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三すくみから脱出するために民間の力を
○ビジョンー戦略論―戦術・施策
政治改革はリーダシップを持った強い内閣に対して、強い国会が活発な審議で答えることをめざした。しかし、実態は弱い内閣が弱い国会に対峙している。さらに、力が低下した官僚との「三すくみ」で日本は漂流している。
だが、日本を見渡すとその中でもがんばっている民間経営者、CEOがいる。このところ、日本が世界の中で競争力をいかにもつかは、世界に通用するCEOを何人もつかということに尽きるのではないかと思えてきた。
内閣も国会も官僚も三すくみしているなら、強いCEOたちを新たなプレーヤーに入れ、総力戦で国家経営の観点から日本復興に取り組むしかないのではないかと思っている。
企業戦略では経営ビジョン→戦略論(選択と集中)→戦術施策の順に立案する。国家戦略でも、国家ビジョン→戦略論(政策の優先順位付け)→戦術・施策というビジョン追求型にすべきだし、類似性がある。前回の「民主党Aに望むこと」では政治、民間合同の国家戦略委員会をつくるべきだと述べた。
企業戦略の考え方を国家戦略構築に生かすべきだという意見は、多くの閣僚を含む政治家に提言してきた。程度の差こそあれ、「ビジョン」をつくるのは必要という理解をいただいた。もう少し政権が安定していれば、政治主導=ビジョン追求型の政治が定着したに違いない。
民主党は揺れ動いているが、日本に民主主義を定着させるという政権交代の歴史的意義を実現するには、新体制を一刻も早く構築し、マニフェストの原点にもどることである。
サイバー大学の客員教授として、政治力学をあまり考えずに具体的な方策を述べたい。
民主党の混迷の中から、創造的破壊が起き、新たなリーダーが出たとする。
そのリーダーは、自らが座長となり、主要閣僚と国際競争力のある民間人を集め、「国家戦略委員会」をつくる。法的措置がまにあわないだろうから内閣府設置法18条にある重要政策会議、「経済財政諮問会議」を緊急避難的に使う。
国家戦略室は内閣法19条にある内閣総理大臣補佐官5名をフルに利用する。外交などのアライアンス戦略、財政政策などの財務戦略、経済・通商戦略などの事業戦略などの閣僚委員会を設け、座長が総理、事務局長を首相補佐官にすればよい。
株主総会運営に当たる国会運営は政務の官房副長官が担当する。株価にあたる支持率は、スピンドクター的な広報担当の首相補佐官をおく。政と民の力を結集することが今ほど、必要とされる時代はないのではないだろうか。
○政界とビジネス界の違い
もちろん、ゴールドマンサックス会長からクリントン政権の財務長官になったロバート・ルービンも言うように企業経営におけるトップダウン方式のビジネスモデルを政府にも適用できるというつもりはない。
衆議院議員9年、ソフトバンク社長室長を5年務めると、政界と民間の違い、長所、短所もよくわかってくる。
政治制度はあまりに難解で、現代社会の複雑な問題に効率的に結論をくだせるようになっていない。ビジネスの世界の目標は利益をあげることと明確だし、意思決定の仕組みは政治と比べるときわめて単純である。
企業では権力は集中化されている。CEOと取締役会の関係は、監視機能を持つとはいえ、概して良好である。政治ではそうもいかないこともある。株主総会にあたる国会は長期間、開かれ続けている。
また、民間企業と違い、すべての意思決定はマスコミの目にさらされ、ユーモアのつもりのわずかな冗談が「失言」としてとりあげられる。自由奔放な発言をしていた経営者などは3日もたないと思われる。
よく民間人が政府に入るとボロボロになるといわれるのはこの文化の違いがわからないからである。
それでも、日本復活のためには、「国家戦略委員会」で民間の知恵と力をとりいれ「政治主導」を復活させることが必要である。民間人に力を発揮してもらうためにも、国家戦略局(室)の補佐機能充実が必要である。
民主党に望むのは、日本の総力をあげて日本復活に挑戦する体制をつくることである。
民主党政権の初閣議で決まった政権運営の基本方針の冒頭。
「先の総選挙は、民主党及び友党のみの勝利ではなく(略)従来型の政治・行政への機能不全への失望とそれに対する強い怒りが、高い投票率となって政権交代に結びついたものだと考えてきました。
その意味で、総選挙の勝利者は国民一人ひとりであるはずです」
このままでは、民主党を選択した国民一人ひとりが「敗者」になってしまう。官僚政治から脱し、もう一度、真の政治主導に挑戦してもらうことを期待する。
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