イージーライターのつぶやき

ちょっとマニアックな職業ライター兼アマチュア小説家が、作品と日常生活のつぶやきを紹介します。

粘膜で触れる世界

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アブノーマルな文学的感性によるエッセー・社会評論
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小説のメモから

豊崎くんは犬を連れている。全裸のまだ毛も生えてない小さな雄で、首輪を引っぱられ苦しそうにおれを見上げている。自分が欲情していることにすら気づかない子犬。
「ああ、これですか。教室は塾の教師に飼われたがる犬だらけですから。こいつなんか自分からプロレスごっこするふりしてすり寄ってきて」

小学生を家畜化する塾教師豊崎くん。
家畜化にさほどのテクニックはいらない。傷つきやすいガキの神経をちょっと逆撫でしてやればいいのだ。
すぐにガキどもは自分が欲情しているとも知らずに支配者を求めてすり寄ってくる。
自分から服を脱ぎ捨て、口にマジックインキやぞうきんを押し込まれるのをねだるように口を大きく開けてよだれをたらしながら豊崎くんの汚れた指を舐める。
犬どもを完全に支配するには、一匹を思いきりえこひいきしてやるだけでいい。
つまりあごをつまんで口をさらに大きく開けさせ唾をたらすとか、
足首をつかんで逆さ吊りにしてペニスを食いちぎってやるとか。
たったそれだけで犬どもは「ああ、先生、先生、ずるい、ぼくも」と口々にわめきながら完全支配と処刑を求める。

洪水

9月3日

一日中原稿執筆と企画書書き。
夜、自由が丘セントラルで着替えて駒沢公園を3周ジョグ。戻ってプールで500mだけ泳ぐ。運動不足なのに仕事で内臓が疲れてしまってスタミナがなくなっている。身体はぶくぶく太り続けているのだが。
セントラルで代理店D社のSと会う。今年から近所に越してきたので、スポーツクラブ仲間なのだが、相変わらず仕事はくれない。

Sは土日に1〜2時間ずつ走っているだけなのに、身体がだんだん引き締まってきた。こちらは週に7〜8時間は運動しているのだが太り続けている。数年前まで週15時間運動していたから、身体がそれになれてしまっていて、その半分では運動不足なのだ。

アメリカのハリケーンは「カトリーナ」という可愛い名前とは似ても似つかない凶暴さで、南部一帯を破壊しつくした。木造家屋だけでなく、ビルまでが倒壊し、橋が大地震のようにずたずたに寸断され、崩れ落ちた。アメリカは国土に合わせているのか、台風のスケールも桁違いにでかい。

ニュースの映像を見ていると、洪水に見舞われた町で黒人ばかりが右往左往し、集団で略奪に走り、警察(警官も黒人だ)に追い散らされている。たまたま黒人がおおい地域だったのかもしれないが、人種の住み分けは決して公平ではないんだなという印象を受ける。

日本でこういうことがあったら災害地は無法地帯と化して略奪・暴行が横行するだろうか?少なくとも阪神大震災ではそういう事態にならなかった。これは誇っていいことかもしれない。これは少なくとも日本が不満が潜在的に充満している社会ではないということだ。それは海外移民をできるだけ排除しようとする島国政策のおかげかもしれない。先進国として決してフェアな政策とは言えないが、アメリカ南部の洪水を見ると、理想論ばかり言ってられないという気持にもなる。

ツチウナギ

9月1日 新作小説のメモから

 ツチウナギは自分を全能と感じるための学習塾で、母親との合体状態を維持したがる生徒たちに幼児アナル狙いの教師たちがRBガスをこっそり嗅がせることによって生じる複合反応もしくはその症状のことだ。

 重症患者はウナギと極めて似ていて、ときには大串専門の高級ウナギ割烹専門の卸商に品薄状態の穴埋めに捕獲されてしまうこともある。全能系の幼児は皮が薄くて身も柔らかく、皮下脂肪は甘い玉子焼きの味がする。

