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民主党執行部が野党の要求を入れ、一六日で閉じようとしていた国会を急きょ延長した。当初の方針どおり閉会しようとして、一六日に閉会の委員会を各理事に指示までしていた松本剛明国対委員長代理(前外務大臣)、加藤公一国対委員長代理(前首相補佐官)、松野頼久議院運営委員会筆頭理事(前官房副長官)が「混乱の責任をとる」ために辞表を提出した。
日本経済新聞はこの動きを「延長方針を知らされていなかった不満」とか「平野氏だけが党の要職についたやっかみ」などと分析しているがあまりに浅薄である。
人間はどうしても自分の発想、視点でしかものごとを見ることができない。仕方ないかと思ったが、松本氏、加藤氏、松野氏の三人はこれからの日本政治を担うべく大変有意な人材であるので、東洋政治を研究する政治学者としてあえて述べてみたい。
太公望兵書といわれる六韜三略には「将は憂えしむべからず。謀は、深かるべくして疑うべからず」とある。いったん将に任命したなら、安心して仕事に専念できるようにしてやらなければならない。また将が慎重に練あげた作戦に対して疑いをはさんではならない。それが、トップたる君主の責務だというのだ。
国対委員長代理、議院運営委員会筆頭理事と言えば、国会という戦場で野党と戦う「将」である。将を任命したなら、任せて謀を後顧の憂いなく巡らせ、実行することができなければ、その力を発揮することはできない。
六韜三略を読むと今後の国会も予測できる。「将、憂えれば即ち内外相信ぜず。謀疑わば、即ち敵国奮う」国対委員長代理らがすぐに前言を翻すとされれば、内外の信頼を失ってしまう。現に、菅自民党筆頭理事に「どうしてこんなにバタバタしたんですか」と聞かれ、頭を下げるしかなかったという。
さらには、敵国、野党が元気づく。自公両党とも「延長したとしてもいまさら、何だ」という雰囲気らしい。
政治家の思想は、行動で表す。彼らが、辞表を提出したのは、きわめて理にかなったことである。
一六日で、国会を閉会するという大方針を変えさせたのは岡田前幹事長だったらしい。「このままだと大変なことになるかも知れない。冷静な判断をしてほしい」という輿石幹事長への電話で方針転換をしたのだと報道されている。口の硬い輿石氏が珍しく代議士会で話したと言うのだから、確かなのだろう。
実は、私は岡田氏が輿石氏に電話したという九月一五日夕に岡田氏と議員会館で偶然、すれ違った。私は以前、岡田氏の代表室長代理だったので「岡田先生」と気軽に呼びかけた。ところが「ああ、どうも」と一言だけ話して議員会館の部屋に入ってしまった。なんと無愛想なことかとその時思い、「こんなことでは人望が集まらない」と後で言おうとさえ思った。今思えば、そのときは頭が一杯だったのだろう。
「これをもって攻伐すれば、乱をいたす」こんな状態で、戦いに挑んでもかえってこちらが混乱するだけだ。これが六韜三略の予想する今国会の姿である。心配である。
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異論があります。辞任を申し出た三人は将ではありません。国会での論戦の大将はあくまでも野田総理であることは間違いありません。輿石幹事長は参謀に当たります。国会論戦の前線指揮官は平野国対委員長です。平野氏は将とも言えます。しかし、辞任を申し出た三人は前線における下士官です。彼等が如何に将来有望な人材であるとしても今は将たる立場にありません。今回のやり取りは子供じみた対応しか取れない自民党に対しては最も良い対応であったと今になってみればわかります。国会延長要求に完全に従えば今後の示しがつきませんが、要求を半分に値切ることが出来たのです。三人の今後の自民党対応のためのパフォーマンスも出来ました。三人に注意を与え、それに三人が服することで輿石幹事長の重さも示すことが出来ました。もしも万一野田総理が交代することがあったならば、本当にパープリンな前原氏ではなく、岡田氏しか該当者はありません。したがって、今回無役にした岡田氏を重要人物に仕立てることも出来ましたし、輿石氏は岡田氏に貸しを作っておいたともいえるのです。結構深いはかりごとがあったと思いました。
2011/9/23(金) 午前 10:56 [ 大好調 ]