いろいろ絵日記--柘植 文--

・・・・・・・・・・↑「つげあや」です。漫画家です。

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ポックリといくときに

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先日、電車を待っていたら
横からお年を召したご婦人と紳士の声が聞こえました。

「○○さんはほんとお綺麗よねー」
「ねー、お人形さんみたいよー」
「そんなそんな!わはは」

ご婦人お二人が紳士の容姿をべた褒めしていました。
「そんなに美しいお顔なら私もぜひ拝見させて頂こう」
と、横目で紳士のお顔をみると、
お肌がつやっとしたまあまあの顔立ちの方でした。
正直、そんなに褒めるほどではない気がしたのですが
だからこそ、ほんとにうれしいだろう、と思いました。
あの場でポックリいったらお幸せでしたでしょう。

「死ぬ時はポックリ」というのは多くの人の願いだと思います。
そこにオプションとして
「異性に容姿を褒められながら」
というのがつくのはとても幸せだと思うのです。
それは
「優しいわよねえ」「男らしいわよねえ」
と中身を褒められるより幸せではないでしょうか。
なぜそんな気がするのでしょう。
「褒め」が単純だからでしょうか。
「優しいわよねえ」と言われても
「いやいや全然優しくなどないんですよ。長い人生、色々ひどいこともしてきまして…」などと
過去を振り返ってしまいそうです。
そこでポックリいってしまったら過去の悪行を思い出しながら死ぬことになってしまいます。
その点見た目への褒め
(「顔が綺麗」「外見がすてき」「太めの方って好みだわ」などなんでも)は
とりあえず一瞬は喜べませんか?
喜びの後すぐに
「いや、からかわれているんだ」や
「待てよ、こいつの美意識おかしいんじゃないか」と思ったとしても
一瞬パッと単純な喜びがくる気がするのです。
そんなことないですか?私だけですか?
その一瞬の喜びの瞬間にポックリ。
幸せな死に方だと思うのです。

紳士の容姿をべた褒めしていたご婦人方は
それを知ってらっしゃったのでしょうか。

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柘植 文
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