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昨日はソフトバンクの決算発表会だった。孫社長のプレゼンが終わり、質疑応答に入った3問めか4問めに「テレビ朝日です。今、経産省で、電力システム改革。発電と送電の分離が議論されていて、機能分離とか、法的分離とか言われています。自然エネルギーを熱心に進めているソフトバンクですが、発送電分離は自然エネルギー普及にいい影響を与えますか」という質問があった。
「ああ、これはどこかの番組で使う気だな」と直感した。帰宅後、報道ステーションを見ていたら、
「東電国有化、鍵は発送電分離」の特集があり、そこでとりあげられていた。
孫社長の発言を私なりに意訳する。
「機能分離とか法的分離とかでは、言葉だけの、まやかしの分離になる。私たちは通信業界でいやというほどその経験をしてきた」たしかに、そのとおりで、NTTは機能分離も法的分離もされているとNTTは主張している。しかし、実際にはNTT持ち株会社などが人事支配をしており、とてもすべての会社に公正で公平とは言えない。
「それでも、通信は独占ではないので、競争はあった。電力は独占である」
「政府の皆さんや、国民の皆さんは『まやかし』の分離にならないよう注意深く見守っていかなくてはいけない」
「まやかし、言葉だけの分離でなく、真の分離にするためには一刻も早い『所有権分離』が必要である」
ドイツ在住のジャーナリスト熊谷徹氏の「脱原発を決めたドイツの挑戦」を読んでいる。今でこそ、電力改革のモデルと日本で思われているドイツだが、2004年当時、欧州委員会は、ドイツを「自由化の後進国」とい烙印を押していた。
注目すべきは、当時の欧州委員会のネーリー・クレース自由化競争促進委員長の発言である。
「ドイツで総発電の所有権分離が実現すれば、電気料金は30%安くなる」と主張。大きな進展が見られなければ、「発送電分離を法律で強制することもありうる」と強硬な姿勢を打ち出したのである。
欧州委員会の提案に、当然、ドイツの電力業界は猛反発。「送電網は株主の持ち物。送電網の強制的な分離は所有権のはく奪に等しい。さらには、電力供給の安定供給を危険にさらす」と発言した。全く、今の日本の電力業界の発言と同じである。
メルケル政権は、当初、電力業界の意見を聞き、妥協案を出していた。ところが、急転直下、2008年、ドイツの電力会社は、自らの決断で送電部門を売却する決断をする。
その理由は二つある。一つは欧州委員会がカルテル防止法の適用という強硬な姿勢を曲げなかったこと。もう一つが脱原発政策によって、電力会社の経営が悪化したことである。
よく、北海道はデンマークと同じ経済規模だとか、九州はオランダと同じだとか言われる。考えてみれば、独占権を持つ10の電力にわかれている日本は、独立した国家でで構成されるEUみたいなものである。
日本でも、脱原発依存の方針により、電力会社の経営が悪化しつつある。このままでは、膨大な投資が必要になる「送電網」の維持は難しくなるのではなかろうか。ドイツの電力会社は、送電網子会社を売却すれば、巨額な送電網投資が必要でなくなるとほっとしているという。
では、送電会社の方はどうか。ドイツの連邦ネットワーク庁指導の下建設される送電網は、今後、長期間にわたって安定した収益性が得れると銀行や保険会社など金融機関の送電網への投資に関心が集まっているという。
ここまでくると、ポイントは政治であることが分かる。政権がEUのように厳しい姿勢を曲げず、脱原発政策をとるならば、電力の所有権分離も可能となるのではなかろうか。
熊谷徹氏の「脱原発を決めたドイツの挑戦」の帯書がいい。
ドイツでは、まず「国民が脱原発を決め、政治が後を追った」。
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