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●県道を走るティエリーの車の中
第二次大戦中の自慢話をするアンリ。
ミシェルを後部座席に移動させ、彼女に拳銃を突きつけている。
アンリ「おれの管轄区域だけでレジスタンスを128人殺した。ほかにその協力者を69人。そのうち半分はこのルガーで撃った。やってみるとわかるが、人を一度殺すと、なかなかやめられないもんだよ。特に、自分が特権を与えられていて、殺しになんの罪も問われないとなるとなおさらだ。命乞いをしに来る女房や娘は片っ端から犯したっけ。それでもおれは結構もてたよ。町じゃ一番の権力者だったし、その頃はなかなかいい顔をしてたからな」
●県道
近くに人家も見えず、車もあまり通らない閑散とした田舎道。
日本人5人組、車で道をふさいでいる。
そこへやってきたティエリーの車、停止する。
日本人男4人、モデルガンを突きつけ、ティエリー、ミシェル、アンリを車から降ろす。
テツ(日本語で)「手を挙げろ!」
最初から手を挙げているティエリー。おずおずと手を挙げるミシェル。ルガーをポケットに突っ込んだままのアンリ。
ティエリー(ミシェルの陰に隠れようとする)「金は彼女が持ってるんだ」
ハイド(手振りで示しながら日本語で)「じじい、手を挙げろって言ってるだろ!」
アンリ「小僧、撃ってみろ」
サクラ(日本語)「何言ってんだ、このじじい」
ケン(日本語)「わかんねえよ」
アンリ「おもちゃと本物の区別がつかないほど耄碌しちゃいないんでね。本物の拳銃っていうのはこういうもんだ(ルガーをポケットから出す)」
ミシェル、銃撃戦が始まると思いこみ、おもわず両手で目をふさぐ。
彼女を楯に弾を避けようとするティエリー。
バン!
アンリがルガーでケンのモデルガンを撃ち落とす。
カスミ(日本語)「また先客がいたんだわ。なんてついてないんだろう!」
●渓谷
セーヌ川を見おろす崖の上に広がる草原。
眼下に小さな町。対岸に古城の跡。
遠くで牛の群が草をはむ。
草上の昼食を終えたラウラ、K、ディディエ、ジャネット。
ラウラ(酔っている)「さあ、子供たち、食後の運動の時間よ。どこかへ遊びに行ってらっしゃい」
動かない子供たち。
ラウラ(服を脱ぎ始める)「大丈夫よ、置いてきゃしないから。おばさんは大事な治療をしなきゃいけないの」
K「やめろ」
ラウラ(すっかり下着姿になる)「2時間後にもどってらっしゃい。それ以上遅れたら置いてくわよ」
K「やめろ!」(ラウラに平手打ちをくわえる)
倒れたラウラ、Kを見上げる。眼に狂気の色が宿っている。
ジャネットが泣き出す。
肩を抱いてやるディディエ。
ラウラ(起きあがりながら)「さあ、テロリスト先生、治療を始めるのよ。無事にこの国から逃げ出したかったら、約束を守ることね。あなたを警察に突き出すなんて簡単なんだから」
K、しばし絶句してラウラを見つめる、おもむろにポケットから拳銃を抜いて彼女の顔に突きつける。
K「治療を始めましょうか、奥様? 」
K、ラウラの顔をもう一方の手で平手打ち。
鼻血を出して倒れるラウラ。
K、ラウラに馬乗りになり、何度も顔に平手打ち。彼女が逃げだそうとするのをつかまえて、腹に蹴りを入れる。
K(殴り続けながら)「これが私の最新式の治療です。いかがです? 奥様には一番効果的だと思うんですが」
倒れたラウラ、ぐったりと動かなくなる。
ジャネット(泣きながら)「死んじゃったの?」
ディディエ「正義の味方が魔女を退治したんだ」
ジャネット「女性をぶつ人は嫌いよ」
呆然と立ち尽くすK。
ゆっくりと起きあがるラウラ。鼻血を流し、腫れ上がった顔。
しかし可愛らしい、幸福そうな表情になっている。
ラウラ(Kを見上げて)「先生、とろけそうですわ。さすが名医ですわね」
ジャネット「魔女はおばちゃんから出ていった?」
ディディエ「まだみたいだ」
ラウラ「いっそのことその拳銃で私を撃ってくださったら、治療も完全に終わりますのに」
K「それは海で……」
●渓谷
ラウラたちが昼食をとった草原の近く。
同じ町、同じ教会が見える。
サンドウィッチをかじりながら歩くティエリーとミシェル。
ミシェル(アンリにもサンドウィッチを勧める)「食べない?」
アンリ(顔をそむける)「いらん。胸がむかつく」
ティエリーとミシェル、崖っぷちをブラブラ歩いていく。
アンリ、辛そうに腰を下ろす。
アンリ(ルガーをちらっと見せながら)「あんまり遠くへ行くなよ」
互いに口を利かないティエリーとミシェル。
ティエリー、立ち止まってミシェルを先に行かせる。
ミシェル、ティエリーの方を向いたまま後ろ向きに歩く。
ティエリー「前を向けよ。落ちるぜ」
ミシェル「さっき私を殺そうとしたでしょ」
ティエリー、立ち止まる。
ミシェル「私の陰に隠れて……私が撃たれればいいと思ったのよ」
ティエリー「どうせ僕はいくじなしさ」
ミシェル「私と結婚するのがそんなに恐い?」
ティエリー「言ってる意味がわからない
ティエリー、少しずつミシェルに近づいていき、抱きしめ、キスする。
ふたりとも脚に力を入れている。
じりじりとミシェルを崖の縁に押していくティエリー。
突然、ミシェルがティエリーの髪をつかんで体をひねる。
体が180度回転し、今度はティエリーが落ちそうになる。
その場にしゃがみ込むティエリー。
よろけて倒れるミシェル。
息を切らしながら見つめ合うふたり。
アンリ(いつのまにかすぐ近くに立っている)「おふたりさん、ラブシーンはそこまでだ」
●峡谷
昼食の後始末をして立ち去ろうとするラウラ、K、ディディエ、ジャネット。
Kと子供たち、童謡を歌っている。
合唱「ヌ・プルール・パ・ジャネット・アラジンポンポン・タガダップェップェッ
ヌ・プルール・パ・ジャネット・アラジンポンポン・タガダップェップェッ
ヌ・プルール・パ・ジャネット、ヌ・トゥ・マリユロン!」
原詞(Ne pleure pas Janette ,a la zim bom bom, tagada pouet pouet,
Ne pleure pas Janette ,a la zim bom bom ,tagada pouet pouet,
Nous te marierons!)
訳(ジャネットちゃん泣かないで、アラエッサッサ、ホイサッサ
ジャネットちゃん泣かないで、アラエッサッサ、ホイサッサ
僕らが結婚してあげるから!)
前方に、日本人5人組が立っている。
サクラ(日本語)「またピストル持ってんじゃねえだろうな」
ハイド(日本語)「大丈夫さ。今度は子連れだ」
テツ(日本語)「金持ちみたいだし」
ケン(日本語)「いくぞ」
日本人4人(一斉にモデルガンを構え)「手を挙げろ!」
K(ラウラと子供たちに)「伏せろ!」
Kとラウラ、それぞれ拳銃を取り出し、撃ち始める。
日本人たちの手からモデルガンがはじき飛ばされ、服に穴があく。
逃げ出す日本人5人組。
サクラ(日本語)「やっぱり持ってんじゃねえか!」
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