日本文化・武士の美術

日本刀は正に活人剣として受け継がれている。

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鎺(はばき)について

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 はばき【鎺 】鎺金(脛巾を付けたような形からいう)
 ‥瓩籠綸瓩覆匹療畤箸龍荳櫃砲呂瓩董鐔の動きを止め、刀身が抜けないようにする、鞘口の形をした  金具。
 ∈拂垢ご鏘颪硫縞に纒う金具                (小学館 国語大辞典)

 日本刀が柄・鞘に納められる際に必ずなくてはならない金具として、鎺があります。冒頭の.節は、その役割を簡潔に解説した辞典の引用ですが、もうすこし付け加えれば、鎺とは、刀身と柄を.休化し、鞘にぴったリ納める要になる金具で、これが刀身にきちんと八‥っていなければ、刀は、実用において充分な働きができないばかりか、鞘当たりの原囚にもなり、刀身にひけや錆をつけ刃区を傷めることにもなる、ということです。
 ところで、このように刀にとってはたいへん重要で、しかも常に刀身と共にあって見慣れた金具であるにもかかわらず、愛刀家のかたで鎺に関心をよせる人は残念ながらあまり多くないようです。そこで、鎺にも歴史があり、さまざまな種類と個性があることを知ってもらうとともに、その存在の意義も今少し理解されればと思い、少し述べてみることに致しました。
     
 形・大きさ・名称
 鎺の標準の大きさは、高さが刀身の尼巾の八割、すなわち一寸の元巾の刀で八分(24.2mm)、高くても八分五厘 (25.75mm)程度が限度と現在はいわれています。
「呑込み」の深さは、元重と同じになります。これは、見た目の美しさを一番とする、刀を鑑賞する時代、今日の標準の大きさで、昔の鎺は、実用のためもっと呑込みが深く、刃区の細った古刀のものは特に深くなっています。
 成り立ち
 長刀(太刀)からと短刀(腰刀)からの二つの流れがあります、長刀は、上古時代の太刀が(図A)のごとくで、下って藤原期の毛抜形太刀は、切先から挿入するものとなり刀身の刃区にある小孔に目釘で固定するようになっています。この方式は蕨手刀も同じです。ところがこれはじきに廃れ、むしろ腰刀・短刀拵の鎺の発達が、のちの種々の鎺の原型になっています。(図B)はその過程を表したものですが、まず呑込式の柄木が鎺の役を兼ねるという型式が最初にあり、次に呑口式という、柄気の末端を弧形に刳り残し鞘口を弧形に刳り込んで合致させる構造になり、そして、未だ柄木と一体ではあるが今日の鎺とほぼ同じ形の、鞘の内部に納まるもので薄い金属を着せるものとなりました。また、柄に金属の縁がつけられるようになると、鎺は縁と一体の形になり、やがて縁と分かれたとき、天井板の無い縁と台付鎺になりました。(図C)
 このように観てゆきますと、二重鎺や台付二重鎺には、発展過程の姿が色濃く現れていることがわかります。


真鍮・銀・金・四分一とさまざまな素材がありますが、これらすべてがはじめから使われていたわけではありません。まず、鎌倉か鎺の材質にも歴史の流れはあります鎺に用いられる金属には、鉄・山銅・素銅・赤銅・ら室町時代の、鎺が実戦に使われた刀とともに消耗された時代には、生刃のたっぶりしている新身には刀匠の造った鉄製の鎺で充分でした。それが、刀身の保存・鑑賞を心がけるようになって、しだいに山銅や銅に鍍金したものなど色金の鎺が使われるようになり、金の生産量の増えた安土桃山時代には、金無垢の鎺も多く作られるようになりました。江戸時代になりますと、銅地に鍍金・鍍銀や金着せ・銀着せあるいは赤銅着せを施したものが見た目にも美しく実用的でもあることから、主流を占めるようになりました。鉄や真鍮は硬すぎて刀身に傷をつけてしまうというので、ほとんど使われていません。赤銅や四分一も実用を考えるとあまリ好ましくありませんが、金工の発達した江戸後期にはお酒落ということで彫りや象嵌をほどこした彫金鎺などに用いられ町人たちを中心に好まれました。





