日本文化・武士の美術

日本刀は正に活人剣として受け継がれている。

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左利きの剣士

左利きの剣士
                        
 
近年は全てにおいて左利きが公認されていますが、昭和三十年頃以前、箸を持つのは右手、習字で筆を持つのも右手、鉛筆も右手と躾けられていました。これは、利き腕がどうのとかいうことではありません。道具類は全て右用で特に鋏は左手では使えませんでした。切り出し小刀など片刃の刃物は右手用でした。それがアメリカなどの影響を受け、また、スポーツの普及もあり、左利きが個性として認められるようになり今日に至っています。しかし、60数年前でさえ左利きは礼儀作法として認められてなかったのですから、江戸時代に於いては尚更非常識なものだったでしょう。
最近では、一説に左利きであったという新選組の齋藤一を演じる際、右腰に刀を差した姿が映画などに登場していますが、気持ちの悪いものです。体面が重んじられた武士においてはあるまじき風体です。礼説を大事にする武道に於いては、現在でも認められていないでしょう。
 
林不忘原作小説で、右腕を失った剣士、丹下左膳は、挿絵では左腰に大小差していますが、映画では右腰に差した左膳が大勢を占めており、たいへん残念なことです。
抜刀の際、左手で左腰の刀の鯉口を切ります。左手で右腰の刀の鯉口は容易には切れません。
刀は逆さにして揺すっても抜けないくらいに鎺と鞘は密着しています。鯉口を切らずに刀を抜くことは、よほど鞘を帯に固定したうえで鯉口を緩くしておかないと無理です。小説には、鯉口を緩くして落とし差しにするという描写がありますが、手で柄を押さえて走らないと飛び出してしまいかねません。手で押さえるとしても左手で右腰の刀の柄はたいそう抑えづらいことでしょう。やはり、右手が使えなくても左腰に刀は差すものだとおもいます。体裁を無視し便利を重視するのであれば、着物を右前に来た方が万事に便利なのになあ〜、などと考えてしまいます。
                      −終−
 
〈追記〉
萬屋錦之助をはじめ、丹波哲郎、高橋幸治、忌野清志郎、龍新の方々は左腰に差しておられます。
挿絵画家の方々をはじめ、小沢さとる、横山光輝、さいとうたかお の方々も左腰に描いておられます。


 〈小説の挿絵に描かれた丹下左膳〉(上)小田富弥 画(中左右)志村立美 画(左下)山口草平
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                                   映画の丹下左膳

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