イージーライターのつぶやき

ちょっとマニアックな職業ライター兼アマチュア小説家が、作品と日常生活のつぶやきを紹介します。

あぶない芸術鑑賞

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美術や映画など芸術関連のエッセーです
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東京から熱海は意外と近い。

自由ヶ丘から午前9:10の特急に乗り、
横浜で東海道線の快速に乗れば11:00前には熱海に着く。
しかも、交通費は片道1520円。

駅前にはすでに早咲きの桜が咲いていた。

お目当ての尾形光琳作「紅白梅図屏風」があるMOA美術館は、
急な坂を30分ほど登ったところにある。

約10年前、トライアスロン仲間と海岸沿いのリゾートマンションで合宿したとき、
(真鶴まで往復30kmのランニングをしたり、元気だったな、あの頃は)
最終日にこの坂をのぼって美術館まで行ったのだが、
紅白梅図は公開期間を過ぎていて、ごく一部の所蔵品しか見られなかった。

今回も歩いてのぼるつもりだったのだが、
ちょうどバスがいたのでつい乗ってしまった。

160円であっというまに美術館に着く。

モダンな建物だ。
長いエスカレーターをいくつも乗り継いで展示室までのぼっていく。
閉所恐怖症なので、
闇を抜けて天井に至るみたいな錯覚を起こしそうになる。

世界救世教という信仰宗教の施設だから、
こういうモダンな演出が好きなのだろう。

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東京国立博物館で「対決---巨匠たちの日本美術」展を見た。

運慶/快慶、雪舟/雪村、狩野永徳/長谷川等伯、長次郎/本阿弥光悦、俵屋宗達/尾形光琳、野々村仁清/尾方乾山、円空/木喰、池大雅/与謝蕪村、伊藤若冲/曽我簫白、円山応挙/長沢芦雪、歌麿/写楽、富岡鉄斎/横山大観と、日本美術のスターたちの作品を比較展示したオールスター美術展。

1人1人の作品数は多くないし、そのわりにその人の代表作が展示されているわけではないのだが、
作風を比較することで見えてくるものがある。

ぼくみたいに中途半端な日本美術ファンには、木喰や曽我簫白、長沢芦雪などは名前すら初耳で、
日本美術にもまだまだすごい作家がいるんだなとひたすら感心。

長次郎と光悦の楽茶碗、光琳デザインの紙に光悦が書を書いた作品など、テレビや画集では見ていたが、
実物を見てみると、その美しさにびっくりする。

長谷川等伯の松林図は10年ぶりくらいの再会だった。
この絵だけでもお金を払って見る価値がある。

狩野永徳の絵も実物は初めて見たのだが、なんだか粗雑な感じだ。
美術の素人である戦国武将をだまくらかして出世したはったり屋という印象を受けた。
まあ、この人の代表作は来ていないので、ここにある作品だけであれこれ言うのは失礼かもしれないが。

そもそもこの美術展を見に行ったのは、
大雅と蕪村の「十便帖」「十宜帖」の実物が見たかったからだ。

京都の金持ちが大雅と蕪村に、山村暮らしの10の楽しさというテーマを与えて描かせた、
ノート形式の、ちょっと漫画っぽい山水画。

ぼくはずっと大雅と蕪村が友達で、お互い切磋琢磨しながら腕を磨いていて、
この作品もそういう交流の産物なのだと思っていたのだが、
展示の説明を読むかぎりでは、
二人のあいだに交友関係があったわけではないという。

この作品は川端康成が終戦直後に新聞社から数千万円の借金をして買った美術品の一部だ。
今で言えば何億円だろうか。
川端はその借金のために、ろくでもない小説を書きまくらなければならなかった。
それでもこの作品は彼にとってどうしても必要だったという。

川端という人はもともと生と死の隙間を漂いながら、
危ない精神状態で美を追究した人だったから、
自分をこの世につなぎとめておくためには、
どうしても強いパワーを持った美術品を手許に置いて愛玩する必要があったのだろう。

それでも晩年はノーベル賞などもらって国際的な名声を得ながら、
情緒不安定がつのり、最期はガス自殺してしまった。

そういうエピソードが背景にあるので、
なおさらこの「十便帖」「十宜帖」を見てみたかったのだ。

ごく小さな作品だし、ノート形式だから、
ガラスケースの中で、1ページしか見ることはできないので、
実物を見たからといって、それほど満足感があるわけではないのだが。

そばに10枚ずつ計20枚の精巧なコピーが展示されているので、
絵自体はそれを見れば足りる。

これまで何度かテレビで紹介されているのを見ているが、
その温かさ、なんともいえない味わいがぼくを惹きつける。

しかし、こうして展示されているのを見ても、ただもどかしいだけだ。
美術品とは、所有して、部屋に飾り、
あるいは好き勝手に手にとって眺めてはじめて味わえるものかもしれない。