 通常のウナギとツチウナギの外見はほぼ同じだが、ツチウナギは針葉樹の落ち葉や芝生など皮膚を刺す環境が好きで、落ち葉が地面を覆ったヒマラヤスギの木立や公園の緑地に出現する。身をくねくねさせてすばやく逃げるので捕まえるのは容易ではないが、土に潜るのはそれほど得意ではない(皮膚のぬるぬるしたゼラチンが邪魔をするのだ)ので、数人で囲い込み、大きな網ですくえば捕獲は可能だ。

 ツチウナギは抑圧的思考で集中力を何倍にも高めることができるので、10歳までに大学もしくは修士課程相当の知識をもっている。中には相当な野心家で、世界的に通用するビジネスモデルや半導体の集積度を飛躍的に高めるプロセスなど画期的な技術を考え出したりもするが、自分でベンチャーを立ち上げたり、研究プロジェクトを仕切ることができないので、やむなく学習塾講師のような幼児アナル系の変態大学生、大学院生に飼われながら、彼らを動かすしかない。

新宿の裸のランチ

8月22日

 午前中O社の新しい半導体事業について原稿書き。

 送られてきた資料に初めて見る用語や事業分野が出てきて戸惑う。IT関連、特に特殊な半導体はちょっと目を離していると、様相が一変してしまうので、ぼくみたいな何でも屋にはきつい。

 Yahoo! で検索をかけてみたが、聞いたこともない会社のオフィシャルサイトばかりラインナップされ、どこのサイトもいきなりわけのわからない宣伝文句や製品のアピールばかりで、技術の初歩的なことは説明していない。半導体を買うのは技術的なことがわかっている会社の担当者だ。初心者向けの説明などじゃまだというわけか?

 結局O社のホームページに行き、検索をかけて関連技術・関連製品のページを見たら、けっこうくわしい説明が載っていた。参考になったのは社員が書いた論文だ。たぶん学会や社内の勉強会、技術雑誌などで発表したものだろう。そのPDFがずらりとならんでいて、簡単にダウンロードできるようになっている。
 素人にはちょっと難解だが、その技術がどんな用途に使われていて、どういう点が重要なのかといったことはわかった。
 さすがO社は老舗だけに、いい加減なベンチャーとちがって、こうした技術情報の管理がしっかりしている。顧客企業も最先端の半導体技術に詳しい人ばかりとはかぎらないから、こういうていねいな情報提供は助かるだろう。

 午後、新宿に出る。
 西口の地下道を新都心に向かっていると急に腹がへってきた。このところ水分のとりすぎで食欲がなく、さっぱりしたものが食べたいと考えていたら、寿司屋のランチの看板に980円の海鮮丼の写真が出ていて、なかなかうまそうなのでビルに入ってみた。

 長いカウンターだけの店なのだが、ガラス戸越しにのぞくと席にはひとりの客もいない。板前らしい男がレジで顔をしかめながら電話していて、こちらをいやな目つきでにらんだ。人殺しの現場を見つかってしまったような形相。一気に食欲が失せて逃げ出す。

 結局その少し先にある中華の「謝朋殿」で1000円ランチ。豚の冷しゃぶと鶏野菜炒め、スープ、杏仁豆腐。どこといって特色のないサラリーマン相手の大型店だが、いつ行ってもまともなものを食べさせてくれる。1時半近くだというのに遅めの昼食をとるサラリーマン、ランチタイムに外出できなかったOLなど、1人客がたくさん入っている。たぶん客が1人もいない寿司屋はよほどひどいものを出すのだろう。
 ランチを待ちながら「裸のランチ」を読む。別に洒落のためにこの本を持ち歩いているわけじゃないが、その偶然にひとりで笑う。
 麻薬の売人ブラッドレーが緑色に変色し、体から変な液を分泌しながら麻薬界のボスを食ってしまう場面がすごい。

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「親方、何でもしますよ、何でも」仕入れ係(注:ブラッドレーのこと)は緑色の顔をゆがめてぞっとするような微笑を浮かべた。「おれはまだ若いんだ。親方、かっとなったら、すごく強いんだよ」
 地区監督官(注:麻薬界のボスのこと)は吐き気を催してハンカチの中に顔をうずめ、弱々しく手を上げてドアを指さす。仕入れ係は夢うつつの表情で監督官を見ながら立ち上がる。彼の身体は水脈占い師の棒のように徐々に沈下し始める。彼は正面から小便しはじめる……
「よせ! よせ!」と地区監督官は悲鳴を上げる。
「しゅっ……しゅっ、しゅっ」
 1時間後、地区監督官の椅子の上でいい気分になっている仕入れ係が発見される。監督官の姿はあとかたもなく消滅している。

