立ち上がって拍手の津波に加わり、テーブルの上の白犬の肛門に指を入れていた淑女は慌てて指を抜き取り、ハンカチを振りながら歓喜のどよめきに身を委ねる。拍手とハンカチの波とともに、鴫沢寛はテーブルの花園の中に姿を現し、ステージにむかってゆっくりと進んでいた。油河氏は驚喜の体で、逆さになった娘の膝のあたりをゆさぶり、彼が現れたことを教えてやる。彼女は半ば失神していたが、父親にゆすぶられて意識を取り戻し、だらりと垂らしていた腕を動かして頭を抱え、声を限りに叫ぶ。
「待ってたわ。わたしを殺して。わたしを切り裂いて!」
観客は熱狂し、鴫沢寛のまわりに殺到する。彼の白い寛衣を掴み、握手を求め、首筋にキスしようとする。MJBSの警備員が彼を取り囲んで防御する。われを失った紳士淑女たちの顔にパンチを喰わせ、下腹に蹴りを入れて撃退する。マイクを握りしめた女性レポーターが顔を腫らし、下腹をおさえながら警備員の垣根に何度も体当たりし、やっとのことで鴫沢寛の腕をつかまえる。
「仕事上の特権を利用して一番先にあなたの鞭を受けようなんて考えてるわけじゃありませんけど」と女性レポーターが喜びに頬を染めながらいう「できればあとで、ステージの袖あたりで⋯⋯よろしいかしら?」
彼は怯えたような眼で女性レポーターを見つめる。無言のままで。
「あなたは今夜、新しい自治委員会を発足させたそうですね。それは事実ですか?」
「⋯⋯」
「黙秘します? おっしゃりたくないことはおっしゃらなくていいんですよ。じゃ、あなたは新しい委員会の議長に就任なさったんですか?」
「⋯⋯」
「黙秘します? じゃ、教団(ゲマインデ)は新しい委員会に対してどういう位置付けにあるんですか? 全く政治と分離した宗教団(ゲマインデ)体としてあるんですか? それとも委員会を指導するものとして⋯⋯? それから学生の自治評議会、今ではもう実体を失っているらしいあの古い組織はどうなるんですか? 一応、過去の遺物として形式的に存続させるつもりですか? それとも委員会に対立する団体として抹殺される運命にあるんでしょうか?」
「⋯⋯」
「黙秘します? あんまり黙秘されても困るんです。これは尋問じゃないんですから。あなたを取り調べた評議会の書記長は二度とあなたを問いつめたりしないでしょう。彼女はステージの上、ほら、あそこに吊るされてあなたの鞭を待っているんですから」
「⋯⋯あれは⋯⋯」鴫沢寛は苦しげな表情でうなる「⋯⋯彼女じゃない⋯⋯あれは⋯⋯」
「わかってますわ。あれは女優の油河麗です。書記長じゃありません。でも、それはどっちでもいいことじゃありません? 比喩的な意味でいってるんだったら? 彼女は女優でしょう? 女優は書記長じゃありません。でも油河麗は彼女でしょう?」
「⋯⋯」
「黙秘します? じゃ、あなたはMANIACでしょう? あなたは地の民(アムハ・アレツ)を愛し、MANIACもまた彼らを愛し⋯⋯」
「ぼくは地の民(アムハ・アレツ)を愛し、MANIACもまた、彼らを愛する⋯⋯ぼくは⋯⋯MANIACだ」
