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○16人の新会派結成、フランス・ドイツでは普通のこと
16人の議員が民主会派から離脱、代表である渡辺衆議院議員が予算案に対して「民主党のマニフェストに照らして判断する。党の決定とは別になることもある」と発言したことが波紋を広げている。
ここではサイバー大学客員教授、東洋大学非常勤講師の立場で「政治科学」の観点から述べる。
もともと、議会は名望政治家の集まりだった。それでは、なかなか議論がまとまらないから、グループ内で議論を重ねた。これが「会派」である。最初に「会派」が議会内にでき、「会派」をコアにして、議会外に「政党」ができた。
フランスやドイツの「会派議会」では、院内の会派が院外の政党と違った議会行動をとるのはむしろ普通であり、けっして珍しいことではないし、ルール違反でもない。現代議会は「会派」がとりしきり、現代政治は「政党」がとりしきるというのが世界の常識である。
ネット選挙解禁の国会審議のときなどに、「公職選挙法改正などは各党・各会派で議論していただきたい」という答弁を何度も聞いた。日本では、自由民権運動から議会がスタートしたこともあり、議会開設のとき、政党と会派が峻別されることなく融合してしまった。
今回の16人の行動は、議会の運営方法をフランス、ドイツの「会派議会」にしようという動きのように思える。
民主党執行部は、イギリス議会のウェストミンスターモデルを意識している。総理、政党執行部の指示に院内の会派を従わせ、できるだけ早く立法を通し、実行するというのがイギリス型政治である。
これを具現化したのが院外の政党組織である「国会対策委員会」が院内の議院運営委員会、委員会を動かす「国対政治」であり、「党議拘束」である。
しかし、これが正当性を持つのは政権選択選挙での「マニフェスト」にしたがって政権運営をしているときだけである。マニフェストを基本方針から覆し、国会運営だけ、執行部に従えというのは政治学的には正当性をもたない行動に思える。
○新会派結成に見る「ねじれ解消」の芽
ドイツ・フランスの事例をもう少し見てみたい。ドイツ連邦議会はとくに会派中心の運営が確立している。同一政党に所属しているか、同一方向の政治目標を持っている5%以上の議員がいれば、会派は結成できる。フランスでは下院で20人以上、上院で15人以上いればいい。
議案への対応については、各派が独自に協議し、各派がそれぞれ主体的に決定する。会派は会派総会、会派理事会、法案審査を実施する作業部会を院内に持つ。たとえ、与党会派であっても、政府提案に全面的に賛成することはない。さらに言えば、修正があればそこで法案を修正する。
今回、民主会派を離脱した16人がドイツやフランスをイメージしているとしたら、十分に理解できる。
ドイツ議会を訪問したときのことである。
「日本では内閣法案が提出されたら、そのまま通すことが与党の仕事となり、修正はほとんどない」と質問した私に、ドイツ側から厳しい一言。
「では、日本の政治家は議会で何をしているんだ」
メディアでは、「比例代表選出の議員であとがないからだ」とか「小沢氏への忠誠だ」などと言われるだろう。しかし、「会派国会」「修正国会」の導入というのは、ねじれ国会を克服する新しい芽になるかもしれないことに注目して欲しい。
「新会派結成」は「離党」よりもハードルが低い。仮に、今回の動きが前例となり、自民党内で「新会派」が結成されたとしよう。彼らが与党案に賛成する事態になれば、ねじれは解消するのである。
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