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 午後四時からの打ち合わせのため中央線で豊田に向かう。

 車中1994年の日記を読む。メキシコ日記。やはり大事なことが色々抜け落ちている。
 メキシコ・シティのあちこちで見かけた乞食女や、わけのわからない薬草をほんの少し白布の上に広げて歩道で売っていた老婆など。すべて先住民の女たちで、みすぼらしくうちひしがれた顔をしている。
 スペイン人による征服と先住民の屈服は今も続いているのだ。五百年前、「おまえたちの汚らしい神々の像を破壊しておれたちのマリア様を祀れ」と理解できない理屈を暴力的に押しつけてきたスペイン人の無神経さに、メキシコ先住民は茫然自失したのだが、その虚脱感は今もその子孫に受け継がれている。
 それこそがメキシコという国の核心なのだが、日記にはまるで触れられていない。たぶんその発見は現地で始まったにせよ、まだ種子のようなもので、言葉で表現できるようになるにはもっと時間が必要だったのだろう。

 自分の過去の日記を読み、それについて日記に書こうと考えているとなんだか自分の脚を食っていき伸びているタコになったような気分だ。

自警団員

8月20日

 バロウズが麻薬の助けを借りて手に入れた破天荒な言葉を、どうやって手に入れるか。
 肝心なのは愚かな努力をしないことだ。言葉はすでに自分のうちにあるのだから。あるいは自分たちのうちに。

 日本文学にとって最大の作品は天皇制であって、すべての文学作品はその周辺でものごとの核心から目をそらし、自分たちの臆病さ加減から目をそらすためのなぐさめにすぎない。欧米人が目をそらそうとしている核心にキリストとユダヤ教の神がいるように、現実から逃げ出すということそのものの中に天皇制は存在し、維持されている。

 ひそかに続行されている戦争について、その自発的な遂行者たち、膨大な日本人たちがひた隠しにしている価値観には、麻薬によって解放されるエネルギーを超える膨大な熱量がひそんでいて、ぼくらはそのメカニズムについて語るだけで文学を書くことができる。難しいのは分裂の自覚がない分裂病患者たちにそれを読ませることだ。暴露は決して理解につながらない。暴露し、分離する連中をやつらがどのように排除してきたかぼくらはよく知っている。共産主義者や変態、非国民……。

 だからやつらを納得させるには異端審問のように、こちらが分裂していることを認めるしかない。バロウズは麻薬の助けを借りたが、こちらには自己矛盾というシステムがついている。

しかし、「裸のランチ」の見事な言葉の仕組みにはほれぼれする。誰でも自分を破壊せずにこんなふうに書けるもんじゃない。

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 自警団員は精神分裂症患者としてがんばった−−−−
「おれは自分の外に立って影のような指であの絞殺をとめようとしていたのだ…… おれは幽霊だ。あらゆる幽霊が求めるもの−−−−肉体−−−−を求めている。これまで長いあいだ何のにおいもない空間の小路を通り抜けていたのだ。そこでは生命は単に無色無臭の死とはちがう……水晶のような鼻水と時間の糞と黒い血をこす肉のフィルターの入りまじったピンク色の軟骨の渦巻の中では、誰も生命を息づくことも、そのにおいを嗅ぐこともできない。
 彼は細長い法廷の物陰に立っていたが、その顔は麻薬のきれた(第一審のさいの拘留は十日間)実験的な原形質の肉体の中でうごめく幼虫的器官の渇望に引き裂かれてぼろぼろのフィルムのようになっていた。その肉体はそっと麻薬に触れたとたんに影のように薄くなってゆくのだ。

「裸のランチ」ウイリアム・バロウズ著 鮎川信夫訳 河出書房新社刊
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