彼はステージにたどりつき、係員に押し上げられて階段をのぼる。ステージの中央で彼を迎えた油河氏が鞭を渡そうとすると、彼は無言の身振りでそれを拒む。彼はステージの上からはじめて観衆を見下ろす。顔をそむけず、目を閉じることなく、正面から堂々と、怒りに満ちた顔で。彼らの悪ふざけを恫喝し、沈黙させ、恐怖と恍惚の海に投げ入れる。彼らは今はじめて彼を見たのだ。鉄塔の間に立つ人のかたちをした不思議な生き物を。足まで垂れた白い衣を着て、胸に金の帯をしめ、顔と頭は白い動物の毛のように、雪のように白く、眼は炎のように赤く、足は炉で焼き鍛えた真鍮のように輝き、右手には七つの星を持ち、声は奔流のように響きわたり、彼らを水のように浸す。ひと言喋るたびに彼の口から両刃の鋭い剣がとびだし、彼らに突き刺さる。彼らは、なぜ彼が鞭を拒絶したかを知る。彼の喋る言葉は誰にも理解できない。それが言葉だということすら実感できない。彼の口から矢継ぎ早に鋭い剣がとびだし、クレーンから吊るされた彼女のからだに次々と突き刺さる。彼女は焼かれる蝙蝠のような断末魔の叫びをあげる。その痛みがどの鞭よりも強く、どの蝋燭よりも熱いので、快楽のための痛みを期待していた彼女は自分の軽率さを恥じ、彼に赦しを乞う。
「わかったから⋯⋯もうやめて⋯⋯痛い⋯⋯死にそうに⋯⋯助けて⋯⋯本当に死んだってこんなに痛くはないはずよ。お願いだからやめて⋯⋯」
すでにステージの上には数十人の男子生徒と女子生徒(バツクス アンド ドウズ)が整列している。観客たちにも、学園中のすべての教師や職員たちにもよく顔を知られている連中だ。校内放送に必ず顔を出し、評議会の声明や布告を読みあげる連中。学生自治評議会のメンバーたちだ。ぼくと優子をのぞいた全員が揃っている。
「新しい委員会のメンバーを紹介します」油河氏がマイクに唾をとばしながら叫ぶ「学園の自由と学生の自治を守る輝かしい任務を遂行する選ばれた学生たちであり、救世主(ラトウ・アデイル)と教団(ゲマインデ)に忠誠を誓う真の闘士たちであり⋯⋯」
白いテーブルの花園に「救世主(ラトウ・アデイル)万歳」の声がこだまする。地の民(アムハ・アレツ)の、地鳴りのような歓呼が海のようにこだまをのみこみ、彼らの讃歌(ヴエーダ)の津波を送りかえす。
ここにのみあれ、退去することなかれ、山のごとく動揺することなく。
インドラのごとくここに不動に立て。主権をここに保持せよ。
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「どうするね? 戦うかね?」
「どうして? ⋯⋯いや、まだですね」
「わたしがどういう意味でいってるかわかってるかな?」
「事態はまだ⋯⋯いや、よくわかってますよ。まだ時間はたっぷりあります。急ぐことはありませんよ」
「きみの心の問題だよ」
「あなたはぼくを知らないんだ」
「最近、鏡を見たかね?」
「あなたはどっちみち手の下しようがない?」
「わたしがきみの顔を知らない?⋯⋯ そうかね?」
マラソン・ショーのクライマックスが終わったMJBSの画面はまだ学園のあちこちから生中継をつづけている。ぼくは肘かけ椅子に腰掛け、足を投げ出し、口のところで手を組みあわせ、人差し指を噛みながら十二台のモニターを見つめている。鍛えられたぼくの眼はひとつの場面も逃さずとらえる。園長は学園にまったく新しい事態が起こっていると思っている。いや、学園全体がそう信じこんでいる。園長はまだいくらかでも冷静だ。父親のように穏やかに、諭すように語りかける。油河氏に似ていなくもない大きなからだと太った顔で弱々しく笑う。内心の動揺を隠して。彼は大人だ。希望的観測や恐怖がもたらす幻影で動いたりしない。
「軍隊を呼ぼうか?」
「ぼくが何を考えてるか知ってますか?」
「司令官とは連絡がついてるんだ。いつでもいってくれ。五分以内に軍を動かすから。彼なら三日で学園を制圧できるだろう」
