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ひさしぶりに東横線で渋谷に出たら、
駅に興福寺国宝展の巨大ポスターが貼ってあった。
目玉はこの阿修羅像。
展覧会の名前もズバリ「国宝阿修羅展」になっている。
中学時代から美術や歴史の教科書で慣れ親しんできた奈良時代の傑作だが、
ちょっと怒った少年の半裸すがたがなんとも美しくなまめかしい。
昨日の新聞によると、初日は開場前に800人の行列ができたという。
写真で見ると若い人が多いようだった。
海外ブランド店やバーゲンだけでなく、
こういう美しいものに列を作る若い人たちもいるのだとわかってちょっとうれしい。
ぼくは去年の夏、奈良の興福寺国宝館で見ているのだが、
これから6月まで2カ月強、東京で公開されるらしいから、
たぶんその間、一度は足を運ぶだろうな。
今回の国宝展では阿修羅像以外にも、
ファンタスティックなのにどこかリアルな天平時代の仏像がいくつも展示されるとのこと。
法隆寺にある、百済・高句麗系のちょっとぶさいくな仏像も衝撃的な迫力だが、
時代が下って唐/中国との交流が軌道に乗り、
当時の文明開化が進んだ時代の仏像には、
飛鳥仏にはない洗練された美しさがある。
本場中国にはこの手の仏像がゴロゴロしているんだろうか?
そういえば中国の仏像のことはあまり知らない。
北京・台北両方の故宮博物館を紹介したテレビ番組も何度か見ているのだが、
翡翠の工芸品とか陶磁器とかが記憶に残っているだけで、
仏像を見た記憶はない。
東南アジアやパキスタン、アフガニスタンなどの仏像も写真やテレビで知っているだけだが、
なんとなく漫画的で美しさを感じない。
というわけで、漠然と日本にしか美しい仏像がないみたいな思い込みに陥っているのだが、
世界を探せばもっと美しい仏像が見つかるだろうか?
最近、仕事関係の女の子に仏像の話をしたら、
「地味!」の一言で片付けられてしまった。
まあ、ぼくも若い頃は仏像の写真を撮る写真家や、
「古都巡礼」みたいな本を書く文筆家のことを、
地味なじいさんだと思っていたからしょうがないのだが、
阿修羅像を見るために開場前から列を作る若者たちがいるところを見ると、
ぼくみたいに歳を食ってから仏像の美しさに気づくバカばかりではないようだ。
まともな美意識には年齢など関係ないのだろう。
法隆寺の百済観音がパリで公開されて、
フランスにセンセーションを巻き起こしたという話は、法隆寺探訪のときに紹介したが、
美しいものには国も民族もないのだ。
この阿修羅くんもルーブルで公開したら、
フランス人が行列を作るだろうか。
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