|
某経済誌から取材を受けた。「最上の経営者」(仮称)という特集を組むので孫正義社長の人物像を聞きたいというご希望であった。
幸いなことに私は20世紀を代表する経営者である松下幸之助塾長に教えを受け、孫正義社長を八年三千日補佐する幸運を得た。二人との経験を思い出しながら、「最上の経営者」とは何かを改めて考えてみた。
スタンフォード大学の教授、ジム・コリンズは「ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則」の中で「経営者の能力のうち最高水準を表すもの」として「第五水準のリーダーシップ」をあげている。
結論から言うと、松下幸之助氏は明らかに「第五水準」を超えた存在であり、孫社長はまだ若いこともあり第四水準から第五水準の中間である「四・五水準」であるように思える。
第一水準・・有能な個人
第二水準・・組織に寄与する個人
第三水準・・有能な管理者
第四水準・・有能な経営者・・明確で説得力のあるビジョンへの支持と、ビジョンの実現に向けた努力 を生み出し、これまでより高い水準の業績を達成するよう組織に刺激を与える
第五水準・・個人としての謙虚と職業人としての意志の強さという矛盾した性格の組み合わせによって 偉大さを持続できる企業をつくり上げる。
第五水準の指導者は「謙虚さ+不屈の精神」を持っている。
ジム・コリンズは第五水準の大統領の例としてアブラハム・リンカーンをあげている。かれは謙虚であり、内気であり、不器用であるように見えた。これが弱さの印と思われていた。だが、リンカーンは南北戦争を戦い抜き、奴隷解放を実現し、永続する偉大な国家をつくり上げることができた。
謙虚だが意思が強く、控えめだが大胆なのがリンカーンであった。
松下幸之助塾長を二十代から三十代前半に身近に見てきたものとして思うと「謙虚さ+不屈の精神」をまさに体現しておられた。ただ、そのころ松下塾長は86歳から95歳だった。
孫正義社長はまだ五十七才である。アメリカに進出世界のソフトバンクという新たなるビジョンを掲げさらなる飛躍をめざしている。いずれ第四水準から第五水準へと進んでいくであろう。
取材の最後にこういった。
「私は20世紀を代表する松下幸之助氏に教えを受け、孫正義社長がNTTドコモをぬくまでの八年三千日を社長室長として補佐した。できるなら、孫社長が21世紀を代表する経営者になってほしい」
相変わらず大風呂敷な思いである。
|