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6月11日 コルドバ〜マドリッド
(2度目のマドリッドでは写真をたくさん撮ったはずなのですが、ファシスト政権の呪いかデータがなくなってしまいました。それで今日はまた写真なしです。同じくスペイン旅行記を連載している kohki1205 さんのブログ「落書き日記」に、新幹線AVEやマドリッドの写真がたくさんありますので、よかったらそちらを見てください。リンクはぼくのお気に入りリストの一番上にあります)
旅の中の日常
またもや空から雲は消え、暑い1日が始まろうとしている。11時41分のAVEに乗り、マドリッドに向かいながら日記を書いている。静かで揺れないAVEだから、キーボードがたたきやすい。テーブルも大きい。この点は日本の新幹線よりはるかに上だ。通路の上には飛行機みたいにモニターが並んでいて、映画などをやっている。
朝、Ironmanlive.comをのぞいてみたら、アイアンマン・アジアのリザルツが出ていた。昨日から速報をチェックして、仲間のレース展開を分析したり、情報を日本のトライアスロン仲間にメールを送ったりしている。
ランナーズ編集部から来週の取材日程について問い合わせがあり、スケジュールが重ならないように、別件の仕事のブッキングをしている代理店にメールで問い合わせ。昨日は「トライアスロン・ジャパン」誌から原稿のデータを消してしまったので送り直してくれとのメールがあり、データを送った。ハードディスクに過去一年間の仕事の原稿を入れたままなのだ。もちろん日本の仕事場のMOにバックアップはとってあるが。
取材ノートや資料などはさすがに持って来れないが、このiBookさえあればある程度日本にいるのと変わらない作業ができる。インターネットの威力を痛感する。このスペイン便りだって、リアルタイムで日本の友人たちに送り、そのリアクションを受け取ることができたからこそ、ここまで勤勉に書きつづけられたのだ。これまでも海外に出るたびに、長い手紙を書いてきたが、今回みたいに毎日膨大な文章を書き送ったことはなかった。しかも原稿をこちらに保存し、手直しもできるわけで、日記の体裁はとっているけど、実際にはある程度エッセーのつもりで書いている。もっと日本と日本語を忘れて旅に集中した方が実りは大きいという気がしないでもないが……。
既視感のマドリッド
1時半マドリッド到着。11日前にも泊まったホテル「レヘンテ」にチェックイン。古くてそっけないが、値段が安くてしかもセイフティーボックス、エアコン、バス、電話、テレビなど必要にして十分な設備がそろっているホテル。パリで定宿にしている「ルイジアーヌ」にどこか似ている。
海外旅行ではその国の首都に入り、各地を旅行してまた首都に戻ってくるケースが多いが、僕はよほど気にくわないホテルでないかぎり、最初に泊まったホテルにもう一度泊まることにしている。その国各地を回ったあと、自分がどれだけ変わったかが、同じホテルに泊まり、一度歩き回った街をもう一度歩き、同じ店で水などを買ってみることで実感できるからだ。最初にその国に着いたときの戸惑いは、たった10日程度の旅で懐かしさに変わっている。僕はその変化を楽しむのが好きだ。それはその国で自分が何を得たかのテストでもある。
もうひとつ、僕が同じホテルに泊まる理由は、設備などの勝手がわかっていて使いやすいからだ。
たとえば電話。特に今回のようにインターネットを多用する場合、ホテルによって外線が0発信だったり、9発信だったり、ダイヤル回線だったり、プッシュホン回線だったりして、新しいホテルに着くたびにモデムや接続ソフトの設定を変えなければならない。
外線の接続法は説明が書いてあるか、なくてもフロントに問い合わせればすぐにわかるが、ダイヤル/プッシュホンは電話機の見た目はどれも一応プッシュホンなので、試してみないとわからない。同じプッシュホンでも0をダイヤルしてから外線への切り換えが機敏な交換機とのろい交換機があって、普通は「0,」にアクセスポイントの番号でいいのだが、鈍い交換機では「0,,」にしないと、凱旋につながらないうちにアクセスポイントの番号の自動入力が始まってしまう。