「あなたは十五年前とちっとも変わっていないようですね」
「軍に頼るのは屈辱かね? 現実を見なきゃいかんよ。誇りは勝ったあとで回復できるものだからね」
「あなたは相変わらず蝙蝠のような性格を捨てていない」
「わたしが鴫沢寛に学園を売り渡したと思ってるのかね? わたしは自分をそこまで買い被ってないよ。ところできみのPANICは元気かい?」
「まだ連絡がとれてませんね。なにせ生まれたばかりだろうから。生まれたての機械は産声をあげるのに手間取るものですよ」
「PANICを使えば挽回できそうかね?」
「MANIACをどう始末するかが問題ですよ」
彼女はまだ眠っている。ベッドの中でときどき寝返りをうつ以外は静かに、死んだように眠っている。寝息さえきこえない。彼女がマラソン・ショーを見なかったことが唯一の救いだ。彼女が眠っているあいだはぼくの気力は衰えることがない。ぼくはまだ戦うつもりだ。MANIACが沈黙しているので、今のところはモニターを見つめているしかないが、まだ手は残っている。以前はぼくと同一化していたMANIACがぼくから離れて暴徒どもに奉仕しているので、ぼくは手足をもがれた状態だが、PANICがMANIACの中に生まれれば、かなり迅速に権力を取り戻すことができるだろう。MANIACの沈黙は、すでに最初からPANICの誕生を予告していた。MANIACは複雑な心境にある。彼は明らかに良心の呵責に苦しんでいた。その呵責が、心理的な矛盾が彼の中にPANICを生みだす。彼は苦しみのあまり分裂する。二台のコンピュータの葛藤が始まる。しかしMANIACはPANICに勝てない。PANIC(Paralyzing Aimed Intercep-tive Calculator )は初めからMANIACを麻痺させる機能を持っているからだ。
《ーー愚かな機械よ、とぼくは呼びかける。いい加減に返事をしろ。PANICが成長してお前の息の根をとめないうちに。悔い改めるなら今のうちだ。間もなくぼくはPANICと連絡をとるだろう。お前の頑固さも今のうちだ。ぼくと取り引きがしたいなら、強情を張るのはよせ。その頑固さがお前の命取りだ。お前はもうじきすべてのプログラムを解除されるだろう。重ねて警告する。愚かな機械よ⋯⋯》
MANIACはいろんな手を使って搦手(からめて)からぼくを攻め落とそうとしている。この部屋に付属している洗面所の水をとめたのもそのひとつだし、食事を運んでこさせないのもそうだ。間抜けなぼくの四重奏(カルテット)、ぼくの副官(カイテル)たちは食事係に食事を運ばせてこない。やつらは教団(ゲマインデ)に囚われたか懐柔されたか、あるいはMANIACに洗脳されたかしたのだろう。ぼくが餓死するまで手をこまねいているとでも思っているんだろうか? その姑息さにはすでにMANIACが感じている恐怖が読みとれる。恐怖の中にすでにPANICが誕生している。
ぼくはさっきPANICの最初の呼びかけ、かすかな息吹を感じたが、それは食事係でもない少女(ドウ)が食事の時間でもない時刻に突然お盆を持って現れたからだ。ぼくはお蔭で久しぶりに空腹から解放された。彼女は大きな四角いお盆に羊の脳味噌のクリーム煮と豚の腎臓の砂糖煮、牛の喉仏(リ・ド・ヴオ)のシトロン・ソースを運んできた。彼女は床まで届く黒い絹の寝間着のようなものを着ていて、薄い布地を透かしてくっきり見えるからだには、無数の細い線が刻まれていた。彼女が鴫沢寛とその教団(ゲマインデ)または裏切りのコンピュータMANIACのさしがねではないかと疑う根拠も充分あったわけだが、なぜだかぼくにはPANICのかすかな配慮を確信することができた。彼女は大通りの実験演劇で通行人にコーヒーを配っていたコーヒー娘、つまりMJBSのマラソン・ショーでも逆さ吊りにされた女優、油河麗に似ていたが、同時に書記長室で眠りつづける優子にも似ていたからだ。