 種類と用途
太刀鎺==太刀拵に着けられる鎺です。呑込みのないのが本来の姿ですが、押さえのために呑込みをつけたものも少なからずあります。縦鑢がかけられ、平の肉がつかず中心に沿って鎬筋を出すので、薄く小さく見えます。これは太刀拵の鞘が本来肉のつかない薄いものだったからです。形は、鎌倉時代以降ほとんど変化していません。
一重鎺==打刀、脇差、短刀、薙刀などどれにも着けられる最も普遍的な形の鎺で、一枚の金属板で作るため一枚鎺とも呼ばれます。戦前までは、新刀には一重、古刀には二重の鎺を着けるものといわれていたようですが、最近は、刀を白鞘で鑑賞することが`普通となり、鎺が唯一の金具であることから、新刀・新々刀にも金着せ二重鎺など贅沢なものを着けるようになりました。
二重鎺==太刀鎺に上貝(蓋)という袴を装着して二重にしたものが始まりで、袴鎺とも呼ばれます。現在残されているところの、織田信長より加賀前田の家老・本多政重が拝領したというた近将監長光の太刀には、黒漆打刀拵と朱漆打刀拵の二つが付属しており古いほうの拵である黒漆拵には、上貝を外した下貝の太刀鎺だけで納まるようになっており、朱漆拵には二重鎺で納めるようになっています。二重鎺の下貝に縦鑢が多いことや、肥後鎺の下貝が太刀鎺と同じ鑢目になっていることも、そのなごりと察せられます。
台付鎺==おもに短刀の合口拵に使用されますが、例外的に鐔のついた打刀拵にも使用されました。徳川家康の助真拵と、毛利輝元の談議所西蓮刀がそれで、ともに台付鎺が装着できるように切羽と鐔が工夫されています。どうも名刀にふさわしい鎺とされていたようで、名物大黒正宗・塩川来・九鬼正宗・毛利藤四郎などの名短刀に、埋忠寿斎の切付銘の入ったすばらしい金無垢二重台付鎺がつけられているのは周知のとおりです。

 お国振り
 拵に尾張拵、肥後拵、薩摩拵などそれぞれ特色あるお国振りがあったように、鎺にもお国鎺というものがありました。
◇尾張鎺・―重鎺で腰低く、上貝横筋鑢下貝檜垣鑢、呑込み浅い。
◇加州鎺・一重で、矢来風に表に五本裏に四本の樋がある。一説に九字(陰陽道の呪文)を表すという。
◇肥後鎺・二重で、下貝横鑢下貝には斜め地鑢に縦筋が入っている。縦筋は奇数本で、九本のものが多い。
◇水戸鎺・平に樋のある一重のものをいう。
◇薩摩鎺・一重で、貝先丸く平肉が充分について丸みがある。平地を桧皮のように仕上げたものが多い。
◇大坂鎺・一重で、平の貝先と刃棟に磨き地の縁取りがあり額のようになっている。
◇庄内鎺・おもに金着せ一重が多く、青海波・波千鳥・牡丹などの華やかで精巧な模様を突き起こしてあり、彫金にちかい。


鑢目・形のいろいろ
 今日は、江戸時代に生まれた形のものをほぼ受け継いでおり、見た目の美しさを考えさまざまな化粧鑢が施されています。そこで、最後にその鑢目の代表的な種類をいくつかと、また変り形鎺や彫金鎺など、珍しい鎺もあわせて紹介致します。

おわりに
 鎺は、その機能が第一であることから、銅の鎺が圧倒的に多く付けられました。金無垢二重鎺は、室町期からありましたが、極く一部の大大名の刀に限られ、一般の武士の刀にはせいぜい銀着せ程度です。金着鎺も、大名など大身の武士の刀に限られ、一般的になったのは明治以降になります。 鎺を作られるときには、白銀師の方にすべてお任せするのではなくある程度の好み等を注文なさるようにしたいものです,また、拵を作る予定のある方は、その拵に適した鎺を製作されたらいかがでしょう。
 最後に、今後みなさんが刀を鑑賞する折りには、鎺にも目を向けて頂けるようになれば、この.文を著した意義も達せられる次第です。

<参考文献>
法隆寺西圓堂奉納武器  末永雅雄著   日本古文化研究所
厳島図会  宝物の部     八・九巻
集古十種  兵器・刀剣   松平定信著
刀剣図考       栗原孫之丞信充著
刀の小道具  神谷絞一郎箸  徳間書店
日本刀全集(第六・七巻)   徳間書店
新版日本刀講座(第八巻)    雄山閣
刀装人門    柴田光男者  光芸出版




追記
最近の鎺には、白鞘用鎺・拵用鎺と称されるものがありますが、昔の鎺には無いものでたいへん戸惑いをおぼえます。本来、鎺は刀身と鐔と柄を一体にして実用にするための要といえる金具で、拵のためのものであって白鞘のためのものではありません。
 江戸時代や昔の白鞘に入った刀を拝見いたしますと鎺は木製のものが付いております。
白鞘は休め鞘とも言われるもので刀に油を付けて錆びないように外気から守るためのものです。白鞘に入れる刀のためには木鎺が最適でしょう。

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初めまして。偶然に、こちら部ログを発見し興味深く各記事を拝読致しました。
大変勉強になりました、ありがとうございます。
今後の執筆を期待しております。

2010/1/15(金) 午後 11:27 [ get*w*y69*00* ] 返信する

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鎺の変遷の過程を示した図Bの画像が大変参考になりました。この図が載っている書籍を教えていただけますか。

2012/1/12(木) 午後 0:45 [ - ] 返信する

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「鎺の変遷図」は、刀剣柴田の月報「麗」昭和63年10月号に掲載しました。

2012/2/25(土) 午後 5:11 [ s*k*s*m**s*k*r* ] 返信する

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はじめまして 平四郎吉政と申します

大変勉強になりました ありがとうございます

2012/3/22(木) 午前 7:26 [ 平四郎吉政 ] 返信する

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大変勉強になりました。

2017/5/9(火) 午後 0:29 [ fuj***** ] 返信する

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