こういうことも今回はひとつひとつ試行錯誤して学んだのだった。
海外接続初体験の僕は、そもそも国によって電話のモジュラージャックの形状が違うというのも甘く考えていて、スペインがどんな形状なのかも調べずに出発日を迎えてしまい、どうせコネクターは成田の売店に売ってるだろうとたかをくくって出かけたら、成田の電気店ではなぜかスペインだけがなく、店のおやじにきいたら「スペインだけ特殊だからないんです」と言われた。
特殊ならなおさら置いておくべきだと思うのだが、そんなことを言ってみても、おやじは方をすくめるだけだ。売り場にはフランスやらイタリアやらのコネクターが並んでいて、どれも機動戦士ガンダムのパーツみたいに奇抜なかたちをしている。
後進国スペイン用のコネクターは一体どんな変なかたちをしてるんだろうなどと想像してみても、なんの役にも立たないので、とりあえず成田の第二ターミナルにある電気店の番号を調べて電話してみた。第二ターミナルの方が大きいから、品揃えもしっかりしてるかもしれないと思ったのだ。
ところが応対に出たおねえちゃんの返事は意外にも「スペインのモジュラージャックはアメリカや日本と同じですよ」だった。さっきのおやじが無知なだけだったのだ。さいわいうかつな僕でも家にいくつも転がっている電話のコードだけは持ってきている。たぶんイギリス、フランス、イタリア、ドイツが、アメリカに負けまいとプライドをかけて勝手な通信規格を導入したのに対して、西ヨーロッパ一の後進国スペインはすなおにアメリカに追随したのだろう。
それにしても、成田の電気店にはコネクターだけでなく、「海外接続ハンドブック」みたいなのや、電話回線のテスターなどいろんな器具が並んでいて、海外接続の難しさを予告していた。それならそういう本や器具を買えばいいのに、合計1万いくらもするし、荷物になるのであっさりあきらめて、成り行きに任せようと決めたのだった。
マドリッドでも事態は前途多難で、まずモデムやPPP(接続ソフト)の設定で四苦八苦し、あらゆる可能性を試してみたが、つながらない。そこで日本にいたときにダウンロードしておいたプロバイダの「海外ローミング案内」のページを開いて読み直してみると、なんと「海外ローミングサービスには申込が必要」とあるじゃないか! それならまず最初にそう書いてくれればいいのに、終わりの方にたった1行だけ書いてある。最初の方に「このローミングサービスが使用できるお客様は……」などの長い説明よると、僕が加入しているカテゴリーが入っているらしいので、何もしなくても接続できると早合点していたのだ。
そこでまず国際電話の回線を通じて東京のアクセスポイントにつなぎ、「海外ローミングサービス」の申込をした。ところが、今度は「クレジットカードの期限が切れています」という理由で申込を拒絶された。そんな馬鹿なと思ったが、番号をチェックしてみるとそれは二年前に期限切れになったときのカードの番号だった。
加入したときは、悪名高いプロバイダ「ベッコアメ」なので、すぐに解約しようと思い、支払方法はクレジットカードではなく現金振り込みを選択したのだ。僕がインターネットを始めた1995年にはまだろくなプロバイダがなく、独立系で激安のプロバイダとしてはほとんどここしかない状態だった。以前は接続が切れたり、話し中が多かったり、トラブルが絶えなかったのだが、加入者が増えて資金が豊富になるたびに設備を充実させるので、ここ数年はとくに不満もなく、おかげで解約するタイミングを逸していたのだ。
まあ、そんなことはともかく、新しいカードの番号を入力しようと財布を取り出したら、ついさっきフロントのセーフティーボックスに入れてきてしまったことに気づき、一度接続を切って下におり、カードを取ってきてまた国際回線で一からオンラインの申込をやり直し、無事に申込を終えて、初めてマドリッドのアクセスポイントに接続できたのだった。旅ではひとつひとつが戦いだ。
そんな悪戦苦闘も今では懐かしく思える。
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