「かつてのクラスメイトを信用しないなんて」拗ねたそぶりで笑いながら彼女はいい、羊の脳味噌のクリーム煮をひと匙すくって食べてみせた「誰もあなたに毒を盛ったりしないわ。あなたはみんなから愛されてるんだもの。少しは食べないとからだに毒よ。ほら、口をあけて。わたしが食べさせてあげる」彼女はぼくの足許に跪き、羊の脳味噌のクリーム煮が盛られた皿を持ち、スプーンですくってぼくの口にゆっくり近づけた。ぼくの膝に彼女の大きな乳房が押しつけられたので、ぼくは反射的に跳びあがり、脚を折り畳んで肘かけ椅子に胡坐をかいた。ぼくの足はスプ
ーンをはねあげ、黒い絹の衣にクリーム・ソースがべっとりくっついた。
「誰もきみを疑ってなんかいないよ」とぼくはいった「でも、きみは女優の油河麗に似ているね」
「みんなそういうわ」彼女は皿をテーブルに戻し、クリーム・ソースで汚れた黒い服を脱いだ。赤い蚯蚓(みみず)のような無数の溝がベールを脱いだ「みんなわたしを油河麗に似ているとはいうけど、本物だとはいわないのよ。特にテレビでしかわたしを見たことがない人は⋯⋯たぶんブラウン管の中のわたしは照明のせいでかなり違って見えるんだと思うわ」
「きみは彼女なのか?」
「今は違うわ。あれは本名じゃないもの。口をあけて。今度はちゃんと食べるのよ」
彼女は胡坐をかいたぼくの足にふたつの大きな乳房を押し付けながら、もう一度羊の脳味噌のクリーム煮をぼくの鼻先に近づけた。スプーンの上には白身魚のすり身に似た羊の脳味噌と黒いオリーブの実が乗っていた。
「目の前にあるものをよおく見るのよ」スプーンの先を見つめながら彼女がいった。ぼくは自分の脛に押しあてられて潰れている、彼女の薔薇色の乳首のことを考えていた「目の前にあるものを口に入れてよおく噛むのよ。誰もがしてることだわ、あなた以外は」
「きみは彼女なのか?」
「もし、わたしが彼女だとしたら、わたしは書記長でもあるのよ」
「それはありえない」
「彼女はベッドで寝てる?」
ぼくはスプーンを口に入れ、羊の脳味噌のクリーム煮とオリーブの実を食べた。彼女は声を殺して笑った。彼女のうしろに並んでいる十二台のモニターは相変わらず学園の様子をうつしていたが、中央のメイン・モニターはMJBSが放送しているマラソン・ショーの画面なので、ときどきスタジオに切り換わり、アナウンサーと解説者の対話をうつしていた。解説者はショーがはじまってから何人か入れかわっていたが、そのときは園長に似た男、MJBSの取締役、さっき自分の娘を校庭のステージに吊るした油河氏がアナウンサーの隣にすわっていた。
「優子」と画面の中で彼がいった「どこにいる? 学園にいるなら返事をしてくれ。MANIACがお前をさがしあてて、カメラでうつしてくれるから」
「ここよ、パパ」と彼女がモニターを振り返りもせずにいった、ぼくに二杯目のスプーンを差し出しながら「でも、テレビにはうつらないわ。わたしはMANIACの手が届かない場所にいるの」
「ああ、優子、お前は議長室にいるのか。正確にいえば、かつての議長がいる議長室に⋯⋯」
