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「貞観政要」は帝王学の書とされる。名君の誉れ高い唐王朝2代目の大宗(利世民)と重臣たちの政治門答集である。徳川家康や明治天皇が座右の書とした。
貞観10年、太宗が重臣たちに尋ねた。
「帝王の業、草創と守成といずれが難き」
帝王の事業の中で、創業と守成といずれが困難であろうか。
私が政界から転じ、ソフトバンクに入社したのは2005年11月のことである。そのころのソフトバンクは、通信事業者としては、いまだ創業期であった。
ヤフーBBでADSL事業、日本テレコムの固定事業がメインで、まだ携帯事業に参入していなかった
数字で見ると、売上高1.1兆円。営業利益は赤字であった。2006年にボーダフォンジャパンを買収したが、買収時点の国内シェアは16%に過ぎなかった。
08年、iPhoneをいち早く導入。純増トップを続け、ウィルコム、イーアクセスを買収し、国内形携帯市場でのシェアは30%となり、トップのNTTドコモの40%が視野に入るようになってきた。
この間の私の仕事は、国営独占企業からスタートしたNTTにかかった非対称規制を維持し、ソフトバンク、KDDI、イーアクセスなどの競争事業者が力を発揮できる政策環境をつくり上げる事だった。ソフトバンク一社の利益を超え、競争事業者のために働き、日本経済を活性化しようとしたのが結果としてよかった。
昨年、ソフトバンクはスプリントを買収。日本にお客様が3600万人、アメリカに6000万人。アメリカとあわせるとドコモを抜いた。
ソフトバンクは「創業」期を終え、「守成」期に入ったとの報道も増えてきた。
ソフトバンクは海外事業への展開をはじめた。その意味で「守成」にはいったというのは、浅い見方で、新たな、創業期に入ったのかもしれない。
私は、民主党代表の補佐役として、政権交代を目指して戦略を練ってきた。ビジネスに転じてからは、NTTに対抗するソフトバンクの社長室長として知恵をめぐらせた。3.11以後は、自然エネルギー推進で既存電力事業者と対峙した。
私の人生は、常に創業期のリーダーとともにあった。逆に言えば、私に才能があるとした、創業期のリーダーとともに働くときに一番、発揮されるといえる。
「創業と守成、いずれが難き」と問われれば、私は間違いなく「創業」と答える。なぜなら、「創業」は、天才的なリーダーとリーダーを支える側近、幕賓がいなければ、とうていできないことであることを身にしみてしっているからである。
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