イージーライターのつぶやき

ちょっとマニアックな職業ライター兼アマチュア小説家が、作品と日常生活のつぶやきを紹介します。

フランス紀行2002

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フランス紀行76

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2002年 6月14日

プチミラクル

朝、テレビをつけたらすでに日本対チュニジア戦が始まっている。
急いで近くのカフェに行き、テレビをつけてもらい、
朝食を頼む。

フランスが予選敗退しても、人々はサッカーのことになると親切だ。
カフェの主人はまわりの迷惑も考えず、ボリュームをめいっぱいにしてくれた。
「どうせアナウンサーの言葉は早口でわからないよ」と言っても、
「いや、雰囲気を味わうには音を大きくしないと」みたいなことを言う。

いつのまにか見知らぬ太った親父がカウンターにやってきて、
じっと試合を見ている。
日本のピンチやチャンスのたびに、こちらをみて笑う。

後半はホテルの部屋で荷造りをしながら見る。
今日はこのホテルを出てオーレイに移動する予定だ。

開始早々森島のゴールが入ったので、作業が進まない。
中田の2点めでようやく呼吸が楽になる。

下のサロンに降りて支払をすませる。
ホテルの女主人が「よかったね」と言ってくれる。
「僕はフランスも好きなんだけど」と言うと、
「彼らは四年前に優勝してから気持がゆるんだのよ。お金も入ったし、緊張感のある試合もあまりなかったし」と言う。
いかにもフランス人らしい感想。

フランス紀行75

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2002年 6月14日

牛乳しゃぶしゃぶ

留守番をする父の夢を見た。
神戸の夜景を見下ろす六甲山のマンション。
(実際の彼の家はそんなところにはないのだが)
100平方メートルもある広いベランダで、
僕は巨大なステレオのレコードプレーヤーで、
ジミ・ヘンドリクスのドーナツ盤に針を落とそうとして何度も失敗。
レコードをのせたターンテーブルは機械の奥の方にあり、
自分の手でアームを動かすことができない。
いくつかのボタンを操作して動かすのだが、
操作方法は複雑で、どうやってもアームの位置がでたらめに動き、
ときに外に飛び出して、針の先から釣り糸のようなものが垂れ、
それが渦を巻いて、ビニールコーティングされた螺旋状のコードに変わったりする。

部屋の中では父が留守番。
広大な部屋の片隅に小さなテーブルを置き、
(実際の彼の家はもっとはるかに小さい)
窓側と壁側の両方に置かれたテレビを同時に見ている。
テーブルの上にはイワシの缶詰など粗末な夕食。
僕はレコードをあきらめ、部屋に戻り、ソファに腰を下ろす。
いつのまにか父もとなりに座り、歯の抜けた口で何かつぶやいている。
耳を近づけると、
「おれの子供の頃はばあやが牛肉をミルクにくぐらせて食わせてくれたんだぞ」と、
繰り返している。
テレビの画面はちょうど牛肉の牛乳しゃぶしゃぶのクローズアップ。

フランス紀行74

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2002年 6月13日

湿地帯の言葉

ゆうべライターのOから、
こんな中途半端な文学紀行は読みたくないから、
もう送らないでくれとのメールが来たので、アドレスを削除する。
知り合いにお手軽なメールを送りつけて自己満足してないで、
もっと真面目に、出版できるようなものを書け云々……。

なるほど批判は当たっている。
このフランスだよりはパリの地下鉄のアコーディオン弾きが奏でる曲のように、
紋切り型の文学趣味に彩られている。
去年のスペインだよりにくらべて妙に内省的なのは、
ただフランス風の味わいを出したいからにすぎない。

批評というのは常に正しい側面を持っている。
Oにとって文学とは厳粛なものなのだろう。
多くの人が文学を厳粛なものと考えている。
彼らによって文学は支えられている。
その生真面目さが文学をつまらなくしているとも言えるが。

出版される文章、不特定多数に対して発せられる、
練り上げられた言葉にくらべて、
メールや書き込みで交わされるインターネットの文章は、
あまりにも未熟でいかがわしい。
それは湿地帯に湧いては消えるガスのような言葉だ。

メールによる言葉はやりとりによって変化する。
毎日僕はフランスだよりに寄せられる様々な感想に対してメールを返す。
フランスだよりそのものも、彼らの反応によって変化していく。
Oからのメールでこんなことを書いているように。
過去のフランスだよりもところどころ修正される。
受信者もそれぞれテキストを修正することができる。
一番否定的な修正は全テキストの削除だ。

MGも、登場人物兼受信者のひとりとして、
僕に対する反論を、配信先のかなりの部分を占める自分の知り合いたちに送り、
事実関係を修復することができる。
自分が知らない配信先も含めてすべての読者に呼びかけることもできる。
読者はそれに対して感想を送り返すことができる。
残念ながらパティシエ修行に忙しい彼女にそんな余裕はないが。

Oにとってはメール配信による紀行文の、
そういうあやふやなところがいやなのかもしれない。

彼の文学世界は70年代で時間を止めてしまっていると感じたことがある。
たとえばリチャード・パワーズを頭から否定するようなとき……。
ウイリアム・ヴォルマンやフィリップ・トゥサンを彼は認めるだろうか?

彼の感性は70年代の青年のように若々しいとも言えるが、
そのシステムはすでに死んでいるのだ。

過去のシステムの中で自分は若いと感じることによって、
人は老いる。
もちろん今との乖離の中に創造力が生まれる可能性はある。
老人の創造力。

メール配信を拒絶しなければ、Oはこんな僕の意見に反論することもできたのだが、
たぶん彼はそんなことを望みもしないだろう。
そんな低レベルなコミュニケーションから一体何が生まれるのかと言うかもしれない。
もちろん何も生まれないかもしれない。
少なくとも100年くらいは。

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2002年 6月13日

カルナックのレストランで隣のテーブルの老夫婦がしきりに話しかけてきた。
車であちこち案内してやるとか、うちに泊まれとか熱心に誘ってくる。
引退して、子供も離れていき、さみしいのかもしれない。
娘がベトナム人と結婚してパリにいるという。
とりあえず車でしか見て回れない場所を案内してもらうことにした。

フランス紀行72

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2002年 6月13日

僕の中には小人がいて、ときどき作品のアイデアをささやきかける。
彼は文章が苦手なので、書くのは僕の役目だ。

ここ十年ほど、彼のアイデアはすさんでいる。

両手両足のない性犯罪者、政府の要請で密かに微量の幻覚剤を小麦に混ぜて出荷している製粉会社、室町時代から続く小麦流通業者のギルド、数百人で江戸幕府を倒し、日本を征服してしまうペリーの艦隊、武装共産党に利用され、警察の拷問を受けるマゾヒストの娘、女性トライアスリートを箱に監禁している義足のアメリカ人トライアスリートとその妻……。

これらをひとつの小説にまとめろと小人は言う。

日本で仕事をしていても、スペインやフランスをうろついていても、
この課題が頭から離れない。


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