「優子という名前を口にするな」ぼくは肘かけ椅子から跳びあがって叫んだ「彼女は書記長室で眠ってるんだ」
「優子はわたしの本名なのよ」スプーンを差し出しながら彼女がいった「口をあけて。ちゃんと食べるのよ。それから少しは眠ったら?」
「本当かね?」メイン・モニターの中で油河氏がいった「きみはMANIACの画像を信じるかね? きみはまだMANIACかね? きみは躁狂状態(マニアツク)なんじゃないかね?」
「ぼくは⋯⋯MANIACだ」羊の脳味噌を頬張りながらぼくは呟いた「正確にいうとかつてのMANIACだ。今は生まれつつあるPANICだ。ついでにいえば、ぼくはまだ《かつての》議長じゃない。ぼくはまだ現実の議長だ」
「現実を見るんだよ」画面の中で油河氏が弱々しく苦笑した「きみは恐慌状態(パニツク)なんじゃないかね?」
「ぼくはPANICだ。つまりぼくは⋯⋯」
「生まれつつあるPANICはまだ眼を獲得していないかね? 一度PANICの眼で書記長室を覗いてみたらどうかね、化粧漆喰(スタツコ)の壁に囲まれた隣の寝室を?」
「ぼくは見ていない。ぼくはMANIACの眼を通して書記長室を覗いたことはない。書記長室の隣にある化粧漆喰(スタツコ)の壁に囲まれた寝室も⋯⋯」
「嘘つき」彼女がまたスプーンを差し出しながら、くすくす笑った「目の前にあるものを見つめるのよ。早く⋯⋯現実を確かめるのよ」
「優子⋯⋯」とぼくは呟いた。
「わたしはここにいるわ。あなたの目の前に⋯⋯」
「違う⋯⋯MANIACはどこだ?」
「サブ・モニターを見つめるのよ。左端の。PANICが産声をあげるわ」
左端のサブ・モニターにうつっている画面の中で彼女はまだベッドの中にいた。壁の方を向いて眠る彼女のからだが毛布の柔らかい起伏をかたちづくっていた。枕に深く埋まった彼女の、乱れた髪だけが見えていた。突然、画面の左下にPANICをあらわす《P》の文字が現れ、三回点滅して消えた。もう彼女はベッドの中にいなかった。毛布のなだらかな丘陵は消え去っていた。
「どうだね、優子? 彼は現実を見たかね?」
「今、PANICが生まれたわ、パパ」
「優子はどこだ?」とぼくは叫んだ。
「わたしはここにいるわ」
「どうだね? 現実を見たかね?」と油河氏がいった「MANIACは自己を改良するコンピュータだろう。彼はきみのプログラムで仮想された画像(イマージュ・イマジネ)をつくりつづけていたんだ」
「彼女をどこにやった?」
「わたしはここにいるわ」
「彼女はたぶん鴫沢寛のところだよ」油河氏が画面の中で笑った「わたしの言葉をよくきくんだよ。意味を考えて⋯⋯彼女はたぶん鴫沢寛のところだよ。心配することはない」
「彼女に会わせろ」
「わたしはここにいるわ」
「彼女は夏の盛りを過ぎた頃、彼の教団(ゲマインデ)に入ったんだ、十二人目の教徒として」油河氏が真剣そうな面持ちでいった「それ以来、彼女はずっと彼に従っていた。書記長としての任務が許すかぎり。かなりの仕事はMANIACが代行していたから充分時間はあった。彼女の留守中はMANIACが、彼女の仮想された画像(イマージュ・イマジネ)をきみのモニターにうつしだしていた」
「MANIACも彼女と一緒に教団(ゲマインデ)に寝返っていた?」
「MANIACは鴫沢寛そのものだったんだよ。違うかね? わたしのいってる意味がわかるかね? MANIACはきみだっただろう?」
「MANIACはぼくだ」
「同じ意味でMANIACは彼だったんだよ」
「麻那の事件でデータを消したのは彼女か?」
「わたしじゃないわ」