特にこのノート形式の作品は、
手にとってゆっくりめくらなければ、味わいを堪能することはできない。

川端はそういう贅沢を味わったのだと思うとちょっとジェラシーを感じる。
彼が手に入れてから、この作品は国宝に指定された。

もうオークションに出品されることはありえないのだろうが、
何億円も払ってこういうものを手に入れて、
自宅で舐め回すように眺めることができるなら、
大金持ちになってみたいという気がしないでもない。

※写真は朝日新聞7月8日の告知記事から

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ゆうべ、夜中に眠れなくなり、
ベッドから出てちょっとだけ酒を飲んだ。

真っ暗な部屋で、照明代わりにテレビをつけ、
ジミ・ヘンドリクスのライブのビデオを見た。

ぼくにとってジミ・ヘンドリクスは永遠のスターだ。

彼が27歳で突然死したのは、高校2年の夏の終わり、1970年の9月だった。
その翌月にはジャニス・ジョプリンが死んだ。

少年期のぼくのあまり深くも広くもない音楽体験は、
そこでストップしてしまったといっていい。

60年代から活躍していたレッドツェッペリンやディープパープル、ピンクフロイドなど、
様々なアーティストがその後のロックを進化させ、
おかげでロックは音楽のジャンルとして、娯楽産業として大きく発展したのだが、
ぼくは70年代以降のロックをほとんど聴いていない。
音楽そのものをあまり聴かなくなってしまったと言った方がいいかもしれない。

ぼくが初めてジミ・ヘンドリクスを知ったのは、たぶん1967年の秋か冬、
音楽好きの友達の家で出たばかりの「紫の煙」を聴いたときだったと思う。
ぼくにとって音楽の季節はそれから1970年の夏までの3年足らずという、ごくごく短い期間だった。

エリック・クラプトンのクリームや、ジム・モリソンのドアーズが、ビートルズと一緒に、ラジオのヒットチャートを賑わせていた時代だ。

なぜか文学はチャールズ・ディケンズやビクトル・ユゴーといった古いものばかり読んでいたし、
美術もレンブラントやゴヤの大規模な展覧会があった影響なのか、古いものばかり見ていたのだが、
音楽だけは流行り物好きの友人たちに影響されて、リアルタイムのものばかり聴いていた。
あまりこだわりがなかったということなのかもしれない。

その後も、文学と美術は自分の好みであれこれ選ぶようになったが、
音楽だけは60年代末の3年間で止まったままだ。

このあいだ友人の家でジミ・ヘンドリクスの話をしたら、
40代の奥さんに、「なんでそんな暗いの聴くの?」と言われた。
ぼくは10代ジミ・ヘンドリクスが暗いと感じたことは一度もないので、
正直いってびっくりした。

14歳で初めて「紫の煙」を聴いたときから今に至るまで、
彼の曲は一瞬でぼくの硬直した神経をときほぐしてくれる癒やしの音楽だ。
数字の額やスピード、効率がすべての資本主義のルールを鵜呑みにして自分を痛めつけている、自縄自縛の状態から解き放ってくれる解放の手段でもある。

ライブの演奏そのものはやたらと粗くてミスが多いけれども、
そんなことはこの解放感にくらべればなんでもない。

初期のジミ・ヘンドリクスは「エレクトリック・レディ・ランド」というアルバムで、
ちょっと前衛的というか、プログレッシブな音楽を追求してみたが、
たぶんスタジオで作り込む緻密な音楽に行き詰まったのだろう、
そのうちライブばかりやるようになった。

ライブの演奏はほとんどすべて録音していたというから、
彼にとってライブは消えモノではなく、自分にできる最高の表現だということ意識していたのだろう。

彼の活動期間は、フラワーチルドレンやヒッピーたちの運動と重なっている。
世界中に広がった政治的な反政府運動とも。
あるいは学術的な世界に広がった色々な改革の動きとも。

そこには色々な思想の主義主張が混じり合っていたが、
今から思えば、産業革命以来、様々な紆余曲折を経ながらも着々と進行する、
経済社会の進歩とか進化に胡散臭いもの、
人間を抑圧するものを感じ取った人たちの抵抗運動だったのだ。

敵は全体最適へと進んでいくシステムだから、「人間」といったあいまいな概念で戦って勝てるようなものではない。
抵抗する人たちも、生活の根底ではそのシステムの一部なのだ。

だからそうした二重生活を送る一般人にささやかなカタルシスを提供するアーティストたちが必要だったし、今も必要なのだろう。

70年代以降、カタルシスは社会システムの一部に居場所を見つけ、正面切っての抵抗運動は姿を消した。
ぼくの友人の奥さんのように、70年代以降に物心ついた人たちの多くは、そうした抵抗運動を暗くて重苦しい過去の遺物としか感じないのだろう。

しかし、ジミ・ヘンドリクスやジャニス・ジョプリンの音楽は、今でもCDショップで手にはいるし、テレビやラジオでも耳にする。
聴いているのは懐古趣味のおやじだけだろうか?

