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「新潮45」2016年7月号、新潮社、2016.6.18 発売 特集 世界「日本化」計画 表紙 目次 特集ページ見出し(18ページ) ●日本語と日本文化が世界を平和にする(鈴木孝夫 談、p.19〜26) ○これまで500年間、西欧文明主導で発展してきた世界は、成長の限界に近付き、「登山」から「下山」の時代に向かう。人間至上主義の西洋文明に代わって、西洋にはない古代的世界観を保持している日本文明が指導的役割を果たさなければならない。アニミズム的な万物の輪廻転生、草木国土悉皆成仏。一神教のような他者を折伏攻撃して支配するのではなく、妥協融和して共存する「和を以て貴しとなす」。日本は超近代でありながら古代の精神を保持する二枚腰文明。未だに日本が欧米と違う点を「遅れている」と思っている有識者も少なくないが、今こそ日本が世界の面倒を見ていく「こうしなければ世界は滅びる」と言う日本発のマニフェストを掲げる必要がある。 ○日本語を国連の公用語にすべき。公用語にするための費用は全部日本が持つと言えばよい。公用語になっても国連内で日本語はほとんど使われないだろう。しかし日本語学習者が増えれば、日本語を通して日本人っぽくなる現象(日本語のタタミゼ効果)が見られる。攻撃的自己主張はなくなり共存共栄に。日本人が全員英語が上手になる必要はない。英語が必要なのは海外と交渉する一部の人間だけ。今は世界のウエスターニゼーションがジャパナイゼーションに変わる世界文明の転換期。日本文明、日本語を世界に普及させる事こそ求められる。 ●なぜ日本人は毎年ノーベル賞を取れるのか(松尾義之、p.27〜32) ○日本人が一流の科学・技術を築き上げてきたのは、日本語で科学・技術を展開してきたからだ(「日本語の科学が世界を変える」筑摩選書、2015)。本を書いてから鈴木孝夫氏の言語学を知った。日本語は表音言語の中に表意言語を取り込んだため、世界でも特殊な言語になった(「閉ざされた言語・日本語の世界」)。日本人が学ぶ英語は、読む・書く・聞く・話すの順に上達する。幕末から西欧文明の言葉を漢語に翻訳して新しい用語を導入した。これをしたのは日本だけだった。中国も日本語の用語を使っている。明治後半〜大正にオリジナルな研究が生まれ始めた。文科より理科の言葉の方が明解で強力なため、英語との翻訳は100%間違いなくできる。英語との壁が低いので日本語で科学ができる。 ○イエスかノーかではなく中間に真理を見る日本人の「あいまいさ」が中間子論や分子進化中立説を生んだのではないか? 技師ではなく研究者自身が試料作りをする事も日本の特徴。環境技術にも日本の伝統技術が影響? ●「素人」がデビューできる唯一の国(ヤマザキデルス、p.33〜37) ○1994年フィレンツェ生まれ。母ヤマザキマリと北海道で9歳まで暮らす。国籍は日本、母語も日本語。その後シリアやポルトガル、アメリカで暮らす。今はハワイ大学3回生、交換留学で京都大学にいる。 ○日本の特徴、1.合理性にとらわれない。頭の中が子供のままの大人がたくさんいて、そういう人の発想や想像力からしか生み出せない物がある。2.サブカルチャーで素人がデビューするルートが整っているのは日本だけ。海外には新人賞という企画はめったにない。3.他人との距離が近い。海外では呑み会はあまりない。 ●世界が欲しがる「和のシステム」(菊地正憲、p.38〜47) ○世界各国で取り入れられ評価されている日本の社会システムや制度はかなりある。アニメや和食だけではない。カイゼン(従業員中心の品質・生産性向上活動)。母子手帳。防災(地震、津波、台風、洪水、火山など)。水道(先進国の中でも漏水率が低い)。新幹線。地下鉄。郵便(正確・迅速)。交番。教育。法整備。通関。廃棄物処理。 ●「ぷにぷに」「モチモチ」なんて言うのは日本人だけ(「ニッポン大好き」外国人座談会、p.48〜53) ○フィービー(イギリス、27歳、女性)、サラ(アメリカ、23歳、女性)、アーノ(フランス、28歳、男性)。 ○空手、たまごっち、マンガ、アニメ。日本人は親切で優しい。まず相手の立場を尊重し、周囲に気を使う⇔欧米は自分中心。バスや電車が時間通り。治安の良さ。きれいなトイレ。安くておいしい缶チューハイ。ラーメン、牛丼、すし。温泉、小笠原、高千穂峡。 ○逆に悪い点…案外テクノロジーが遅れている点がある。住宅の保温性。クレジットカードが使えない所が多い。印鑑の使用。 ●「大きな物語の崩壊」の終わり(濱野智史、p.54〜59) ○「ヲタク文化」は、成熟を拒絶しアダルトチルドレンでモラトリアムで精神をこじらせるしかない者の、自虐的でアイロニカルな嗤いに満ちた文化空間である。ここ数年で世界状況が変わってきた。「大きな物語」が復活。米大統領選のトランプやサンダース。成熟を拒絶しているのは日本だけではない。日本的なヲタク精神が世界に求められている。 ○乃木希典大将は最強天皇ヲタだ。今日では陽の当たらぬ日本近現代史の「地下アイドル」。戦争責任、指揮責任は問われて当然だが、文化的尊敬はきっちりやり、世界に向けて発信する事で、世界は総日本化=総ヲタク化するのではないか。Googleのクラウド環境GCPに人工知能NOGIを上げるべきだ。ヲタク魂はクラウド浄土で受け継がれ、永遠の懺悔&ハラキリのループが世界に圧倒的感動をもたらす。 ●「イマジン」と憲法第9条(小田嶋隆、p.60〜65) ○日本人が思い描く「国際化」は、街に外国人労働者が増えたり、子供達が達者に英語を話す事。その実相は、グローバル企業の利益のために世界の労働者や言語・風習を統一する事だ。その流れを止めるために、日本発の習慣やアイデアを世界に拡大して、日本の文化的地位を守らなければならない。その切り札が憲法第9条だ。 ○9条はアメリカが敗戦国日本に押し付けた物だが、それゆえに21世紀の世界を動かすラディカルさを備えている。国民国家の憲法というより、来るべき未来の国際社会の理想である。ジョン・レノンの「イマジン」の歌詞「武器なんかないと思ってごらん。天国も地獄もなく、宗教も争いもない世界。強欲も富貴も貧困もない世界で、今日だけのために今日を暮らす人々」とは、日本そのものだ。この歌の基本的なアイデアは、夫人の小野洋子の詩集「グレープフルーツ」だ。この歌詞の世界は外国人には想像しにくいが、日本人にはなじみやすい。日本は世界の中で際立って平和を重んずる国であり、日本が世界に伝えるメッセージは「まあ落ち着け。武器なんかないと思ってみろよ」だけで十分だ。 ●日本に生まれて、やはりよかった(平川祐弘、p.66〜70) ○朝日新聞などによる「ポリティカル・コレクトネス」という自己検閲により中国批判はタブーとされた。言論の自由のためには自己に忠実であらねばならぬ。漱石の「韓満所感」の「支那人や朝鮮人に生まれなくてまあ善かった」という言葉に共感する。戦前も戦中も戦後も日本人である事を「悪かった」と思った事はない。しかし「とっても良かった」という自己礼賛もしない。一方的に自国を礼賛する日本至上主義者とは一線を画したい。一方だけを非難する気もなく、一方だけを持ち上げる気もない。「世界を日本化せよ」というつもりもないが、インターナショナリズムにも疑心を抱いている。諸外国のエリートに拮抗しうる日本のエリートを養成するための教育改革を切望する。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「新潮45」の2016年7月号(http://www.shinchosha.co.jp/shincho45/backnumber/20160618/)が、『特集 世界「日本化」計画』というのを組んでいた。このブログのタイトル名と同じなので、読んでみた。雑誌全体が330ページで、そのうち『特集 世界「日本化」計画』は18〜70ページの53ページなので、全体の1/6である。
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読書メモ
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