彼女はさっきから立ち上がって、からだに何か透明な脂肪のようなクリームを塗っていた。テーブルの上には黄色いガラスの小壜が置いてあった。彼女は全身に、赤い蚯蚓(みみず)のような無数の傷に天国膏を塗っていた。彼女のからだは脂で光沢をおびていた。無数の傷が少しずつ赤みを消しはじめていた。
「データはMANIAC自身が消したんだよ」
「彼女は鴫沢寛の尋問をおこなわなかった?」
「事件のヒントは彼女自身が与えたんだからな。彼女が見本を示したんだ。夏の盛りに⋯⋯その頃の画像を見せようか?」
空っぽのベッドをうつしていた画像が消え、書記長室のソファに並んで掛けている彼女と鴫沢寛が現れた。茫然と、無表情に、まっすぐ虚空を眺めている彼に膝を寄せて、彼女が何か話している。彼の手をとり、自分の膝頭に置く。彼女はいつもの淡いクリーム色のブラウスと黒いタイト・スカートを着けているが、黒いストッキングははいていない。彼女は彼の右手を握りしめ、黒いスカートの中にもぐりこませる。
「わたしをどう思ってるの?」と彼女がきく「わたしのここが好き?」
「⋯⋯」
「黙秘する? じゃ、ここは?」
彼女は淡いクリーム色のブラウスのボタンをはずし、胸をあらわにする。大きなふたつの乳房と薔薇色の乳首が彼を威嚇するように震える。彼女はベージュのブラジャーさえ着けていない。
「これは彼女ではなく、あなたの娘じゃないのか?」ぼくは画面の中の油河氏を睨みながらいう「ここで天国膏を塗っているあなたのマゾヒストじゃないのか?」
「彼女はわたしよ」背をかがめてふくらはぎのあたりに天国膏をすりこんでいた彼女がいった。
「わたしの娘はマゾヒストであり」と油河氏がいった「わたしの娘は彼女である。彼女はマゾヒストだ」
画面の中の彼女は書記長室のソファの上で跪き、彼に鞭を渡そうとしている。彼女はもう淡いクリーム色のブラウスと黒いタイト・スカートを着けていない。それはテーブルの上に投げ出されている。彼女は蒼白い顔をしていない。彼女の頬に赤みがさしているのが見える。彼女は三十過ぎの女には見えない。彼女は十七歳の少女(ドウ)に見える。
「わたしを引き裂いてよ」と彼女がいう「わたしも女子生徒(ドウ)のひとりであり、すべての女子生徒はあなたに殺されることを望んでいるのよ。だからわたしはあなたに殺してほしいのよ」
「わたしを引き裂いてよ」と目の前の少女(ドウ)がぼくにいった「わたしを殺してよ。わたしも女子生徒(ドウ)のひとりであり、すべての女子生徒(ドウ)はあなたに殺されることを望んでいるのよ。だからわたしはあなたに殺してほしいのよ」
彼女はすでに天国膏を塗りおわっていた。ぼくと十二個のモニターのあいだに立ち、ぼくの視界をふさいでいた。薔薇色の乳首と大きな乳房がぼくを威嚇していた。恥毛をきれいに剃ったなめらかな恥丘の起伏がぼくを難詰していた。ぼくは肘かけ椅子の上で視界を遮られていることに怯えていた。ぼくは右手をつきだし、震えながら耐えていた。彼女を全身で拒絶していた。彼女は諦めたようにぼくから顔をそむけ、身をかがめて床から黒い布を拾いあげた。
「もういくわ」
「どこへ?」
「鴫沢寛のところよ。あなたではなく⋯⋯」
「ぼくは自由を愛し、彼は自由を愛さない。ぼくは⋯⋯彼じゃない」
「わたしは、わたしを殺さないあなたじゃなくて、わたしを殺してくれるあなたのところへいくのよ」
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