家庭用洗剤でつくる毒ガスで自殺したり、衝動的に人を強姦したり殺したりするような、
一種の悪霊に取り憑かれた連中には、
60年代の殉教者たちが残した音楽が、精神的なガス抜きになるのではという気がするのだが。

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午後、時間があいたので映画『パフューム』をみた。

天才的な嗅覚の持ち主が、究極の香りを女性の肉体に発見し、
その香りを香水にするために次々と殺人を犯す。

捕らえられ、群集の前で十字架の刑に処せられかけるが、
女体から抽出した香水が奇跡を起こす。

群集が香りに酔って彼を天使とあがめ、
広場で次々と服を脱いで抱き合いはじめる。

難を逃れた主人公はパリに戻り、
ありったけの女体香水を自分にかけ、この世から消えてしまう。

18世紀の汚いパリの町や南仏の香水の町グラースが見事に再現されていて、
夢を見ているような気分にさせてくれる。

しかし、物語には今ひとつ説得力が欠ける。
女性を大量に殺し、最後は自分をもこの世から消滅させてしまう主人公のモチベーションが、
悲惨な生い立ちや匂いの魔力というだけでは、十分な普遍性を持たないからだ。

世界中で1500万部売れたという原作には、
たぶんその辺の表現が十分にできているのだろう。
そうでなければそんなに売れるわけがない。

映画から推測するかぎり、それはキリストの生涯のパロディであり、
現代社会と現代人の精神構造の秘密に触れたものであるらしい。

原作を読んでみようと、大きな本屋に寄ってみたが、影も形もなかった。
映画のパンフレットには原作を訳したドイツ文学者の文章が載っていたから、
たしかに翻訳はされているはずなのだが、
映画の封切りに間に合わなかったのだろうか?

普通、こういう原作本は映画とタイミングを合わせて、本屋に平積みされるのだが。

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先日知り合いが貸してくれたDVD3本の中から、ヤン・シュヴァンクマイエルの短編集を見た。ほんとは一番最初に見たのだが、あんまり自分の感覚に近いので感想としての言葉が見つからなかったのだ。

若い頃からの短編映画を集めたものなので、作品は短いもの、長いもの色々だが、貫かれているのは肉体を含めた人間という存在の危なさ、弱々しさ、あるいは存在の様式に対する攻撃の衝動、自分への破壊衝動だ。

映像の中で食べ物から家具から衣服から人間の肉体まで、日常的に存在するあらゆるものが、アニメ手法によって変形し、暴れ、消滅する。

ペレストロイカ後の作品らしい『スターリン主義の死』では、スターリンの胸像が外科手術され、顔の中から血まみれの内臓が現れ、その中から新たな政治家の胸像が現れる。

ぼくは今まで知らなかったのだが、シュヴァンクマイエルはチェコの映像作家らしい。だからというわけではないが、その映像にはチャペック(『山椒魚戦争』で知られるSF作家)やミラン・クンデラ(『存在の耐えられない軽さ』の作家)に通じる陰鬱さと、抑圧された人間独特の鬱屈したユーモアがある。

社会批判、政治批判を読み取るのは簡単だが、それは概念的なモチーフであって、映像の本体ではない。映像としての魅力の核心は、その変幻自在さにあるのだ。人も物もそれらしい動きは一切しない。社会的な概念を剥ぎ取られ、むき出しになった存在へと変容し、脱皮し、消滅し、復活する。普通の映画作家は苦労して動きを企画構成するが、シュヴァイクマイエルは存在自体の増減や変形、変容によってその本質をむき出しにする。

ぼくは物事の隠れている部分を暴くには、言葉の方が映像より自由がきくと考えているのだが、シュヴァンクマイエルのやり方を見ていると、自分がまだまだ既成概念にとらわれていることに気づいて愕然とする。小説『PELOTA』でやろうとしたのは、小説らしい構成や流れから自由に、かといって20世紀の「前衛小説」みたいに難解に流れずに、時間と空間を自在に行き来することだったのだが、結局10年かかってもうまくいかなかった。『夢のミンチ』はシーンを断片化することで、もう少し自由な展開ができたが、そのかわり内容はおそろしく幼稚なものになってしまった。

限定された存在である自分を自由にしようとする努力には所詮自己矛盾があるのだ。


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